一杯のおいしい紅茶-ジョージ・オーウェルのエッセイ (中公文庫 オ 3-1)
- 中央公論新社 (2020年8月21日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122069299
作品紹介・あらすじ
鋭利で辛辣、政治一辺倒――
そんなオーウェルのイメージは
本書を読めば心地よく裏切られる
「人間はぬくもりと、交際と、余暇と、
慰安と、安全を必要とするのである」
自然に親しむ心を、困窮生活の悲哀を、
暖炉の火やイギリス的な食べ物、
失われゆく庶民的なことごとへの愛着を記して、
作家の意外な素顔を映す上質の随筆集
文庫化に当たり「『動物農場』ウクライナ版への序文」を収録
感想・レビュー・書評
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津村紀久子さんの「苦手から始める作文教室」の中で、紹介されていたので、すぐ本屋で買って読みました。「動物農場」「1984年」など、全体主義に対する反体制の強い作品のイメージがある著者の柔らかな目線で、綴られる随筆集です。紅茶の淹れ方や、クリケットのことなど、日常で思うことをありのままエッセイとして描いているので、とても読みやすかったです。著者のイメージが180度変わりました。
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紅茶へのこだわり、未来予想、作家志望の人へのメッセージまで、盛りだくさんのエッセイ36編。
『動物農場』の著者の少しプライベートな(?)一面も知れて、面白かったです。
また、私も物事に対してもっと真剣に向き合い、意見を持とうと思いました。 -
『1984年』のジョージ・オーウェルの随筆および書簡集とあったので読んでみた。
これを読むと、ごくありふれた生活感情の持ち主だったことがわかる。紅茶の淹れ方のこだわりや、ビール大好きなところなど、何だか微笑ましくさえ感じられる。だからこそ、『1984年』や『動物農場』がこの人によって書かれたのだということに意味を感じる。当たり前の生活感情を持った一個人だからこそ、当たり前でない「何か」が生活の中に忍び込んでくることにアンテナを立てられたのかもしれないということ。そして、当たり前の生活感情と非凡な表現能力は乖離しないものなのだということ。当たり前に暮らしながら、当たり前でない何かを残せることに、ますます畏敬の念が深まった。 -
言わずと知れた『動物農場』『1984年』の著者、ジョージ・オーウェルのエッセイ!どんな人なのかと思ったら、回顧主義者のちょっとメンドクサイおっさんで、食器洗いに苦心している庶民的なところもあり、全文通して真面目な文体なのにめっちゃ面白い人だった(interestingというよりfunny)!
第2部の『ジュラ島便り』はジョージ・オーウェルが知人にあてた書簡をとりまとめたものなのだけど、この時に、あの『1984年』を書いていたんだなぁ、と思うと不思議な感じです。この手紙を書いた2、3年後には亡くなってるんですよね。人生は短い。
もし、ジョージ・オーウェルが現代に蘇ったら、私なら間違いなく、いの一番に彼に食洗機を見せる!! -
オーウェルの本が好きなので(まだそれほどたくさん読んだわけではないけれど)随筆も面白いんじゃないかと思い購入。イギリスの歴史や文化を知っていれば面白さが倍増すると思う。
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オーウェルといえば1984や動物農場などの作品のイメージが強いけれど、このエッセイを読んで彼に対する印象が大きく変わった。特に1章の食事や日常生活に関する内容がとても面白い。電車の中で笑いをこらえてしまうようなところさえあった。筆者が言うには、おいしい紅茶を入れるには11点もの譲れない条件があるらしいし、理想のパブの条件をすべて満たすパブは実在しないらしい。
私がこの本をこれだけ面白く読めたのは、日本語訳がまた実に良いものだったからというのもあると思う。たいていの翻訳ものは、読んでいて何を言っているかわからなかったり、ジョークが通じなくなっていたり、「本当に原文でこんなこと言ってるのか?」と思えるようなところがあったりするものだけれど、この本についてはそういう点が全くなく、終始とてもリズム良く楽しく読むことができた。一見とても真面目そうな雰囲気の文体なのに、実はものすごく面白いことを言っていたりして、そのギャップで余計に笑わされた。翻訳されることによって作品がより良いものになるという好例!
個人的には「クリスマスの食事」がとても面白くて、笑いたい気分のときに何度も読み返している。 -
2023.2.14市立図書館
図書館の「紅茶とコーヒーに関する本」の特設コーナーでふと手にとった。何年か前に新聞の読書面でみつけた紹介記事を切り抜いて読んだことがある気がする。しかも文庫化に当たり「『動物農場』ウクライナ版への序文」が収録されているとある。2020年夏といえば、クリミアですでに揉めてはいたが、まだロシアが攻め入る前だけれど、どうして1947年に書かれたその文章が文庫化するときにあえて収められたのだろう? それで気になって借りた。
「動物農場」と「1984年」で名高いオーウェルのB面、エッセイを集めた本。そのオーウェルが第二次大戦後まもなく50年も生きないうちに亡くなっていたとは。
それはともかく、エッセイは創作とはうってかわって、個人のこだわりをユーモラスに開陳して気楽に読ませる文章でおもしろい。後半の文学に関する文章も、よみながらあれこれ考えさせられた。
最後に収録されたウクライナ版「動物農場」への序文は、手際よい自己紹介とこの物語を書いた経緯が説明されており、当時ソ連邦下にあったウクライナの人々は「動物農場」を読みながらなにを思ったのだろうと考えるよすがになった。 -
ジョージ・オーウェル という人の印象がずいぶん変わりました。