評伝 ナンシー関-「心に一人のナンシーを」 (中公文庫 よ 64-1)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (398ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122072145

作品紹介・あらすじ

没後20年、異能の消しゴム版画家・ナンシー関の傑作評伝が待望の復刊。リリー・フランキー、宮部みゆきなど多彩なインタビューでその生涯に迫る。


【目次】

まえがき

プロローグ


第一章 ナンシー関の才能とその影響力

第二章 が誕生するまで

第三章 青森での関直美

第四章 旅するナンシー、歌うナンシー

第五章 ナンシー関の全盛期

エピローグ

あとがきにかえて




マツコから見たナンシー

〈解説〉

ナンシー関がいた時代 与那原恵

感想・レビュー・書評

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  • ナンシー関の評伝があると知ってとりあえず読んでみた。私自身はナンシー関が本当に好きなので彼女について書いてあればそれだけで満足なのだが、一つの評伝としての出来はおそらくまあ普通で、特に新しい視点とか気づきがあるわけではないので、ナンシー関を知らない人には勧めない。ナンシー関自身の著作を読めば足りることである。
    私の姿勢としては、ナンシーの新作がもう出ないから、弁当箱の蓋の裏にくっついた米粒でもいいから食べるように読む感じか。いやそれは言い過ぎだとは思うんだけど、こういう文章を書いてしまうのはナンシーの影響がきっとあるんだろうなあ。
    私の中でナンシーは「含羞の人」という言葉が一番ピッタリくる表現なので、この著者はどうもその「含羞」の部分がしっくり理解できていないんじゃないかな?と感じる部分がしばしばあり、そこが最も残念だった。ナンシーの本質はおだやかで繊細でシャイで慎ましやかな乙女なのだ。そのナイーブ極まりない心臓部分を所ジョージやビートたけしの韜晦で防御したうえで生来の知性という攻撃力を発揮したからこそのあの切れ味のコラムだったのだ。その上に燦然と輝く旗印は消しゴムはんこ。完璧だ。
    取材を重ねた労作であろうし、消しゴムはんこの名作も多数見られたので有り難くはあったが、繰り返すが人には勧めない。ナンシーを好きでたまらない人だけ、こっそり読んでください。

  • もう亡くなられて20年…著作は当時色々楽しませていただきましたが、評伝の中に散りばめられた引用原文を今読んでも、途轍も無く面白いし色褪せていないという不思議。話題は概ね20年以上前のテレビやメディアの筈なのに!
    生い立ちをはじめ、家族や仕事仲間からのこぼれ話等、関直美と言う規格外の天才に関するあれこれを、よくここまで詰め込んだなと感心してしまいました。

    改めて色々再読しようかな。

  • しばらく前に読了したきり感想を書けずにいましたが、「今年読んだ本の感想は今年のうちに」と思い立ちましたので書きます。
    本書の「心に一人のナンシーを」という副題を見て、もう20年以上前から私の心の片隅にはナンシーが棲み着いていたのかも、と気づきました。
    あのテレビや芸能人、世情に対する鋭い批評眼と文体にはとても到達できる気がしませんが、テレビ番組などを少し違う目で見て考えようとする癖がついたのは彼女のおかげだと思っています。
    ただ、違う角度で考えようとしても、つい「作り手側の視点」とか余計なことを慮ってしまうのが現実です。
    ナンシーのすごさは、番組の作り手や出演者に無用な慮りをすることなく、容赦なく批評で斬り続けたことにありました。
    本書に、斬られた芸能人が歩み寄ろうとしても受け付けなかったとの記述がありましたが、それはなかなかできることではないと思うと同時に、彼女の本質の心優しさに根ざす行動でもあったと思うのです。

    「時の人」の出現・出没範囲が旧来の放送界だけではなくSNS、動画といったネット界にも広がっている2020年代に、もしナンシーが生きていたならどこまでカバーできていたでしょうか?
    また、メジャーな雑誌に連載を持ってからも、ご意見番ではなく在野のスタンスを保とうとし続けた所に彼女の魅力があったと個人的には考えていますが、SNSや動画さえ使いこなせれば誰もがご意見番を気取れてしまう今の世界をどう批評して斬ってくれただろうか? そんなことを考える瞬間が今も時折あります。だから私は、心の片隅のナンシーを決して見失うまいと留め続けているのかも知れません。

  • 不世出のコラムニスト。
    テレビウォッチャー。消しゴム版画家。
    鋭い観察眼と類稀なる表現力を持ちながら、
    己については避けるように触れなかったナンシー関
    関係者たちの当時のコメントや取材から、
    ナンシー関の人となりや人生に触れています。

    ナンシー関ってどんな人なんだろうとか、
    ほかの面白い人たちはどう思ってたんだろうとか、
    作品からしかナンシー関を知り得なかった、
    当時子供の私はぼんやり気になっていました。
    なので関係者のコメントは興味深く読みました。

    やはり秀逸なのは消しゴム版画ですね。
    何度も見てるのに毎回笑いを堪えられません。
    まさに"眼福"です。私にとっては。

    その人がイキってる一瞬の表情を切り取って版画で
    "違和感"を明確にし、その正体をさらけ出す

    ツボを押された気持ち良さ、かはっ! くふっ!
    しかも、表情と、ひと言だけで。
    手際の見事さに今度はうーん…と唸りまして、
    その人のドラマを想像してまたじわじわ笑います。
    マッサージ受けてるおっさんみたいですけど、
    ホント、何度見ても笑います。

    有名人が"その気になってるときの顔"の版画。
    そばには辛辣で痛快かつ納得の"ひと言"

