軍旗はためく下に-増補新版 (中公文庫 ゆ 2-23)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122069138

作品紹介・あらすじ

敵前逃亡・奔敵、従軍免脱、司令官逃避、敵前党与逃亡、上官殺害。陸軍刑法上、死刑と定められた罪で戦地で裁かれ処刑された兵士たち。戦争の理不尽を描いた直木賞受賞作に著者の自作再読エッセイを収録した増補版。

〈解説〉五味川純平

〈巻末エッセイ〉川村湊

感想・レビュー・書評

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  • 1970年の直木賞受賞作品。敵前逃亡は死刑、陸軍刑法によって理不尽に処刑されてしまったたくさんの日本兵のはなし。

  • 覚悟の戦死ではなく、戦犯となり死刑となった人たちの経緯をたどる短編集。

    何度か挫折しそうになった戦争小説。限りなくノンフィクションと言っても間違いない太平洋戦争の「理不尽」が満載。

    総力戦の負け戦には、本作で描かれた「理不尽」も待ち受けることを全日本人は肝に銘じるべき。

    構成もさることながら「本作を若者たちに読んで欲しい」という著者のあとがきも的確であり秀逸でもある。

  • 戦争はもちろんのこと軍隊組織の非合理性を説く。軍法会議をテーマに組織の歯車に潰された哀しき兵士たちを、独特の伝聞体で描く。

  • 下級者ほど虐められる軍隊の生態を、5つの事例(物語)で炙り出す。敵前党与逃亡のエピソードは白眉で、逃亡罪で処刑された一軍曹の死の真相が、小説「藪の中」のような各証言者たちの矛盾する会話の中で進展し、戦後四半世紀の時間の流れがもたらす忘却と混乱、責任に対する義務と回避、戦場の飢餓の修羅場が、渾然一体で描き出される。最後の一文は、狂気の一篇に相応しい味のある締め括りだった。実際の事件をベースとした各編の登場人物も、畢竟今日暮らす人々と何ら変わらぬ人間で、異常な環境こそ違えど、それぞれに人間臭さが滲みてている。戦場という、今や日本人から縁遠く成り果てたシチュエーションは、人間を描く上で今日益々有効な印象を抱いた。それは戦地を知る(語る)人だけが書き得るものではあるが。

  • 陸軍刑法上、死刑と定められた罪で戦地で裁かれ処刑された兵士たち。戦争の非情を描く直木賞受賞作に著者自作解説を増補。〈解説〉五味川純平/川村 湊

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著者プロフィール

結城昌治

一九二七(昭和二)年、東京に生まれる。四九年、早稲田専門学校を卒業し、東京地検に勤務したが、結核が発病し三年間の療養生活を送った。五九年、短篇「寒中水泳」によって認められ、『ひげのある男たち』『ゴメスの名はゴメス』等を執筆し、ユニークな推理作家として注目された。七〇年、「中央公論」に連載した『軍旗はためく下に』で第六十三回直木賞を受賞。ほか『夜の終る時』『志ん生一代』など著作多数、「結城昌治作品集」(全八冊)がある。九六(平成八)年一月没。

「2020年 『軍旗はためく下に 増補新版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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