- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122065383
作品紹介・あらすじ
「こんな苦痛を我慢しなくてはならない世界は嘘の世界ではないか。本当はこんな苦しい思いをしないでも、いくらでも楽に生きていける世界があるのではないか」と胃痛をかこちながらも欲望を抑えきれず、そば饅頭をつまんだ漱石、煎餅に柿十個、うどん八杯食べた「食欲の鬼」子規、お汁粉をこよなく愛した芥川龍之介、災難よけに毎朝梅干しを食べた泉鏡花、その日の献立が変わると不機嫌になった谷崎潤一郎……。
文学作品からはうかがい知れない食いしん坊文士たちの生身の食欲を、家族、友人、弟子たちが愛惜を込めて綴るエッセイ集。
感想・レビュー・書評
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泉鏡花の奥様の丁寧な暮らしぶり(ほうじ茶の焙じ方や梅干しの作り方)がすごい。泉鏡花の奥さんって感じがする。
福田蘭童の語る志賀直哉の話が面白かったので、福田蘭童の志賀直哉にまつわるエッセイを読んでみたいと思った。
森鷗外が想像と違って「家長と他の家族が別の食事だったりおかずの数が違ったりはけしからん!」というタイプでビックリした。
あと、太宰治の面倒臭い人間性が、鯵を一ザル貰ったくだりだけでも伝わってきた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
明治から昭和の大作家たちの食にまつわるあれこれを、
本人ではなく、奥さんや子孫、友人などが書くというのが面白い。
単にあれが好きでこれが嫌い、というだけでなく、時代が香る。
例えば、ある人は「この時代はこう食べるのが普通」と書き、それだけ読めばそれが事実となるところ、
たくさんのショートエッセイを並べることで、
やっぱり人それぞれ、地域も考え方もいろいろだなぁと腑に落ちる。
夏目漱石は胃弱だけど、消化に良くない豆が好きとか、
文豪の素顔が見られてうれしい。
最後に、編者は編集作業中に他界されたと記してあるのも余韻として響いた。 -
これまでに発表されていたものから食に関するものをまとめたもの。
編者紹介で若くして亡くなったんだと思って、一応ググったら、全くそんなことなかった。
生年かと思ったら卒業年を勘違いしてた。
みんな文士なんだろうけど、知らない名前もあって、文士の紹介もして欲しい。
執筆者紹介はある。家族、知人実際に知っている人の言葉は面白い。どういった関係か書いてない執筆者が研究者ってだけなら、他人の文章を他人がまとめるという、ね。
花長(閉店)、天兼、泉鏡花の奥さんの番茶を焙じたものとか気になる。 -
浦西和彦 著「文士の食卓」、2018.3発行。食の雑誌から集められた石川啄木、志賀直哉、室生犀星、泉鏡花、芥川龍之介、坂口安吾ら15人の文士に関する27のエッセイです。少し期待しましたが、それほどのインパクトはありませんでした。泉鏡花は毎朝、妻すずが手塩にかけた二十年漬けの梅干を味わってたそうです。室生犀星は日本酒好き。そして、いきつけの店、おでん屋に妻子を招くほど、かくしだてのない人だったと。
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面白かったです。
文豪の家族・友人・弟子たちによる、文豪の食に関するエッセイ集でした。
食いしん坊な文豪たちのエピソードが、微笑ましかったり、でも付き合う周りの方は大変だっただろうな…と思ったりしました。
煎餅と柿10個と鍋焼うどん8杯を一度に食べてた正岡子規に驚き、食べ物のことで頭がいっぱいだった夏目漱石や、一日の食事のメニューを決めていて予定が狂うと不機嫌になる谷崎潤一郎をかわいいと思ったりしました。 -
文豪の家族、弟子、友人による、文豪の食にまつわる思い出話を書いたエッセイを集めた1冊。表紙に掲載されている文豪のラインナップにお気に入りの人がいるならば普通に楽しい1冊になると思います。
新書なんかでよくある、ライターがこういった資料を寄せ集めて部分抜粋をしながら、面白おかしく纏めたような企画本ではなく、文豪の身内自身が書いた随筆をそのまま1本まるごと収録していてくれているのが良いですね。実際に当人と触れ合った事がある人々の視線を通して、各作家の人となりが垣間見えて面白かった。
巻末の執筆者一覧も、寡聞にして知らない人の場合など、経歴が気になったのでありがたいw -
文士による食に関するアンソロジーでは無く、文士たちに纏わる人達による文士の食に関する随筆です。傍から見てきた分赤裸々で、生活感溢れる素敵な一冊でした。余裕派最高!
坂口安吾の安吾飯がざっくばらんで美味しそうでした。汚く散らかった部屋の湿った布団で半分コして食べてみたい…。
志賀直哉、と云うか福田蘭堂氏の猟(漁)に関する件も楽しいです。お汁粉は飲むか食べるかの芥川あたりもグッと来ます。
うっかり健康診断前の付焼刃ダイエット期間に読み始めてしまい、それだけは失敗しました(笑) -
この本の編者、浦西和彦は同じ中公文庫の既刊、酒と作家たちの二作の編者である。
先の二作を読んで、面白かったので、この本も読んだ。
どの作家もポピュラーな作家ばかりだが、特に正岡子規と志賀直哉の項を読んで、子規と志賀の作品を読みたくなった。
良い意味で、「読書誘引剤」である。
編者の浦西和彦が死去していたと巻末で知らされ、少し驚いた。もっと沢山のアンソロジーを編んで欲しかった。 -
甘いものに目がなかった漱石、いちどきにうどん八杯を平らげた「食欲の鬼」子規。共に食卓を囲んだ家族、友人、弟子たちが綴る文豪たちの食の風景。