はじめての宗教論 左巻 ナショナリズムと神学 (NHK出版新書)

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  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140883365

感想・レビュー・書評

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  • 右巻は興味深く読んだがこれは読み切れなかった…

  • 「はじめての宗教論 右巻」に続いて、読了。

    しかし、「右巻」と比べて格段に難解になってると思います。

    油断してたら、フルスロットルで引き離された感じ。

    と言っても、引用部分などがとっつきにくので、全然わからないということではありません。精読すれば、面白いです。

    なんといっても「初めての---」だし。

    宗教(キリスト教)をベースにナショナリズムが構築されているのだが、そのナショナリズムからしてそもそも「民族」という概念自体がフランス革命以降のものである、という部分は目新しい説明です。

    キリスト教は偶像崇拝を禁止ししているのだが、やはり宣誓は聖書に手を置くし、十字架も特別なもの。

    ナショナリズムが宗教に取って代わると、国家・国旗がそれを表象するものとなり、橋下氏を始めとする国旗・国歌への対し方はともすると信教の自由に関わるものであるという見方もできる。

    と、これは私の見解。

    それはともかく、簡単に「神学」と言っても、もぉ、笑ってしまうぐらい広範で多岐にわたり、とても一人で全てを学べるものではないらしい。

    その枝葉ディレクトリの一分野に関して大学図書館に所蔵されている書物を読破するだけでも2・300年かかるとか。

    しかも、ドイツ語始めラテン語まで勉強しなければならないし。

    こういうものをベースにおいて発展し、思考や感性のもととしている欧米がグローバルスタンダードであるとするならば、やはりこれは学ぶべきだろう。

    興味深いのは、啓蒙された近代以降の私達はファナティックな一団を別にするとして”天上に神は存在しない”ということを知ってしまった上で、キリスト教を信仰していると。
    私には信仰心がないので、イマイチ理解できない点ですね。

    それと、神が遍在しかつ絶対の善であるならば、なぜ悪が存在するのか。この件のなんだかこねくり回した聖書の解釈が無理やりっぽくて面白い。

    佐藤優さんのいかにもクリスチャンである真面目さが随所にあふれていて、こちらも真面目に読んでしまいます。

    キーワード:弁証学=異教徒に対する 論争学=内部派閥に対する

  • まず本の内容とは関係ないがなぜ途中で装丁を変えたのか。右巻と左巻はきちんと装丁を揃えて出版しろ。

    本の内容だが、話は結構壮大になる。キリスト教の考え方の変遷を探って行ける本となっているが、宗教のほかに国家を交えて語られてある。

  • 30年近く生きてきてキリスト教に対して全くといっていいほど無知であったため手に取った本。
    近代人にとって神は信じることが難しいものであり、その上でどのような態度で生きていくべきかというのを中世から近代にかけてキリスト教内での考え方の変化とあわせてわかりやすく書かれた宗教論。
    この本のみで判断するつもりはないが、欧米人の根幹となっている部分が少し理解できたかなと思えた。
    また、巻末にある「ブックガイド」はハードルは高いがそそられるものがおおかったので、機会があれば手にとってみたい。

  • 難しいです。。。新書と侮っていた。でももう少し神学をさらってみよう。

  • 右巻に続き、シュライエルマッハーとゴーカルデンを元に佐藤優さんが解説を加える。
    一応続きではあるが、適宜補足が入るのでこれだけ読んでも問題ない。

    弁神論に関する、イエスと世界を壁と穴に例えた表現はすごくわかりやすかった。

    まだ消化不良の部分も多いので再読したい。

  • 「宗教の本質は直観、絶対依存の感情である」から、自己の絶対化が始まり、解釈の過剰性を生み、偶像としてのナショナリズムを崇拝すると。わかるようで、わかりにくい。読み物としては2章6章が面白いんだが、表層的というかツッコミが甘いような。結局は紹介している参考図書を読めという事か?著者の幅広い知識のベースとなるのが神学というOS的なものであり、他の学問はアプリケーションなんだろうと思う。

  • 基本的なところは、右巻で記載されているのではないか。近代のキリスト教が歩んだ道筋が大まかに理解できた。

  • 超越性とは人間によって創り出せないもの。現在の日本人が合理主義の限界に気づき、超越性を回復することが社会と国家の強化にとって必要と語る著者は、国家と民族が結合したナショナリズムを超越性と誤解する危険を指摘する。昭和の大戦による敗戦まで現人神が存在した日本は、その超越性を捨ててひたすら経済合理主義を追求して、近年は米国主導の新自由主義やグローバル資本主義を信奉した結果が、国家社会の溶解が足元まで及んできていることに漸く気が付いた。21世紀に生きる日本人が回復する超越性とは、いかなるものだろうか。

  • カトリック教会の腐敗に抗議したルターは免罪符を焼き捨てた、と我々は世界史で学ぶから、何となくカトリックは旧弊で頑迷で、プロテスタントは清新で科学の進歩にも対応した、と思っている。そんな史観は多分半分くらいあたっていて、プロテスタント神学を構築したシュライエルマッハーは19世紀、科学とヒューマニズムの力で目覚めてしまった欧州の人々に対し、宗教の本質は直観と感情である、と説き、後には絶対依存の感情である、とした。神は空の上にはいないかもしれないが、信じるあなたの心の中にある、として近代人の世界観に迎合したわけだ。

    この左巻には『ナショナリズムと神学』という副題がついている。今では普通の国民国家も国民意識も、オリンピックでニッポンガンバレと応援する感情も、近代の副産物であって、古代と中世を振り返れば決して普遍的ではない。そしてナショナリズムはシュライエルマッハーの自由主義神学に源流があるという。佐藤優はそこに神のくびきから解放され、無邪気に人間の力を過信した近代人の姿を見、それが第一次世界大戦に行き着いたのだと批判する。

    そして20世紀のバルト。神は見えない世界にいる、人間である我々は神について無責任なおしゃべりをしてはいけないという教えは復古的で、特に無宗教の比率の高い日本人には受け入れ難いかもしれない。しかし大事なポイントは、佐藤優は見えない世界を信じている(たぶん)ということ。9ヶ月前の右巻を思い起こせば、近代知の下で人間万能を信じる我々の世界観も、神に対して決して奢らなかった中世人の世界観も、どちらが優位ということはなく相対的ということだった。我々には科学の力があるから救世主イエスを産み出した古代人より優秀である、という命題は成り立たない。神学者たちの知的レベルに追いつけなかったとしても、そこに気づいただけでも本書を読んだ価値があったのだと思った。

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著者プロフィール

1960年1月18日、東京都生まれ。1985年同志社大学大学院神学研究科修了 (神学修士)。1985年に外務省入省。英国、ロシアなどに勤務。2002年5月に鈴木宗男事件に連座し、2009年6月に執行猶予付き有罪確定。2013年6月に執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失った。『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―』(新潮社)、『自壊する帝国』(新潮社)、『交渉術』(文藝春秋)などの作品がある。

「2023年 『三人の女 二〇世紀の春 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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