追放者の矜持 下 - ヴァルデマールの絆 (C・NovelsFantasia ら 1-7)

  • 中央公論新社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784125011981

作品紹介・あらすじ

ヴァルデマールで使者となったアルベリッヒは、故国カースへの忠誠を捨てられず揺れ動く。両国間の戦争は激化し、ついに王女付きとして戦場に赴く日が来た! アルベリッヒの決断とは?

感想・レビュー・書評

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  • ヴァルデマール年代記は、翻訳ファンタジーで一番好きなシリーズです。今回は、ヴァルデマールの永遠の敵国、カース国出身でありながら<使者>となったアルベリッヒの物語。アルベリッヒは、ほかの物語でけして白衣を着ない、むちゃくちゃ厳しい<武術指南役>としてでてきますが、まさか彼の過去話が読めるとは……。
    アルベリッヒが主人公というだけで、もう面白さは保障されたようなものですが、ほんっとーに面白かった!<使者>は「正しいひと」という前提なので、たいていの<使者>はいいこなわけですが、アルベリッヒは出身が出身なので、まーひねひね。すばらしいひねひねです!
    そして、下巻ではヴァルデマールは大きな戦争に巻き込まれ、更にもりあがります……!最終章のネタばらしも……思わず声あげてしまいました。ほんとプレゼントのような物語くれるよなあ>ラッキー様。そしてこの物語は、あのセレネイ様が、大人になっていく物語でもあります。

  •  本作はアルベリッヒの物語。
     中央公論新社は、こういう外伝的な方にウェイトを置くことにしたのかな?
     前作の<a href="http://mediamarker.net/u/ikedas/?asin=412501115X" target="_blank">盗人の報復</a>もスキッフの物語だったし。

     とはいえ本作も、代替わりを描いた重要な年代記の一つであることは間違いない。
     そして、なんというか、「懐かしいヴァルデマール」だった。
     読み始めた頃の雰囲気というか、ひりつくような情景というか。
     最近の作品とは違う、もっと濃厚な空気感の作風だった。

     幾つかの作品で、その存在感を示してきたアルベリッヒ。
     これまでの作品では、その人となりが語られることは少なく、謎の人物だった。
     本作で、その内面と、<使者>、そして<武術指南役>となった経緯が語られる。
     本シリーズの登場人物たちと同様、とんでもなく波瀾万丈な経緯は、まあ読んでもらうとして、素晴らしいのは、本作で語られた人物像が、他の作品でのアルベリッヒと、まったく違和感なく、すんなり入ってきたこと。
     同じ作者の同じシリーズなのだから、それは当然なのでは、という意見もあると思うけれど、本作は、他の作品でのアルベリッヒの大本となる時代を描いたものだ。つまり、本作中でアルベリッヒが経験する様々な出来事や、抱いた思いや考え、そういったものが、その後のアルベリッヒを形成している、と考えられなければならない。
     本作は、まさにその「過去のアルベリッヒ」を、見事に描ききっている。
     いかにして、カースからヴァルデマールへとやってきたのか。
     敵同士であるヴァルデマールのなかに、いかにして収まっていったのか。
     そして、その中枢の奥深くで、確固たる存在感を備えていったのか。
     本シリーズは、そのすべてに明快な答えを示してくれるだろうことを確信した。

     そして、ヴァルデマール年代記ではお馴染みの名言も健在。
    <blockquote> 「一般の信者は、絶対的なものや<答え>を求めた。そして、司祭職にあるものが、ついに<答え>を与える選択をしてしまった。<答え>は、簡潔であるほど良いとされたんだ」ジェリがいった。「そして、<聖典>よりも規則が重視されるようになった。しかも、絶対的にね。<答え>は信者の疑念をすべて取り除き、考える必要さえも奪ってしまった」
     アルベリッヒは眉をしかめた。旧来の信仰を知っている―――実践もしていた―――司祭の監視下で、だてに長い期間を過ごしたわけではなかった。「それを言うなら、<聖典>は男に、あるいは女にも、とりわけ考え方を学ぶよう要求しているぞ」
     ジェリが頷いた。「そうなんだ。旧来の信仰は、<太陽神>のもとへ来る人々に、あらゆることをそれぞれが自分で経験し、考えるよう要求していた。今の規則では、人々は羊になるよう要求されている。いつ何時も、そしてきっとこれからも、群れになって一つの方向を向かされ、敷かれた道を歩かされ、ひとつの牧草地に集められるんだ」</blockquote>
     ちょっと長いけど、これは「信仰」を「教育」に置き換えることが出来ると思う。
     とても含蓄のある、まさに名言。

