- Amazon.co.jp ・本 (136ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140814888
作品紹介・あらすじ
歴史には時代の流れを決定づけたターニングポイントがあり、それが起こった原因を探っていくことで「日本が来た道」が見えてくる。急速な近代化を果たした明治期の日本-その国家運営の中核を担ったのが「官僚」だった。1889年→1881年→1873年→1871年の指導者の"信念"に裏打ちされた政策を見る。
感想・レビュー・書評
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大久保利通を中心に行われた、官僚主導による上からの国家建設を、肯定的に著述している。クールに国家建設に努力した官僚たちを、評価することは大事だなと思わせる一冊。官僚=悪の固定観念で、中身を見ない評価が蔓延している現代への筆者の提言なのでしょうな。
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帝国憲法・権力の源泉・1889年:官僚と官僚制 個→組織 伊藤博文・欧州憲法調査 太政官内閣→近代内閣制 帝国大学 大日本帝国憲法と行政 十四年の政変・近代化の分岐点・1881年:土蔵に眠る憲法;よ自由民権の季節 豪農と学術講談会 大隈重信と福沢諭吉 明治十四年の政変 巨大官僚組織ー内務省・1873年:明治六年の政変 内務省設立 産業振興プロジェクト推進本部 殖産興業事業 岩倉使節団・1871年:二つの国家的課題 岩倉使節団の使命 全権委任状 イギリスが富強であるゆえん 近代化路線の確定 意見を届ける
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[評価]
★★★☆☆ 星3つ
[感想]
江戸幕府を打倒し、明治政府を生み出した偉人たちも日本がどのような道をあゆむべきかを色々と模索していた時期なのだということがよく分かる。
岩倉使節団がアメリカ・ヨーロッパを視察するなかで先進国であるイギリス、フランスは日本の遙か先を進んでいるために参考にできないと考え、それよりも後ろの位置ではあるが、日本よりも進んでいたドイツとロシアを参考にしたことは現実問題を考えると正しいことだったと思える。
また、富国強兵や殖産興業をすすめるために政府が強い力を発揮できるように官僚組織を整えたことはその後の日本の発展を考えると正しかったのだろうな。
ただ、自分たちがいなくなった後の仕組み作りに失敗してしまったように思う。政党政治は国民から失望され、統帥権の独立で軍部は暴走し、ブレーキがなくなった日本は戦争への道を転げ落ちていくようだった。 -
幕府体制でもない、宮廷体制でもない、新しい国家体制を作ることを選んだ明治の先駆者たちの中の一人、大久保利通は政府と一体となった官僚組織を創出することで日本の近代化を進めることが可能となった。
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(2014.02.24読了)(2014.02.21借入)
副題「「官僚国家」への道」
優秀な官僚によって、政策を推進する国家がいつごろどのようにして出来上がったを探ります。到達点は、伊藤博文が主導して成立させた帝国憲法です。
天皇主導で憲法を作るか、自由民権運動の盛り上がりの中で、民意の反映により憲法を作るか、というせめぎあいの中で、大隈重信の追放がポイントになったとか。
優秀な人材を集めて、殖産興業を推進する基礎をつくったのは、大久保利通であった。
大久保利通が、どのような組織が必要であるかを考えるヒントをつかんだのは、岩倉具視らと同行した遣欧使節団だった。
各章の扉ページにポイントが書いてありますので、拝借しておきましょう。
第1章、ターニングポイント1889年、大日本帝国憲法発布
議会対応に苦しむドイツの実情を見た伊藤博文は、行政が立法に優越する帝国憲法を誕生させた。
第2章、ターニングポイント1881年、明治十四年の政変
議会開設をめざす自由民権派と、政府との対立は激化するが、明治十四年の政変によって官僚主導の近代化が決定した。
第3章、ターニングポイント1873年、内務省設立
内務省を創設することで国内産業の育成に成功したが、「有司専制」のそしりを受けることとなった。
第4章、ターニングポイント1871年、岩倉使節団の米欧派遣
