グリーン・ニューディール: 環境投資は世界経済を救えるか (生活人新書 292)
- NHK出版 (2009年6月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140882924
感想・レビュー・書評
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米欧のグリーン・ニューディール政策について、NHKが総力を上げて取材した成果をまとめた本。
低炭素社会に向けての変化は、今後数十年に及ぶ大きなトレンドとなると考えられる。そしてそのような変化の兆しは今、地域・地方レベルで現れている。現場の取材成果をまとめた本書を読むことで、将来の大きな変化を想像できる。そういう意味で非常に勉強になる本である。
まず印象に残ったのは、カリフォルニア・テキサス・ペンシルベニア州の積極的な取り組みである。地方政府と企業が協力しながら取り組みを進め、連邦政府がそれを適切にサポートする構図が出来上がっている。これらの州における現在の新エネルギーに対する投資状況を見ると、今後このビジネスは米国で大きな成長を見せることになることが分かる。
もう一つ印象的だったのは、やはり日本政府や企業の出遅れである。日本ではどうしても省庁間や産官学間の連携が進みにくいようで、これは日本経済の総合力を発揮する上で致命的な欠点である。省庁間の連携不足により、政治は強力なメッセージを伴なう総合戦略を打ち出せない。各省庁が個別に提案する政策では、規模の面でも実効性の面でも不十分である。また、産学官間の連携については、本書にいくつか事例が挙がってはいたものの、まだ不十分であると考えられる。もともと企業間や産学官間をまたぐコーディネート力は日本には不足しており、これがこれまでも大きな経済損失をもたらしてきた。同様の事態に陥りつつあるのが現状である。
本書の内容とは少しずれるが、上記のように今日本には政治の総合戦略や産学官間をまたぐコーディネート等、異分野間の共同が強く求められている。そしてそれを実現するためには、様々な分野に理解を持つことが出来る”人材”こそが重要なのだと考える。日本では、国の性質や教育の不十分さもあり、そのような人材が育つ土壌が無い。この問題をどう考えていくかは、今後ますます重要になっていくと思う。
長くなったが、多くのことを考えさせてくれたという意味でも良書であった。詳細をみるコメント0件をすべて表示