    有名人が実は心の底で思ってそうな"心意気"だったり
    有名人の意図しない形で浮いてくる"無理"だったり。
    「言ってやるなよ」と笑ってしまいます。

    もう何回見ても声上げて笑ってしまう。

    第一章 ナンシー関の才能とその影響力
    第二章 〈ナンシー関〉が誕生するまで
    第三章 青森での関直美
    第四章 旅するナンシー、歌うナンシー
    第五章 ナンシー関の全盛期
    巻末インタビュー マツコから見たナンシー
    解説 ナンシー関と雑誌の時代 与那原 恵

    ◎宮部みゆき、土屋敏男、小田嶋隆、山藤章二、
     えのきどいちろう、いとうせいこう、
     リリー・フランキー、松本人志、みうらじゅん、
     高田文夫、関真里ほか

    ナンシーは王様は裸だ、って言っちゃう娘なんだ。
    みんなが言えないような正論を言ってくれるから、
    スカッとするんだよ。

    言われてみればその通りなんだけど、
    普通はなかなか気づかない。
    それをズバッと言うでしょう、ナンシーは。
    そのセンスが素晴らしい。
    (高田文夫・談)

    会えばいつでも、あの芸能人がいい味出しているとか、あの人のフェロモンは貴重だとか、周りから見たらどうでもいいようなことを二人で夢中になって話していましたね。

    当時のテレビ業界には、ナンシーさんの文章によって、裸にされるのを怖がっている人たちがたくさんいたような覚えがあります。ナンシーさんには見抜かれちゃうから。
    (みうらじゅん・談)

  • なんで評伝て苦手なんだろうと思いながら読んだ

  • "職業に貴賤はない。でも哀しみや悔悛や理不尽はあるだろう。ないのか忠明。"(p.60)

  • 「心に一人のナンシーを。」
    ナンシーさんが生きていたら、現代のテレビ界をどう斬るのだろう。

    --
    ・ナンシーのテレビ評の魅力は、これまで漠然と思っていたことを、的確に言語化してくれる点にある。人々の胸の中にあるもやもやとした感情を、平易な言葉と鋭利な論理で明快に説明してくれる。そうしてはじめて人はその事情を笑ったり、不愉快の理由を知って溜飲を下げたりすることができる。ナンシー関はその能力において、一頭地を抜いていた。(p.5)
    ・「ナンシーさんの文章は、引っかかるところがないんですよ。スラスラと頭に入ってきて、文句なくおもしろいんです。私は、文章を書く力って、観察眼と聞く力によるものが大きいんだと思っています。(p.34)
    ・家庭を持たない、子どもがいない…それって、周りから見ると一種の”異邦人”なんですよね。(p.41)
    ・ナンシーからすると、「けっ」という感じだったのだろう。(p.67)
    ・女性として惹かれたというより、嫁になりたいと思うぐらい私はヒクソンの強さを認めた、ということ(p.112)
    ・「タチが悪いといえば、ベビーカーを押しながら歩いている母親ほどタチが悪いものはない。…そして世の中以上に、当の母親本人が自分の姿が表している『絶対的な正義』を確信している。酔っているとさえ言ってもいい。無防備な自己陶酔。他から自己陶酔を見破られるということはとても恥ずかしくてかっこの悪いことだし、見破ったほうも居心地の悪いものである。が、この母子像の自己陶酔に関しては、その見苦しさを不問にしている、というより見ていないのである」(p.296)
    ・ナンシーが嫌ったのは妊婦でも、子育てでもない。それらに対して親自身が勝手に抱き、周囲にまき散らす”絶対的な正義”の感じである。(p.300)
    ・「心に一人のナンシーを」自分で自分に突っ込む姿勢を持っていようよ、っていうことですよ。(p.304)

  • 異能の消しゴム版画家・ナンシー関の傑作評伝が待望の復刊。リリー・フランキー、宮部みゆきなど多彩なインタビューでその生涯に迫る。〈解説〉与那原恵

  • 恩田陸がおもしろかったと書いていたので読んでみた。正直、少し世代が違って、ナンシー関は、なんか太っててテレビみて、ハンコ彫っているよくわかんない人、というくらいにしか知らなかったけど、この本読んで、そのイメージはまったく変わった。
    この本は、へたな学術書よりよく調べてあって、よくできていると思う。テレビの批評をするっていうのが、どういうことなのか、少しだけ想像できたし、だれにでもできることではないことは、よーくわかる。

  • ナンシー関さんへの興味は、正直にいえばなかったが、タイトルの「心に一人のナンシーを」というのにヤラレてしまった。
    これは読むしかないなと。
    自分も以前はテレビ大好き人間だったから、当時にナンシー関さんのコラムとかを読んでいたら、おそらく気に入ったのだろうな。
    所々のせてあるコラムの一文に声を出して笑ってしまう位面白かった。
    今度は ナンシー関さん自身の著書を読んでみようと思った。
    この本の著者は、うまくナンシー関さんを引き立てているなぁ。

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著者プロフィール

横田増生

一九六五年、福岡県生まれ。関西学院大学を卒業後、予備校講師を経て、アメリカ・アイオワ大学ジャーナリズム学部で修士号を取得。九三年に帰国後、物流業界紙『輸送経済』の記者、編集長を務める。九九年よりフリーランスとして活躍。二〇二〇年、『潜入ルポ amazon帝国』で第一九回新潮ドキュメント賞を受賞。著書に『ユニクロ潜入一年』『「トランプ信者」潜入一年』など。

「2022年 『評伝 ナンシー関』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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