- Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122054974
感想・レビュー・書評
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陳舜臣の書く聊斎志異考なら、読み応えがあって楽しいだろうと手に取ったが、記憶にあるより性描写が多くて戸惑った。
そういえば、前に読んだ聊斎志異は岩波少年文庫だった。うまいことカットしていたんだな。
それに、古典文学と思えば通常の範囲内だ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
聊斎志異といえば、太宰治の清貧譚。
中国の怪異を集めたおそろおもしろい本…というイメージはあるものの、原著はもちろん、訳本も抄訳も読んだことがなかった。
解説で初めて知ったのだけれど、原著には500に及ぶ話が収められているのだとか。
本書では十二話を収めている。選りすぐりの話なのだろう。
清初の対清反乱「于七の乱」を背景にする「公孫九娘」などは、やはり凄惨なものを感じる。
損壊した遺体がごろごろしている場面がある「琴瑟と春燕」なども、おどろおどろしい。
しかし、全体としては美女(もちろん、大概は仙女や何か動物の精のようなもの)が出てくる話ばかりで、何かあでやか。
ハッピーエンドの話もある。
それほど強烈に刺激的なものもなくて、安心して読み終えることができた。 -
前回読んだ「聊斎志異の怪」に続き、中国文学の「聊斎志異」の邦訳本の二冊目として陳舜臣氏の著作を読んだ。
「聊斎志異」そのものは清代初期蒲松齢により書かれた短編小説集でほぼ五百話あるが、筆者の陳氏は十二巻本の「鋳雪斎抄本」から各巻一編ずつ選んだという。
怪異譚といっても背筋の凍りつくような恐ろしい話は少なく、現実の人間とあの世から舞い戻った亡霊が情を交わすといった話が多いようだ。特にこの世の男と女の幽霊がセックスをするといった話も多く、当時の中国庶民の間ではその手の著作が好まれたのではないか。日本の怪談話とはかなり趣が異なるのにはちょっと驚く。
現在BS JAPANで放送中の「画皮 千年の恋」のベースになったと思われる作品は取り上げられてはいないようで、本当はそれを期待して購入した面もあったので、ちょっと残念ではあった。
なお、「聊斎志異の怪」で太宰治の「清貧譚」が紹介されていたが、本書では「黄英とその弟」という太宰ベースにしたという短編が掲載されており、あわせて読み比べるのも面白いと思う。
とにかく中国の怪談は冥界からやってきた妖しい女たちが俗世の男たちを籠絡したりあるいは援助したりする。そこにはお色気が絡んでくるという独特なパターンが存在するようだ。
だから怪談と言えどもただ怖いだけではなく、面白く読み進められるものも多いようだ。