- Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140019160
作品紹介・あらすじ
トンボ、メダカ、ドジョウ、サクラソウ、アサザ、フジバカマなど、この数年、急速に姿を消しつつある、身近な生き物たちや草花。大量生産・大量消費・大量廃棄という、現代社会の危うさと空しさ。こうした生物多様性の急激な喪失は、生態系の健全さを失わせ、限界をわきまえない地球環境の過剰利用は、地球そのものを破壊する。非平衡、不安定、不確実という、生態学の提示する自然観は、生態系の複雑さと繊細さに、順応的に向き合うことを求める。霞ヶ浦の豊かな水辺の再生を試みる保全生態学の第一人者が、生態系を意識する社会の必要性とそのための方途を強く訴えかける、提言の書。
感想・レビュー・書評
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健全な生態系を持続させるための管理について、著者の熱い思いが伝わってくる。適度な攪乱であれば、自然にとってはむしろ好ましい影響を与え、里山などの伝統的な利用もその範囲にあるとの考え方は勉強になった。
・狩猟採集生活の時代は、1平方キロメートル当たり1〜1.5人程度の人口密度で、雑食性の哺乳類としては例外的なものではなかったと推測される。
・人類史上の最も大規模な環境破壊は、紀元前3000年頃の中国の土壌浸食、紀元前の古代ギリシャの森林破壊、1930年代の北米大平原で生じたダストホール。
・北ギリシャの低地では、農地のために3000年前くらいまでに森林の大部分が失われた。ギリシャ帝国が成立すると、軍艦の建造や金属精錬の薪のために、さらなる森林伐採がすすんだ。
・足尾銅山で産出される銅は、日本の生産量の4割を占めた。銅の精錬の伴って排出された亜硫酸ガスによって、1887〜1956年の間に森林への被害が拡大した。北関東でシカが増殖したのは、足尾の緑化によって外来の牧草地が広がったことが一因と考えられている。
・数十年前から生態学の分野では、自然は非平衡・不安定・不確実性が大きいという見方が支配的になっている。
・ある程度適度な攪乱が起こることは、生態系が健全に存続していく条件でもある。攪乱に依存して世代交代をしたり、破壊されても再生する能力を持った植物が少なくない。
・適度な野焼きや刈り払いなど、里山などにおける伝統的な土地利用や資源利用は、自然による攪乱と同じような効果をもたらすと考えられる。一方で、西欧伝来の科学技術にもとづく農業や林業などは、生態系が経験したことのないような種類や規模の変化をもたらすことがある。
・シカは肉も角も皮も無駄なく利用できるため、狩猟の主要な対象だった。農耕生活を始めると、シカは農作物を荒らす害獣となったため、駆除を兼ねた狩猟がおこなわれるようになった。シカは、ススキ、シバ、ササなどのイネ科草本をはじめとして広範な植物を食べるため、生態系への影響が大きい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
生態系の保護についての本。わかりやすいんだけど、ちょっと強引というか主観的というか、な部分が多かった。同じ著者による似たようなテーマの新書として「自然再生」もあるが、そっちのほうがおススメ。
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生態系のことがわかる本でした。
人が生態系に干渉するにしても、その規模や様式・頻度によって与える影響は異なる。一概に論じるのはいけないなと思いました。
人間が生態系の恵みをいただくためには、生物多様性が大切だということがわかりました。
普段あまり多様性のありがたさを感じないけれど、実は私たちの生活に関わっているんだということに気づかされました。
エコってよく言うけど、本当にそれが環境を守れるのかなって思う活動もあります。本当に地球のためになることを考えて、効果のある策をとっていかなければ! -
生態系がいかに大切なのか?わかりやすく紹介している。生態学を勉強した人も、そうでない人でも参考になる。