評伝 ナンシー関-「心に一人のナンシーを」 (中公文庫 よ 64-1)
- 中央公論新社 (2022年5月24日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (398ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122072145
作品紹介・あらすじ
没後20年、異能の消しゴム版画家・ナンシー関の傑作評伝が待望の復刊。リリー・フランキー、宮部みゆきなど多彩なインタビューでその生涯に迫る。
【目次】
まえがき
プロローグ
第一章 ナンシー関の才能とその影響力
第二章 が誕生するまで
第三章 青森での関直美
第四章 旅するナンシー、歌うナンシー
第五章 ナンシー関の全盛期
エピローグ
あとがきにかえて
マツコから見たナンシー
〈解説〉
ナンシー関がいた時代 与那原恵
感想・レビュー・書評
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ナンシー関の評伝があると知ってとりあえず読んでみた。私自身はナンシー関が本当に好きなので彼女について書いてあればそれだけで満足なのだが、一つの評伝としての出来はおそらくまあ普通で、特に新しい視点とか気づきがあるわけではないので、ナンシー関を知らない人には勧めない。ナンシー関自身の著作を読めば足りることである。
私の姿勢としては、ナンシーの新作がもう出ないから、弁当箱の蓋の裏にくっついた米粒でもいいから食べるように読む感じか。いやそれは言い過ぎだとは思うんだけど、こういう文章を書いてしまうのはナンシーの影響がきっとあるんだろうなあ。
私の中でナンシーは「含羞の人」という言葉が一番ピッタリくる表現なので、この著者はどうもその「含羞」の部分がしっくり理解できていないんじゃないかな?と感じる部分がしばしばあり、そこが最も残念だった。ナンシーの本質はおだやかで繊細でシャイで慎ましやかな乙女なのだ。そのナイーブ極まりない心臓部分を所ジョージやビートたけしの韜晦で防御したうえで生来の知性という攻撃力を発揮したからこそのあの切れ味のコラムだったのだ。その上に燦然と輝く旗印は消しゴムはんこ。完璧だ。
取材を重ねた労作であろうし、消しゴムはんこの名作も多数見られたので有り難くはあったが、繰り返すが人には勧めない。ナンシーを好きでたまらない人だけ、こっそり読んでください。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
もう亡くなられて20年…著作は当時色々楽しませていただきましたが、評伝の中に散りばめられた引用原文を今読んでも、途轍も無く面白いし色褪せていないという不思議。話題は概ね20年以上前のテレビやメディアの筈なのに!
生い立ちをはじめ、家族や仕事仲間からのこぼれ話等、関直美と言う規格外の天才に関するあれこれを、よくここまで詰め込んだなと感心してしまいました。
改めて色々再読しようかな。 -
しばらく前に読了したきり感想を書けずにいましたが、「今年読んだ本の感想は今年のうちに」と思い立ちましたので書きます。
本書の「心に一人のナンシーを」という副題を見て、もう20年以上前から私の心の片隅にはナンシーが棲み着いていたのかも、と気づきました。
あのテレビや芸能人、世情に対する鋭い批評眼と文体にはとても到達できる気がしませんが、テレビ番組などを少し違う目で見て考えようとする癖がついたのは彼女のおかげだと思っています。
ただ、違う角度で考えようとしても、つい「作り手側の視点」とか余計なことを慮ってしまうのが現実です。
ナンシーのすごさは、番組の作り手や出演者に無用な慮りをすることなく、容赦なく批評で斬り続けたことにありました。
本書に、斬られた芸能人が歩み寄ろうとしても受け付けなかったとの記述がありましたが、それはなかなかできることではないと思うと同時に、彼女の本質の心優しさに根ざす行動でもあったと思うのです。
「時の人」の出現・出没範囲が旧来の放送界だけではなくSNS、動画といったネット界にも広がっている2020年代に、もしナンシーが生きていたならどこまでカバーできていたでしょうか?
また、メジャーな雑誌に連載を持ってからも、ご意見番ではなく在野のスタンスを保とうとし続けた所に彼女の魅力があったと個人的には考えていますが、SNSや動画さえ使いこなせれば誰もがご意見番を気取れてしまう今の世界をどう批評して斬ってくれただろうか? そんなことを考える瞬間が今も時折あります。だから私は、心の片隅のナンシーを決して見失うまいと留め続けているのかも知れません。
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なんで評伝て苦手なんだろうと思いながら読んだ
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"職業に貴賤はない。でも哀しみや悔悛や理不尽はあるだろう。ないのか忠明。"(p.60)
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異能の消しゴム版画家・ナンシー関の傑作評伝が待望の復刊。リリー・フランキー、宮部みゆきなど多彩なインタビューでその生涯に迫る。〈解説〉与那原恵
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恩田陸がおもしろかったと書いていたので読んでみた。正直、少し世代が違って、ナンシー関は、なんか太っててテレビみて、ハンコ彫っているよくわかんない人、というくらいにしか知らなかったけど、この本読んで、そのイメージはまったく変わった。
この本は、へたな学術書よりよく調べてあって、よくできていると思う。テレビの批評をするっていうのが、どういうことなのか、少しだけ想像できたし、だれにでもできることではないことは、よーくわかる。 -
ナンシー関さんへの興味は、正直にいえばなかったが、タイトルの「心に一人のナンシーを」というのにヤラレてしまった。
これは読むしかないなと。
自分も以前はテレビ大好き人間だったから、当時にナンシー関さんのコラムとかを読んでいたら、おそらく気に入ったのだろうな。
所々のせてあるコラムの一文に声を出して笑ってしまう位面白かった。
今度は ナンシー関さん自身の著書を読んでみようと思った。
この本の著者は、うまくナンシー関さんを引き立てているなぁ。