- Amazon.co.jp ・本 (397ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122060616
作品紹介・あらすじ
高名な考古学者の妻と弟子が相次いで絞殺され、現場には古代文字「ペトログリフ」が残されていた。この文字について調査を任された警視庁捜査一課の碓氷弘一警部補は、専門家を訪ね歩くうちに最強の助っ人とめぐりあう。それは、考古学、民俗学、言語学に通じる不思議な外国人研究者、アルトマン教授だった。考古学界を揺るがす惨事について、いにしえの文字が伝えようとしている意味とは?刑事と学者、異色のコンビが、殺意の正体に迫る!警視庁捜査一課・碓氷弘一シリーズ第5弾。
感想・レビュー・書評
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警視庁捜査一課、碓氷弘一。48歳。
腹の出た体をくたびれた背広に包み、薄くなってきた頭髪を気にするサエない中年男だ。近ごろ警部補に昇進し、第5係最年長ということもあって、鈴木係長の番頭的な存在になっている。
そんなベテラン刑事が事件解決に奔走する警察サスペンス。シリーズ5作目。
◇
その一報を受けたのは、やはり当直の碓氷だった。駒込署管内で死体が発見されたと言う。
自分の引きの強さを呪いつつ、碓氷は係長の鈴木に連絡をとった。時計は午前2時を指しているがやむを得ない。
寝起きの声で電話に出た鈴木から、事件性があり、第5係の臨場ということになったら再び報せるよう指示を受けた碓氷が待機していると、案の定出動の指令が出た。
事件現場は高級マンションの1室。リビングには1人の女性の死体。大きく目を見開いたまま息絶えていた。
通報したのは帰宅したばかりの夫で、沈痛な面持ちで捜査員からの事情聴取に答えている。
1人で室内を見回していた碓氷は、後輩の梨田が鑑識と何ごとか話しているのに気がついた。2人は壁の1箇所を気にしているようだ。
碓氷も近寄って梨田が指さした場所を見てみると、そこには何かの紋様が 20 ㌢ 四方ぐらいの大きさで刻まれていた。
( 第1話 )全26話。
* * * * *
殺人現場に刻まれた不思議な紋様。妻の遺体を発見した鷹原道彦によると、朝の時点ではなかったということでした。
さらに鷹原は、その紋様について、ペトログリフと呼ばれる古代文字に似ていると言いました。鷹原は順供大学教授で考古学者であり、殺された妻は鷹原研究室の元教え子だということです。
以上から、その紋様は事件と何らかの関わりがある可能性があるのではと、碓氷たちは考えます。
ということで今回もミステリー色の濃いワクワクするような幕開けです。
そして駒込署に捜査本部が設置され、例の紋様については碓氷が専任で調べるよう特命が下ります。地取りや鑑取りといったオーソドックスな捜査とは違う方面からのアプローチは、もはや碓氷の専売特許といったところです。
さてそうすると問題は、専門的なスキルを持ち碓氷を輔けてくれる相棒をどうするかです。困ったことに今回は、『触発』の岸辺和也や『エチュード』『マインド』の藤森紗英のように、最初から用意されているわけではありません。鷹原研究室は捜査対象となるため、除外されます。
碓氷が苦労して見つけ出したのは、なんとユダヤ人考古学者のジョルジェ・アルトマン博士。ただし、日本の大学で教鞭を執る研究者であり、日本語も実に流暢に操ります。
しかもこのアルトマン博士、民俗学や言語学にも精通しており、多角的な見地から事件と向き合えるため、紋様の謎解き以上に碓氷の捜査を支えてくれます。
ということで、あとはいつものパターンです。碓氷がアルトマンに能力を最大限に発揮させ、紋様の謎を解き犯人を特定し、事件を解決に向かわせます。いつもながら心地よい終盤でした。
本作で印象的だったのは、アルトマンが碓氷を評した2つのことば。
1つ目は「あなたはまったく刑事らしくない」です。
基本的に人というものを信じている碓氷に対する感慨です。(「俺は基本的には性善説だ」の半沢直樹とよく似たスタンスですね )
2つ目は「あなたは、不思議な人だ。媒体のような人だと思います」です。