     そして、なんと言ってもセンダーの演説!
     ちょっと長すぎるので引用はしないけど、本当に素晴らしい、名演説だと思う。

     そして澤田氏の訳。
     巻を重ねるごとに、どんどんと巧くなっていっていると思う。

     次作は、セレネイの側近としてのアルベリッヒを描いた作品とのこと。
     これも楽しみだなー。

  • 戦争は激化してきた様でしたが、何分、アルベリッヒが軟禁状態なので、読んでいてもさほど圧迫感はなく、淡々と進みました。(アルベリッヒはイライラしていたけど…)
    ワザワザ出向いた前線も結構淡々と、私的にはアッサリ終わってしまった感じです。
    残虐なシーンも無かったと思います。
    ただ、後半は涙ぐみました。
    次巻のアルベリの活躍が楽しみです!

  • これはアルベリッヒの物語であると同時にセレネイの女王としてのひとり立ちの物語でもあったのね。

  • 最後の方はちょっとだれちゃったかな。
    共に歩むものを失った使者がどうなるのか等あり、それなりに面白かった。
    次の作品もこの後のものになるのかな、楽しみです。

  • テドレル戦争の時期、セレネイの即位まで。
    創元推理文庫の「太陽神の司祭」を先に読んでおくと最後にニヤリとするかもしれない。

  • 911の1年後に描かれ、NYの消防士たちに捧げられた本だけあって、今までになく、アメリカ的な所がところどころにみられるのが、ちょっと微妙っちゃ、微妙。

    ヴァルデマールとは、アメリカがモデルなのだということをも、強く感じる本。

    前編は、そうでもないけど、テドレル戦争のあたりは特に。

    ファンタジーはファンタジーとして楽しみたいっていうのが本心なので、そういうのはちょっと…まぁ、まだ1年後なので、アメリカがイラク戦争に泥沼化していくことが分かるはずもなく。
    よきアメリカ、よりよき善を目指す世界、理想を目指す国として、描かれるヴァルデマール。
    よそ者アルベリッヒからみたヴァルデマールは、敗戦後の日本人がみたアメリカに近いものがあるのでしょう。

    若きセレネイが、エルスペスに予想以上に似ているし、タリアの物語で、タリアのよき友となるジェイダス、タリアの前任者である、タラミールなど、名前だけは見ていた人が若くいきいきしてる!

    アルベリッヒも若いよー!
    思ったよりかっこ良く描かれていてびっくりさ。
    冷徹な武術教官のイメージが強すぎて。

    セレネイが夫に命を狙われて、アルベリッヒが助けるエピソードを何回も聞きますが、そこまで話は進まなかった。残念。
    次では触れるのかな?

    次はアルベリッヒの恋だって。楽しみ!

    その前にカラルの物語でないかなーヴァルデマールの嵐の2部。
    中央公論のほうがペースが早いから、こっちが先にでちゃうかな?

    何気にヴガンティス、好きなようです笑
    シンエイインの女神よりも茶目っ気たっぷり?笑

  • わあああ、よかった!
    なんかもう139~140ページでは泣きそうになった…こういう精神状態が異常であることを踏まえて、あえてシフトするって。
    それだけに、テドレルの子供たちのシーンで平衡がもたらされるのが心地よい。

    アルベリッヒはもう一作あるそう。楽しみ!

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