欧米列強の圧倒的な国力を見た大久保は、発展途上のドイツを手本に官僚主導の近代化をめざした。
【目次】
はじめに
第1章 帝国憲法・権力の源泉-1889年(明治22年)
第2章 十四年の政変・近代化の分岐点-1881年(明治14年)
第3章 巨大官僚組織・内務省-1873年(明治6年)
第4章 岩倉使節団・近代化の出発点―1871年(明治4年)
参考文献
年表
●国民の声(58頁)
民権派が最も不満を持っていたのは、国民が国の政治に参加できる場がまったくないことでした。だから、国民の声を反映するための場と制度をまずつくってほしい、と彼らは要求した。すなわち国会開設の要求です。
これに対して政府は、今の日本は政府主導による殖産興業を通じて近代化すること、すなわち経済的自立と国民生活を豊かに安定させることが、何よりも重要な先決の課題であり、国会開設はそれを達成してからでもよいではないか、と考えていたわけです。
●内務省(73頁)
内務省とは、内政・内治とりわけ殖産興業政策の推進のために設置された官庁であり、その設置の推進力となり、自ら初代長官となった大久保利通が、強力な官僚組織をつくりあげて、日本近代化のための拠点としたところなのです。
●徴兵令(94頁)
国民皆兵をめざそうというこの制度は、必然的に士族から職業を奪うものでした。
☆関連図書(既読)
「NHKさかのぼり日本史①戦後」五百旗頭真著、NHK出版、2011.07.25
「NHKさかのぼり日本史②昭和」加藤陽子著、NHK出版、2011.07.25
「NHKさかのぼり日本史③昭和~明治」御厨貴著、NHK出版、2011.09.30
「条約改正」井上清著、岩波新書、1955.05.20
「岩倉使節団の西洋見聞」芳賀徹著、日本放送出版協会、1990.01.01
「戊辰戦争」佐々木克著、中公新書、1977.01.25
(2014年2月24日・記)
(「BOOK」データベースより)amazon
歴史には時代の流れを決定づけたターニングポイントがあり、それが起こった原因を探っていくことで「日本が来た道」が見えてくる。急速な近代化を果たした明治期の日本―その国家運営の中核を担ったのが「官僚」だった。1889年→1881年→1873年→1871年の指導者の“信念”に裏打ちされた政策を見る。 -
明治の近代化を「官僚」という視点を軸に書かれている。
日本の近代化を果たすのに大きな役割を担った近代官僚制。その発生には岩倉使節団に随員した大久保が見た、イギリスの官僚制度があり、さらにはドイツ宰相・ビスマルクの政治手腕にあったとしている。
また、明六政変を経て、殖産興業に重きをなす内務省設立、大久保の内務卿就任が近代官僚制の一つのポイントとされている(著者自身は、大久保政権は内務卿就任の翌年からと別書に記載)。
大久保は、自らが活躍した「創業期」(1868〜77)、次の10年を「建設期」(1878〜87)としている。
この「建設期」として、伊藤の立憲制の模索があてられている。
この時期に過熱する民権運動に対し、政府は官僚が主導する「上からの近代化」路線を確定する。この時期の官僚は専門分化していき、伊藤の下で憲法その他法案作成に関わる。
さらに、大日本国憲法により官僚の身分保障が規定され、ここに明治の官僚制度は確立したとする。
著者は、この時期の政治家と官僚の適度な関係を示しつつ、現在の両者の関係について苦言を呈している。
基本的に本書は、近代官僚制の有為性、それを確立した大久保卿内務省の意義に主眼がある。
著者が以前「一般書は、主張を縛られずに自由に書ける」とおっしゃられてました。
まさに、佐々木先生の主張が随所に読み取れる一冊。 -
幕末と政党時代の合間は自分にとって知識として抜け落ちてる時代なので、良い入門書であったと思います。
テーマが絞られている分だけ切り口も偏っているので、合わせて別の本も読みたい所です。 -
帯文:"世界に類のない「急速なる近代化」は、どのようにして実現したのか" "すべてのはじまりは、大久保利通の西欧体験だった。"
目次:第1章 帝国憲法・権力の源泉-1889年(明治22年)、第2章 十四年の政変・近代化の分岐点-1881年(明治14年)、第3章 巨大官僚組織・内務省-1873年(明治6年)、第4章 岩倉使節団・近代化の出発点―1871年(明治4年) -
”大久保利通”万歳がちょっと気にかかるが、明治初めの国家において、
リーダーシップを持ち、時代の先を読める人材として。彼は
欠くことのできなかった人物であったことも確かだ。
この本のキーワードは、「大久保利通」と「官僚」。