アジア史概説 (中公文庫 み 22-23)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (592ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122066038

作品紹介・あらすじ

漢文明、イスラム・ペルシャ文明、サンスクリット文明、そして日本文明等が交流しあい発展してきたアジアの歴史を活写した名著。〈解説〉礪波 護

感想・レビュー・書評

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  • 500頁を超える文量で描かれるアジア史。東だけでなく西、中央、南、東南、北アジア全域を視野に入れ、更に常に歴史的に交流のあったヨーロッパとの関わりも含めて古代から1970年くらいまでを記述する大作。第三章までは戦前に書かれたものだと解説で知って驚いた。古代史の記述で進歩史観的な視点が拭えないのは時代的に仕方ないなと感じる部分もあるが、そこを差っ引いて読めるなら今でも、今後も、長く通用する歴史書でしょう。特に中世、近世の各地域の経済的影響の繋がりによる時代区分の進展はアジア史を立体的に学ぶことができて素晴らしかった。個人的には終章「現代アジア史」で清末期以降の中国史の主要人物や勢力と出来事のつながりや流れを理解できていなかったので勉強になった。

  • アジアの中、世界の中の日本史を、戦前を知る歴史家が一気に語る。70年代の視点でも、中国から中東まで、ここにどう至ったかの理解を助けてくれる。日本に対する視線も、独特の位置付けを与えつつ、広い文脈から、覚めた厳しい眼差しをこれからを生きる世代に問いかける。

  • 岡本隆司 著の「世界史序説」(ちくま文庫)を読み、幾度も引用されていた「アジア史概論」を読みました。いつかは読もうと思いつつ、ページ数が多いのとアジア史の知見に乏しいのとで、やや敬遠していたものです。6月22日に改版が出され、「勇気をもって」手にしました。文章は読みやすく、洞察も優れた書で、読んでよかったと思います。「世界史序説」も出口治朗氏も中央アジアの重要性を説いていますが、発端はこの書にありと思います。世界史というと欧州中心になりますが、得意の中国やウィグル、トルコ、モンゴルなど、さまざまな民族がユーラシア大陸を縦横無尽に移動することで、物資・宗教・文化が広がった様子がわかります。何より感嘆するのは、著者の豊富な歴史知識。「『女の一生』」は小説になるが、「『学者の一生』は単調で面白みがなく小説にならない」と著者は語ったそうですが、黙々と研究に励んだのではと思う博識ぶりでした。圧巻は最終章の「現代アジア史」。歴史家としての洞察・分析が素晴らしく、日本は「モラルの資源を愛護することを知らなければ、経済成長も見かけ倒しで長くは続かない」と予言します。読後は「心豊かになった気になる」、そんな豊穣感のある書としてご紹介します。

  • ユーラシアの歴史を、西アジア、インド、中国を基軸に概説する。広大な地域を扱うだけに、各地の各出来事をつぶさに述べるのではなく、文明間の人や物や思想の交流、戦争による勢力の変化など、重要ポイントを押さえながら、その事象の意義を評価し、因果関係を明らかにしていく。無数の史実を抜粋して縦横に駆使し、歴史の発展(ないし停滞または後退)を、一般読者にも分かりやすいよう噛み砕き、適格な文章で表現した点に、本書の最大の価値がある。ユーラシアを俯瞰する上で欠かせない一冊で、オリジナルが戦後間もない刊行だけに時代的制約があり、用語が古かったり、追加された「現代史」も半世紀前だったりするが、それでもその優れた内容は、今後も常に新しいであろう歴史書と言える。

  • ようやく読了。
    前半本編はもともと戦時中に企画執筆されたものだという。ヨーロッパに対するアジアの優位の強調など、ああ、と思うところはあるが、わりと普通に読めるから恐れ入る。僕らが受けた歴史教育の史観も執筆当時とあんまり変わらないのかもしれない。
    通貨流出による不景気で文明が衰退するあたり、昨今の状況をかんがみると恐ろしい。

  • 漢文明、イスラム・ペルシア文明、サンスクリット文明、日本文明等が競い合い、補いながら発展してきたアジアの歴史を活写した名著。〈解説〉礪波 護

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著者プロフィール

1901-95年。長野県生まれ。京都帝国大学文学部史学科卒業。京都大学名誉教授。文学博士(京都大学)。文化功労者。専門は,東洋史学。主な著書に『東洋に於ける素朴主義の民族と文明主義の社会』(1940年)、『アジア史概説』全2巻(1947-48年)、『雍正帝』(1950年)、『九品官人法の研究』(1956年、日本学士院賞)、『科挙』(1963年)、『水滸伝』(1972年)、『論語の新研究』(1974年)、『中国史』全2巻(1983年)ほか多数。『宮崎市定全集』全24巻+別巻1(1991-94年)がある。

「2021年 『素朴と文明の歴史学 精選・東洋史論集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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