「経済学」にだまされるな!: 人間らしい暮らしを取り戻す10の原則
- NHK出版 (2021年12月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140818862
作品紹介・あらすじ
フランスで5万部を売り上げた、「怒れる経済学者」警世の書
「経済学は科学ではない」、なぜなら、ノーベル経済学賞を受賞した二人の経済学者が、まったく同じデータから正反対の結論を導き出しているからだ――。政策決定を理論づける主流派の経済学者は、疑い得ないものとして経済の「常識」を提示するが、それは特定の時代の特定の階層に利する「歪んだルール」に過ぎないことを、著者は確かな論拠と具体的な数字で明らかにする。新自由主義者たちが声高に主張する「常識」を疑い、より良い社会に向けて議論するための”足場”をつくる一冊。
感想・レビュー・書評
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新自由主義の経済学は、巨大なウソの体系だ。現在「主流派」の経済学者が“常識”とする思想を、フランスの「怒れる経済学者」が徹底検証する書籍。
経済学は、客観的事実を実験と分析で立証する“科学”ではない。同じ状況を分析しても、立場や関心によって解釈の違いが生じる。
経済には、いくつもの選択肢や未来がありうる。従って、政治家が「他に選択肢はない」と言い、絶対的真実として示す事柄でも再検討し、代案を要求すべきだ。そして「それが誰に利益をもたらすか?」を絶えず自問しなければならない。
新自由主義の経済学者らは、「労働市場を柔軟にした国は繁栄を維持している」と主張する。
だが現実には、大企業が利益を増やす一方、失業は減らず、貧困層の境遇は改善されていない。労働市場の柔軟性と失業の程度との間につながりはない。
政治家は、公的債務の脅威を緊縮政策の根拠として強調する。
しかし、資産を考慮に入れず、債務だけを問題にするのは愚かである。また、国の債務を家計の借金にたとえるのは馬鹿げている。人は死ぬが、国は死なないからだ。
地球温暖化への効果的な取り組みは、再生可能エネルギーの開発など、国による意欲的な介入政策だ。だが、助成金など、活動を促すだけの措置にとどまっている。それは温暖化対策に正面から取り組むと、大企業や銀行の利益を損なうからだ。
成功者の伝記などは、成功の原因を起業家精神など、個人の資質だとする。
しかし、実際には、個人の成功は、国の政策や制度などに左右される。公的な研究と投資―起業家たちが嫌悪する税金で、彼らの繁栄は支えられているのである。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
経済学自体、例えば数学や物理など他の学問と比べると、定義や定理、公式などが曖昧なので、ある意味宗教に近い。なので、1つの事実に対しても真逆の意見が出てくるのが、経済学で、普段から一歩引いて見てるので、本書の内容で目新しいものは正直なかった。
フランスの本なので、フランス及び欧州の話題が中心だが、国の莫大な借金を煽る、社会保障費を削減するなど、共通点もあり、どこも同じなんだなぁと。
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TRAITE D'ECONOMIE HERETIQUE: EN FINIR AVEC LE DISCOURS DOMINANT
https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000818862021.html -
2022年3月号
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東2法経図・6F開架:331.7A/P82k//K
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作者はフランス人なので、内容は欧州に偏っているのは致し方ない。
あと、常識を疑えって本なので、批判ばかりではある。
それを差し引いてもまぁまぁ面白かった。
公的支出を減らしても公的債務は減らない、あたりはなかなかなご指摘。 -
自由主義を100%信じない、フランスは債務ではなく資産が多いなど楽観的、悲観的双方の理論がわかります。
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Amazonの著者紹介に「怒れる経済学者」とあるのですが、その言葉どおり、全編を通じて怒っています。その怒りは弱者を切り捨てる体制や、経済格差を生む仕組みに向けられています。さまざまな観点から経済学を考えるにはうってつけの1冊です。