- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140813942
作品紹介・あらすじ
日本ではハイテク化が進み、アメリカや中国ではバイオ肥料など、排泄物の有効利用が脚光を浴びている。一方、トイレがない、あるいは、あっても汚すぎて道端でしたほうがましという人も、世界には26億人いる。「なぜ、トイレ?」という周囲の冷たい視線をよそに、突撃型の女性ジャーナリストは、トイレを追いかけて西へ東へ大奔走!英『エコノミスト』誌の2008年ベストブックス選定図書。
感想・レビュー・書評
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初めて知る事実がてんこもりで
自分がいかに無知に暮らしてるかを
知りました。糞便から拡がる感染症を
恐れず(意識せず)生活できている環境が
いかにレアなことか理解できます。
世界の26億人が、トイレも、便器も、
バケツも、箱さえないところで
ウンチしている!
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2015年時点で世界のトイレ普及率が68%というのがまず衝撃だった。トイレがあるのは当たり前じゃない。
衛生面の問題に始まり、野外で用を足すことにより犯罪のターゲットになってしまうこと、学校にまともなトイレが無いがために学校に行けない子供たち、インドで差別が続くトイレ掃除を生業とする不可触民の話など、トイレにまつわる様々な話が体当たりの取材に基づいて綴られている。
重たい問題も含むが、語り口調の文体で読みやすい。良著。 -
日本を含め世界のトイレ事情(トイレがそもそもない場合もあるので、正確には排泄事情)についての、ジャーナリストである筆者が実際に取材したものをまとめた本である。
本書は、世界の様々な様式のトイレを紹介しているという単なるカタログ的な内容の本ではない。
世界の多くの人々が、トイレがないことにより非常に劣悪な衛生環境で生活をしていることやそれにより健康を害している事、改善の為にどのような取組みが行われどのような失敗や成功がされているのかというようなことまで、実に様々な問題を提起し考えさせられる内容となっている。
テレビではここまで詳細な報道はできないであろうから、トイレ事情を知る為のもの、そして地球規模の健康問題を知る為のものとして、この本の存在価値は大きい。
取材エピソードによって語られる文章は、どんどん内容に引き込まれていく。トイレを設置しても使われない状況など、自分の感覚や価値観、想像力がいかにちっぽけで井の中の蛙であったのかを痛感させられた。 -
昔、「トイレット博士」というマンガがありました。当時はありえない下品なマンガだと思っていたのですが・・・。今考えると、あそこまで糞便に向き合えるって凄いことだし、貴重なことですね。
さて、本書の著者は英国の女性ジャーナリストです。表紙折り返しの著者近影で見る限り、結構チャーミングな女性です。この人がこの内容を・・・。ジャーナリストってアドベンチャーですね。
ボクは小さい頃から祖母に大阪弁?で「かんしょやみ(癇性病み)」と言われていました。標準語では潔癖症と言えばいいのでしょうか。
今も治らず(というか、本人はそれが普通だと思っている)電車のつり革を持たない派です。
そんな自分ですが、最も忌むべき場所であるトイレ・便所から目を背けたくないという二律背反(どちらにも価値がある)した価値観を持っています。
まず最初の章に出てくるのが我が国日本のウォシュレット(TOTO)・ハイテクトイレ。この章を読んで、あれ、この本は日本向けなのかな、と思ってしまいました。
しかし、これは後の章に出てくる便所後進国?と対比させるためのトイレの技術としてのレポートです。
良くネット等では訪日外国人の感想として、日本ハイテクトイレが取り上げられますし、近年の中国人爆買いの目玉商品としてハイテク便座があります。
一方、ハイテクトイレがアメリカに受け入れられていないのは、アメリカ人がそれを必要を感じていないという、非常にシンプルな答えが書かれています。
しかし、どちらにしてもそれは下水処理の入り口でしかありません。その先に高度な下水処理の仕組みがあるのです。
その点まで思い至らない自分を発見しています。
それが第二章です。
筆者自ら英国の下水道に降りていきます。映画「第三の男」を始めとし、良く見かけるシーンです。タートルズも下水道に住んでたんだっけ。
良く、台風や大雨で冠水するとマンホールから水が吹き出たりして、下水が溢れます。昔は汲み取り式の便所が大半でもあり、それって汚いよなあと、漠然と思っていました。
しかし、この本によると、通常下水に含まれる屎尿の割合は全体の2%程度なのだそうです。つまり、大量の雨水が流れ込んでくると、その割合はさらに低くなります。
