- Amazon.co.jp ・本 (478ページ)
- / ISBN・EAN: 9784124034189
感想・レビュー・書評
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2017.05―読了
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スペイン人の都合で書かれた、インカを脆弱で強圧的で正統性のないものとして描いた「インカ史」、スペイン治下のインディオでインカ王族の血を引く著者が、正統性と支配下の民衆が幸せに暮らす素晴らしい帝国としてインカを描いた「インカ皇統史」。両極端の史料のあいだのどこかの地点が真実なのだろうが、文字を持たぬ民の口承による歴史の柔らかさに翻弄されつつ、考古学的成果が解明の糸口になりつつあるとのこと。スペイン王室が一銭もださずに、自腹で民間で企画し実施された征服。コロンブス、バルボア、コルテス、ピサロ。王室からお墨付きを手に入れるため苦心したり、手に入れられず後から来た総督にすべて横取りされたり、配下のものの不満から追放されたり、インディオと手を組まれて暗殺されたり、の波乱万丈。しかし、征服される側にとっては、発見も統治もいたく迷惑この上ないものだったと思われる。ラス・カサスが最後に残ったかすかな良心のように見える。遅れてきた征服者の一員ウリュアのバイオグラフィーも当時の風潮を典型付けているようで興味深い。/南米の独立運動におけるサン・マルティン、シモン・ボリバルの活動の概観。統一的な南米を夢見るも、各地域の遠心的な志向に阻まれ、結果として独立は果たされるものの、彼らが思い描いていた理想とはおそらく違ったものになったと思われる。/近代アルゼンチンの歴史も、集権的思考と遠心的志向の対立で混乱につぐ混乱が続く。ペロンによるポピュリズムが長期間支持を集め、彼の亡命後も、彼なしの党が選挙で勝つほどの影響力をもっていたことが語られる。/キューバ革命については、カストロ、ゲバラの独立戦争の戦いはわずか数行。その後の政策が、急激な社会主義化により、それを担う知識人層が不足し、満足に運営できず、混乱を来たしていたことが語られている。革命の栄光とともに陰もあったことが。
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本棚に眠らせてます。いつか読むかも。