知のモラル

制作 : 小林 康夫  船曳 建夫 
  • 東京大学出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784130033077

作品紹介・あらすじ

知は希望を語る。未来の倫理-よりよく生きるために。知と生とが出会う現場にかならず立ち現れるモラルの問題。新しい知が新しいモラルの地平を開くことができるかどうか-混迷を深めるこの世界のなかで、魂のもっとも深いところから、未来への遠い手さぐりのようなモラルの問いをあえて共有する。

感想・レビュー・書評

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  • 「知の三部作」の第三弾です。

    「知のモラル」というタイトルは、「知」の応用問題として「モラル」を考えようという意味ではありません。本書に収められた文章は、「知の世界」に身を置く執筆者たちが、それぞれの直面する問題を通じて、「モラル」へ向けて身を開いていくパフォーマンスを示しています。

    そのなかには、社会生物学についての啓蒙的な解説をおこなっている長谷川眞理子の文章も含まれています。もちろん、啓蒙は科学者の重要な役割です。そして、しばしば科学者たちによってこの役割の重要性が軽視されがちであることを鑑みれば、本書の長谷川の優れた解説文は、「知のモラル」というテーマにふさわしい役割を実演してみせたものと言うことができるように思います。

    ところで、本書の最終章に置かれた文章で、編者の一人である船曳建夫は、「民主的なからだ」「啓蒙的からだ」という、興味深い概念を提示しています。本論に収められた「出会うこと」と「逃げること」のモラルについて論じた船曳の文章も非常に啓発的で、とくにそこで船曳自身の体験として語られている、フィールドワーク中にブタを連れた男と不意に出会ったときに身体が凍りついてしまったというエピソードには、「からだ」という問題圏へと通じる回路が開かれているように思います。

    しかし、本書の刊行から20年近くが経った現在、養老孟司や齋藤孝、内田樹といった論者がさかんに「身体」について発言しているのを知っている読者としては、船曳のおこなったようなしかたで「身体」の問題への回路を開くことに、一抹の不安を感じてしまいます。「知のモラル」は、もう一度「知」のほうへと議論を引きもどしたうえで、あらためて考えなおさなければならない時代が到来しているのではないかという気がします。

  • 放送大学図書館
    チンパンジーの「ヒョウの幼獣殺し」
    チンパンジーにも憎む感情がある。死んだヒョウとお人形遊びをする。
    チンパンジーとボノボには、非動物らしさ、人間らしさがある。
    一方で、激しい攻撃性があり、人間とよく似ている。

  • はじめに
    第Ⅰ部 知のモラルを問うためにー21世紀のモラルを もとめて 小林康夫
    第Ⅱ部 モラルの地平
     人権ー「知」の賢慮に向けてー知とモラル、そし  て知のモラル 樋口陽一
     国際法ー国際法と公正ー国際法の諸事例を通して  小寺彰
     異文化理解ーマジック・ミラーの盲点ー比較文化  の知識社会学 リヒター,シュテフィ
     歴史ー神話をこわす知ー歴史研究のモラルとは?
    小熊英二
    第Ⅲ部 モラルの現場
     権力と反権力ー社会的公正への道ー三里塚におけ  る対話 隅谷三喜男
     教育ー「学校的なもの」を問うー教育の場におけ  る権力・身体・知 森政稔
     戦争ー〈美〉についてー谷崎潤一郎『疎開日記』  から 蓮實重彦
     政治的実践ーエチカとエートスー〈ヴェネチアの  天使〉の哲学 カッチャーリ,マッシモ 訳・  村松真理子 構成・小林康夫
    第Ⅳ部 人間の場所
     遺伝子ー種と個のあいだー「利己的な遺伝子」を  めぐって 長谷川眞理子
     生物としてのヒトー「奇妙なサル」に見る互恵性  ー進化行動生物学からのアプローチ 長谷川寿  一
     人間社会の成立ー危機のモラルーマレクラ島のフ  ィールドから 船曳建夫
     人工物の世界ーコレクションとアブダクションー  学問の作り方とその責任 吉川弘之
    第Ⅴ部 モラルの希望
     主体化ー真理からフィクションへー知のエチカ・  詩のエチカ 松浦寿輝
     探求心ー大学と菩提心ー「般若心経」に読む知の  行為の根源 竹内信夫
     注意力ー「魂の自然な祈り」ーベンヤミン・大江  健三郎・ヴェイユ 小林康夫
    結びーそして希望せよ 船曳建夫

  • 学問におけるモラルのあり方について論じた文集。学問におけるモラルとは何かを強引におしひろげて定義しているような気もするが総じて面白い。

  • test

  • ↓貸出状況確認はこちら↓
    https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/TW00111396

  • 知とモラルの対立ではなくて知をモラルのための希望と見る、なんてかっこよいのでしょう。これにつられて頑張って読みましたが頭に残らない(でも電車の時間つぶしには大きく貢献)。 IMSの教祖吉川の章では演繹(規則、事例→結果)と帰納(事例、結果→規則)と発想(規則、結果→事例)を簡便に説明した。 知の3部作の「最後」ということですが、どの道、読む忍耐もここまでが限界というものです。

  • 再読したい本

  • モラルの数々の形を体現し、
    実際の学問と世界が折り合っていく姿を描写。
    本三部作の読者ターゲット意識には頭が下がる。

  • 大学時代のバイブル

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