- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140884584
感想・レビュー・書評
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コンテンツとは何か、クリエーターとはどんな人なのかを筆者がジブリで体験したことを元に考察した本である。
コンテンツについては、「現実の模倣である」と定義。さらに、アニメにおける情報量という言葉に着目する。youtubuで著者の対談を見ることがあり、へんなやつだなあ、とい印象があったのだが、本書については至ってまじめな論考でありました。
アニメ界では情報量という言葉をよく使うそうだ。アニメの情報量とは端的に言って描かれている線の多さである。元来、実写では情報量が多すぎるのをこどものために情報量を落としてわかりやすく物語るのがアニメであったものが、近年ではいかに情報量を多く盛り込むかということが重視され、そのために大人の鑑賞に耐えうるものになったという事らしい。
現実を単純に模倣するのであれば、情報量において実写に勝るものは無い。著者は「小さな客観的情報量によって大きな主観的情報量を表現したもの」と考え「人間の脳が現実よりも少ない客観的情報をとおして、現実よりも大きな主観的情報を受け取るための媒介物がコンテンツ」と定義し直す。コンテンツはクリエータの脳の中の主観的情報の発露であり、アニメであれば「らしい動き」を描くと、それだけで目が引き寄せられて、コンテンツとして立派に成立すると述べる。
クリエーターについては、「ある制限のもとでなにかを表現する人」とし、脳の中にある「世界の特徴」を見つけ出して再現する人→脳の中のイメージを再現する人とする。
再現されるのは、あくまでも脳の中の「現実」であり、それをいかに「らしく」表現できるかがクリエータの技量なのである。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この本の読者はジブリの秘密を知りたくて
本を手に取る人を想定しているのだろうが、
著者が答えているのは、ジブリという高性能多才集団はどのようにコンテンツを生み続けてきたかという答えを定義、再考察している。
例えば、
金曜ロードショーなどで何回も観ている
『となりのトトロ』を繰り返し観てしまうのはなぜか??
[ジブリの映画が情報量が多く一度観ただけでは理解できないので、何回、再放送してま視聴率が下がらない p43]
一旦聞いてしまうとなーんだという答えでも普遍的な答えを導き出そうとしているように思える。
クリエイターの言葉というのをどうしても神格化されてしまう風潮がある。
宮崎駿、高畑勲、鈴木敏夫など『天才』なき後の日本アニメーション界が縮小傾向にある中で
社交辞令のクール・ジャパンを受け流して
『天才』頼りを打破して、現実に向き合った良作を生み続けるための1冊となっているのではないか。 -
amazonの画像と図書館で借りた本の表紙が全然異なるのだけど、この本であってるはず……(自分が読んだ本は他のNHK出版新書と同じ、オレンジを基調とした表紙)。
本書は、アニメ、特にジブリアニメに重きをおいたコンテンツ論の本。
媒体するメディアが違うと、同じ作品でも別のコンテンツと考えるべきだとのこと(つまり、映画館で見る映画作品とテレビ放映やDVD化された作品は別のコンテンツ)。まあ、確かに映画館で見るのと家のテレビで見た印象だとまた違ってくるしね(テレビ放映になると、テレビCMが入るからとくに)。まあ、自分はテレビで満足するタイプだけど。
なお、宮﨑駿はスタッフの力量を見極めて絵コンテを変更するらしい。確かにそれはすごいなぁ。自分の息子についてはどう思ってるのか気になる……。
後、最近よく聞くディープラーニングだけど、まさかこの本で出てくるとは思わなかった。いや、それどころか今までよく分からなかった人工知能のディープラーニングだけど、この本を読んでどういうものか分かった。いずれ、人工知能がアニメを作る日はくるのだろうか(音楽は作れるそうだし)。
それにしても、この著者はなんでスタジオジブリで働くことになったんだろう……。 -