捜査に不慣れな専門家に居心地の悪さを感じさせることも萎縮させることもなく、事件そのものや捜査本部との仲立ちをしてくれる碓氷に対する称賛です。謂わば碓氷という OS が、専門家というアプリケーションソフトの利便性を十二分に活かしているような感じでしょうか。
裏方に徹し相棒の活躍をお膳立てするという碓氷が、とてもカッコよく見えます。
そんな碓氷弘一シリーズ。なかなかのおもしろさでしたが、 2015 年出版の6作目『マインド』以来、続編は出ていないようです。
このシリーズの特性を考えれば、テーマの設定自体が大変そうなので仕方ないのかも知れませんが、やはり淋しさが拭えないのは確かです。
こうなれば、他のシリーズに碓氷がゲスト出演するなんてことを願っています。
碓氷弘一警部補、とりあえずはお疲れ様でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
碓氷刑事と協力して捜査のお手伝いをすることになった大学教授。考古学の専門家が刑事とは違う視点で事件を解決に導くところに、東野圭吾のガリレオを思い出した。シリーズ第5作らしいので、前作も読んでみたくなった。
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新幹線の移動時の暇つぶしに読了
以前から面白い警察小説を書かれている作家さんと知っていたけれどとにかくシリーズが多いので手を取るのをためらっていたのでタイトルで決めた
タイトルの「ペトロ」は、犯行現場に残されたペトログリフと、キリストの12使途ふたつの意味から
熟練の刑事と、日本で教鞭をとる外国人大学教授と言うのはほかではあまり見かけないかな?(川瀬七緒の法医昆虫学捜査官が少し近い?)
大学と言う閉鎖された場所の人間関係と、残されたペトログリフの意味を調べ上げていくくだりが面白く、人との関係のボタンのかけ違いが悲しく
読み終わったあと、残された人たちの気持ちを考えるとやるせない -
2022年6月13日
物知りだなぁ、今野敏。
ペトログリフや神代文字。
記紀より以前の古代史、
キリスト教の12使徒。
逆さ十字
アルトマンや尾崎、浅井が博識なのはもちろんだが、それを書いている今野敏が更に博識なのだ。
そして、碓氷やアルトマンの人となり、
職業らしさも書き分けている。
魅力的な人物像。
母語でない字を正しく書くのは難しいというのは実感するこの頃だ。仕事と直結した感想だ。 -
読売新聞夕刊2011年4月11日〜12月28日連載のものを2012年4月中央公論新社刊。2015年1月中公文庫化。碓氷弘一シリーズ5作目。元言語学者で考古学、民俗学の学者と組む碓氷さんですが、今回は、良いチームプレーが、できてないなあと気をもみました。
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4月-15。3.0点。
碓氷弘一シリーズ。考古学者の妻が殺害される。
現場にはペトログラフと言われる古代文字。
妻は学者の教え子。大学の研究室の人間関係が複雑。
そして次の殺人、ペトログラフもあり。。
学者が捜査に参加し、大活躍。
サラッと読める。 -
毎回様々なジャンルの個性的な人物が、碓氷警部補と相棒を組み、事件を解決してゆくシリーズ。
今回は、日本語ペラペラの外国人で大学で考古学を研究しているアルトマン教授。
何しろ、事件現場に残されているメッセージらしきものは、ペトログラフという古代文字。教授の助けを借りて、犯人に迫る。
考古学や古代文字、さらにキリストと十二使徒の話まで出てきて、その方面に知識・興味のない身には、ただ読み流すだけ(^^;)。
様々な文献を調べ、小説に仕上げた著者の努力に敬意を表したい。けれど、殺人事件の現場にわざわざ古代文字のメッセージとは、その研究者が対象とは言え、小説の設定でも些かムリ篇があるんでは・・・ -
碓氷シリーズ第5作目。1作目の触発が1996年で5作目が2012年ってすごい。触発の時はモデムでインターネットにつなげてブラウザを立ち上げてと、古さを感じるけどペトロになると刑事はノートパソコンで報告書作成してる。今回の相棒は大学の教授。意外な人が相棒になって事件を解決。これ、ドラマ化したら面白いのに
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刑事と外国人大学教授との異色コンビによる謎解き
大変 面白かった