でないと、映画のワンシーンで下水の中をバシャバシャ走るなんて嫌ですよね。
それ以降の章ではトイレ未開発の地域に多く紙数を割いています。
インド・中国・アフリカ諸国
映画「スラムドッグ・ミリオネア」の冒頭のシーンで、スラムの少年が公衆便所に閉じ込められ、肥桶の中に飛び込んで便所から脱出するという見たくないシーンがありました。
しかし、現実にはトイレが「有る」という状態すら少ないのだそうです。
インドを始めアフリカ諸国には下水どころか(上水道もないんだから当然ですよね)トイレそのものがない。存在しない。つまり全員野糞。
これが感染症の温床となり、慢性的に病気を引き起こし、経済活動に大打撃を与えていると報告します。
人類の絶対数ががもっともっと少なかった時代にはこれでもよかったのです(多分)。お天道さんが乾かしてくれました。
これは日本でも同じです。汲み取り式にしろ、水洗式にしろ、古来よりなんらかの設備があったから生活が送れていたのです。
トイレは本当に不可欠なものであるということが再認識されます。
これは経済発展を遂げている中国にも未だにあることで、経済特区以外の内陸部などでは改善すべき場所が多々あるようです。
スカートを履いた女性の身でありながら、描写したくない状態で取材を続けている筆者を尊敬します。
伊達や酔狂でできることではありません。これは目を背けず、世界的問題として、もっとクローズアップされるべきジャンルだと思います。
かと言って、これを映像化できるかというと、あまりにも厳しい。お茶の間に届けるにも十分に配慮を要する話題でしょう。
この問題は小中学校で取り上げるべきで、この本はそのテキストに最適かと思います。 -
トイレ本マニアとしては是非読む本である。
世界中で26億人がトイレのない生活をしているなんて、普段考えたこともないが、その暮らしがどんなものか、そしてそのために死んでいく子どもの数がなんと多いことか。
日本に住んでいて良かったと、しみじみ思ってしまう。 -
世界の半分くらいの人間に、トイレがない。
その不衛生から恒常的に健康を害し、下痢で死に至る子供たちのどんなに多いことか。
ウォシュレットから、堆肥?肥料、トレの普及などに至る、とっても真面目な話。
普段気にしたこともないだけに、とても面白かった。 -
世界のトイレ事情を徹底的に調査し紹介したルポルタージュ。
以前中国のトイレに入った時、便座は汚れ、地面にトイレットペーパーが散乱し、扉と地面の隙間は妙に広くリラックス出来ず、なるべく息を止めて入ったなぁ…なんて懐かしみながら本書を手に取った。ところが内容は想像以上に本格的。
世界でも群を抜いてトイレ技術に力を注ぐ日本で生活をしていると、さもこれが当然と思うが世界ではそうはいかない。世界各国のトイレ整備、非衛生なトイレ、それに関連する病原菌・寄生虫など…ショッキングな実情を目の当たりにできる。生きることは排泄すること。当たり前のことを当たり前と思わず、トイレ・排泄について知り、驚き、考えてみるのも良いかもしれない。 -
公衆衛生をなめていた。エイズ、結核、マラリアで亡くなる子供よりも、下痢で亡くなる子供の方が多いとは知らなかった。公衆衛生を整えれば経済発展を促進することも。なにより、26億人の人たちがトイレのない生活をしていることすら、知らなかった。"清潔なトイレがあるのが当たり前"の環境で育ったぼくは、おそらく、海外でトイレをしなければこの本を手に取ることなんて、冗談以外ではありえなかっただろう。ギョウ虫なんてほんとに存在するのか?腸チフス?コレラ?戦前の話ではないのかという日本ではなかなか遭遇することができないであろうことが、他の国、とりわけ途上国においては死活問題となっている現実。清潔な飲料水にはフォーカスされても、下水処理にはなかなかフォーカスされない現実。バイオマス関連。かつては有能な理に適っていたものも現在は新たな化学物質などが現れたために疑問符がつくようになっている現実。様々なことを自分で判断しないといけない世の中になっているのだと思う。この世に「安全」なんてものは存在しない。そのリスクを受け入れることができるかというように考えることが、これからはスタンダードになる気がする。知っておいた方がいいのに知らないことが多過ぎるとひしひしと感じる。考え方を変えさせるアプローチにも非常に興味深いものがあった。様々なことが解明されるということは、ぼくたちは無知ではなくなるということだ。つまりは知らなかったという言い訳ができないのだ。現実から目を背けず、ぐっとフォーカスする勇気を誰しもが持たなければいけない時代が来ている。世界の何処かで起こってる全ての事象が他人事ではないという意識、そして何らかのアクションが求められているのだ。小さいことからはじめようと思う。