なんでドワンゴの川上さんがジブリの鈴木さんのカバン持ちに!?カドカワを始めとして「ジジ殺し力」を噂される著者独得のパフォーマンスとして語られることもあったプロデューサー見習い修行ですが、そこには「コンテンツとはなんだろうか?」「クリエイターとはどんな人間なんだろうか?」という純粋な好奇心があったことがびんびんに伝わってきます。読み進めていくうちに、前々からプラットホーマーとコンテンツメーカーの問題について厳しい問題意識を表明していたことを思い出しました。思い立ったら動いてみる、この行動力こそが彼に眩しさや希望を感じる要因なのかもしれません。本書で感じた凄さは行動力に加えて、質問力。感じた疑問、立てた仮説をどんどん問い掛けていく力。しかも、その相手は当代きってのコンテンツビジネスの中心にいる大物ばかり。ある意味、この本はいろんな分野のクリエイター、プロデューサーたちのコンテンツ論の断片のメモ帳のようです。ジブリからの卒論としてまとめられた本とのことですが、あえてジブリ外側の人間として見聞し、思考した結果が、川上さんのビジネスとして何を生み出していくのか?これから先の実践編が楽しみです。
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ご存知かわんごさんこと、ドワンゴの川上さんがジブリに修行しにいった際に色々と考えた内容を書籍化した内容。
結論から言うと、大変面白かった。
なんとなくメディアにおける熟考をしていた際に、マクルーハン的アプローチが良さそうだとは思っていたのだが、どうにも抽象すぎて腑に落ちないと思っていた矢先、現代風の文脈でより具体性に富んだ内容でかわんごさんが解説してくれていると感じた。
アニメの情報量の話(線の数)とそれにおける人間の理解力と脳の構造についての指摘などは大変示唆に富むものだった。
またDeepLearningに関する全脳研を吸収した意図としてもオートエンコーダーによる人間の脳の認識能力に言及されるなど、研究熱心なところが垣間見えた。
(専門家からすると厳密的には違うかもしれないが)
最終的にコンテンツとは何か?という話に結論が出されるのだが、クリエイターにとっての様々な美術に触れる経験もなぜ良いのかというところも触れていて、とても参考になった。
あとは宮崎駿さんと高畑勲さんの対比もよく知らなかったので、面白かった。
絵コンテってのは大変な仕事だなとつくづく。
何度か読み返したい1冊なので星5つで。
■目次
第1章 コンテンツの情報量とはなにか?
――「脳に気持ちのいい情報」を増やす
第2章 クリエイターはなにをアウトプットしているのか?
――「イケメン・美女」を描くのが難しい本当の理由
第3章 コンテンツのパターンとはなにか?
――パターンをズラす、そしてお客とシンクロする方法
1 コンテンツの分かりやすさ
2 パターンをいかにズラすか
3 クリエイターはどこで勝負するのか
4 いかにお客とシンクロするか
第4章 オリジナリティとはなにか?
――天才の定義、クリエイティブの本質はパッチワーク -
角川ドワンゴの川上量生氏のジブリで見習いに
なって活動したことをふまえて、コンテンツとは
クリエーターとはを問う内容。
「コンテンツとは」を追求して考えていく過程の内容
は面白く興味がわく内容です。
ニコニコとジブリ、またカドカワという関係ありそうで
なさそうなものを追求するなど、この著者の動向(書籍や
活動)は着目していきたいと思っています。 -
ジブリの作られ方、絵のアニメと実写の違い等、面白かった。特に印象に残ったことはオリジナリティについて。
オリジナリティの生まれ方を著者は4つに分類した。
その一つである、
「今までの自分が知っているパターンを切り貼りして、新しい組み合わせのパターンをつくる。」
仕事をする上でも、イノベーションを起こす必要があるが、先代の方々が切り開いてきた情報にヒントがあるのだと感じた。歴史を把握して、それらを組み合わせることで新しいものを生み出す必要があると感じた。闇雲にアイデアなんて出ない、まずは何があるかもう一度見直してから考えていきたい。 -
コンテンツ考。ドワンゴを創業した人はどんな事を語るのか興味を持って手に取ったが、コンテンツとは何ぞや、の理屈があれこれ出てきて「中身」が分かりにくいきらいあった。またジブリを正とした前提で語っている部分も、論理的でない気がする。
コンテンツ(本書ではエンタメのコンテンツ)そのものというより、著者に強い興味がある人向け。 -
ジブリコンテンツを題材にした認知科学の本
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ジブリ見習いをやった卒業論文、ということらしい。確かに、順を追った考察で、コンテンツとはなにか、という定義から、クリエーターはどうやってそれを作るのか、天才とはなにか、まで論理的によくまとまっていると思う。しかし、ジブリ見習いで得られたものが、こんな新書一冊なわけは無い。続編も期待したい。