- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784130033367
作品紹介・あらすじ
学問は何のためにあるのか。学者はいかに現実をとらえ、またそれに関わってきたのか。近現代の日本の政治学を主たる対象として学問の意味を問う。政治学者・近代史家として学界をリードしてきた著者ならではの学問論。
感想・レビュー・書評
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哲学
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職業的歴史家とジャーナリズム論談との関係は広い意味でのプロとアマの関係。ジャーナリズムは広くアマの立場に立って、国民的な歴史認識の形成に参与すべき。それがジャーナリズムの教育的機能でそこに固有の意義と役割がある。
蝋山の満州問題に対する基本的立場は第一に満州において日本は他国と異なる特殊な地位を有し、かつそのことが他国によって認められなければならないと主張する立場である。
蝋山のいつ超克されるべき民族主義とは第一次的には政治的軍事的意味における民族主義であった、文化的意味における民族主義を含むものではない。蝋山によれば、東洋には数個の文化圏が併存しており、西洋文化に対応する統一的な東洋文化は存在しない。 -
本書は著者が長年の研究生活の中で育んできた学問論を一つにまとめたものである。著者は控えめに述べているが,分量は少なくとも,その内実は大変充実している。とくに評者の関心を引くのは,おそらく本書の中心の一つであろうが,著者による丸山眞男論であろう。著者によれば,タイトルにもある学問が現実にいかに関わるか,その一つの稀有な事例として丸山政治学を取り上げ論じている。意外に思われるかもしれないが,丸山による現代日本政治分析を,「丸山政治学」としてその総合性を指摘し,評価したのは著者が初めてのように思われる。丸山論はこれまでも多数存在しているが,丸山当人の思想や主義,立場,行動について俎上にあげた分析が多数であり,「丸山政治学」を論評したものはほとんどない。近年,丸山がかねてより提起した「政治的リアリズム」の重要性を指摘する論が増えてきているが,本書もこうした流れにあるものと言えるかもしれない。いずれにせよ,本書は(評者のような)学問と現実との関わりについて懊悩にある者にとっても,あるいはこれから学問を志そうとする者にとっても,必読の文献になるだろう。