幕末奇談 (中公文庫 し 15-16)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122058934

作品紹介・あらすじ

新選組の大活躍から、戊辰戦争の幕軍兵士の大敗走までを丹念に追った「幕末研究」と、番町皿屋敷の真実や四谷怪談伝説など、巷間の話を古老から聞き集めて編んだ「露宿洞雑筆」の二編を収録。市井に生きた庶民の哀しみや人情に寄り添い、温かい筆致で綴った秀逸な随筆集。

感想・レビュー・書評

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  • かなり古い作品の再文庫化のようです。「幕末研究」のほうは、一応エッセイのカテゴリになるのかもしれないけれど、まるで学生相手に幕末についてわかりやすく講義しているかのような語り口。今でこそ新撰組も歴女のアイドル(笑)だけれど、子母澤寛が生きていた時代(この作品発表は1933年=昭和8年)ならまだまだ新撰組なんて悪役、暴力集団みたいに悪く言われてた時代なので、新撰組三部作を始め、新撰組側を擁護するこの人の視点は当時ならきっと異例というか画期的だったのだろうなと思います。

    「露宿洞雑筆」のほうは、古老からの聞き書きメモ集みたいな感じ。個人的にはこちらが面白かったです。幕末の剣豪や侠客の話も面白いけど、どちらかというと巷間の怪談や奇談系のが興味深い。ご本人が古老から話を聞くときの姿勢として、嘘だな、とか、盛ってるな、と思っても否定せずに面白がって「うんうん」って聞くのが良いみたいなこをおっしゃっていて、この本を読むときの姿勢もまさにそれが正解だと思います。真実はどうかとか科学的に解明したらこうだとか考えてしまうとつまらない。昔ある逸話があって、それを信じて怖がったり面白がったり伝えたりしたひとたちがいたんだよという事実が面白い。

  • 「新選組始末記」の子母澤寛氏のエッセイ。幕末の時代背景を氏の豊富な知識と資料から語る幕末研究と番町皿屋敷や四谷怪談など当時の古老から聞き集めた「露宿洞雑筆」の二編。

  • 「幕末研究」は口語をベースにしたものであり、判り易く、内容的にも新たな発見がある。
    その他は、古くから伝わる怪談や新徴組の名も知れぬメンバーのエピソードなど数々の小話が収められている。
    勝海舟、新選組関係の著書が多いだけあって佐幕側の話題が多い。

    以下引用~
    幕府崩壊、幕末来るの原因、
    ①国家及び国体に対する国民の自覚
    ~我々の場合において、自国に対する自覚は、直ちに勤王思想でありますから、一方、学問の発達により国家及び国体に関する自覚の発生と共に、思想的に到底幕府の存在を許さなくなって来たのですね。
    ②経済本意の変遷による原因
    ~世の中はいつでも金です。
    要するに貨幣経済の発達は、武士町人とはっきりと区別された社会組織を必然的に変化せしめ、国体に対する自覚すなわち勤王思想は、政治組織をかえるようになった。
    ③外国の刺激による原因
    ~全く、黒船は他の諸原因に比し幕府崩壊、王政御一新の一番大きな原因であったということが出来ましょうな。

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著者プロフィール

子母澤寛

明治二十五年(一八九二)、北海道生れ。本名、梅谷松太郎。明治大学法学部卒。新聞記者を経て文筆業に。昭和三年の『新選組始末記』に始まる新選組三部作の実録や時代小説を多数手がけ、戦後は『勝海舟』『父子鷹』『おとこ鷹』『逃げ水』など徳川遺臣と江戸への挽歌ともいうべき諸作品を発表。昭和三十七年に菊池寛賞受賞。随筆の名手としても知られ、『味覚極楽』『ふところ手帖』(正続)など。昭和四十三年(一九六八)没。

「2021年 『愛猿記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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