平安貴族とは何か 三つの日記で読む実像 (NHK出版新書 707)

著者 :
  • NHK出版
4.04
  • (7)
  • (15)
  • (2)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 159
感想 : 12
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140887073

作品紹介・あらすじ

「驕れる道長」は虚像?歴史の主役としては光の当たらない平安貴族。だが、武士が台頭し不安定化する世情にあって、彼らは国のために周到に立ち回り、腐心しながら朝廷を支えていた。NHK大河ドラマ「光る君へ」の時代考証も務める著者が、知られざる平安貴族の実像を、藤原道長『御堂関白記』、藤原行成『権記』、藤原実資『小右記』という三つの古記録から複合的に明らかにする。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • あんまり難しかったら…と迷ったけど、結果読んで良かったです。

    とっかかり、平安時代を説明するに、日記から紐解くことで親近感も持てたし、ちゃんと重なっていくのが楽しかったです。

    摂関政治と習った藤原一族の同行や、その職責がどんなかなどそうだったのかと腑に落ちます。

    この時代も、一族のために婚姻が利用される、女性はその道具だったことがありありとわかる。
    それと、男性は「waoh!」というピンク色の夢を見ると言うが、この時代にもその夢があった(ある意味当然?)それが書き付けてあるというのも驚いた。
    ただ、その夢は旅立ってしまう妻との夢で、このときに不謹慎なと自分を責める気持ち、そしてやはり旅立ってしまう妻を想う気持ちが切なかった。

    この本の語り口で一気に平安時代が身近になったけど、これは著者倉本一宏さんだからかなと思う。
    この面白さ是非体験して欲しい。

  • 藤原道長の『御堂関白記』、藤原行成の『権記』、藤原実資の『小右記』を読み解いた史料です。

    道長の『御堂関白記』は令和の現代にまで現物が残っていることに驚きでした。

    こうして平安中期の記録を楽しくわかりやすく書かれていて、私は読んでいてとても楽しかった。(難しくないけれども、抑えなくいけないことはきちんと押さえてあるところがいいですねぇ♪)

    それぞれの立場で当時の政局が語られているので、『源氏物語』の史料とは違った楽しさがあります。

    大河ドラマを楽しんでいる方にもおすすめです。

  • 大河ドラマ「光る君へ」の時代考証者が平安貴族の実像を読み解く『平安貴族とは何か 三つの日記で読む実像』発売|株式会社NHK出版のプレスリリース
    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000787.000018219.html

    三つの古記録から、平安時代の「リアル」が浮かび上がる――『平安貴族とは何か~三つの日記で読む実像』|本がひらく
    https://nhkbook-hiraku.com/n/n7b0f9e655c6a

    倉本 一宏|国際日本文化研究センター(日文研)
    https://www.nichibun.ac.jp/ja/research/staff/s065/

    NHK出版新書 707 平安貴族とは何か 三つの日記で読む実像 | NHK出版
    https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000887072023.html

  • 平安時代の古記録であり、一次史料とも言える『御堂関白記』、
    『権記』、『小右記』から解き明かす、平安貴族の実像とは。
    ・はじめに  序章 古記録とは何か
    第一部 道長は常に未来を見ていた
               ――藤原道長『御堂関白記』を読む
     第一章 「自筆本」の価値
     第二章 「一帝二后」成立の裏側
     第三章 書き方や消し方からわかること
     第四章 女の懐妊祈願に決死の参詣
     第五章 権力を恐れない者・伊周
     第六章 常に未来を見据えて
    第二部 子孫繁栄のための苦悩――藤原行成『権記』を読む
     第七章 赤裸々な記録の意図
     第八章 次期東宮をめぐる苦悩と策謀
     第九章 平安貴族は何の夢を見たか
    第三部 共有財産としての日記――藤原実資『小右記』を読む
     第十章 日記に見る実資の大望
     第十一章 出世レースに敗れても
     第十二章 「驕れる道長」という虚像
    ・おわりに  参考文献有り。

    平安中期、摂関政治の最盛期に書かれた3つの日記は、
    個人のためではなく、儀式のためであったという。
    その書き方や記録から分かる、3人の人物像と朝廷の様子。
    自筆本『御堂関白記』の藤原道長は、疫病の流行により、
    兄弟や有力者が消えたことから、30歳で権力者の座へ。
    権力の維持と継承、未来を見据えた、子孫たちの記録が熱い。
    『権記』の藤原行成は、摂政だった祖父と父を早くに亡くし、
    地下人に。蔵人頭に抜擢されたが、天皇の側近として信頼され、
    皆に頼られたあげく、思うように出世が出来ず、権大納言まで。
    信頼された人々の秘事や内密を書き残したのは子孫のため。
    『小右記』の藤原実資は、三代の天皇の蔵人頭。
    人に読まれることを想定した貴族の共有財産として、
    60年以上書かれた日記は、儀式の権威としての証。
    右大臣まで出世し、道長の「この世をば・・・」を書き残した。
    著者の『平安京の下級官人』が面白く、
    取り上げられていた古記録をもっと知りたいとの読書です。
    大河ドラマ「光る君へ」の時代考証も担当してるのですね。
    平安貴族と成り、その地位を確立し、維持することの難しさ。
    子女が産まれて育ち、跡継ぎになるか。
    天皇に嫁いで跡継ぎを産み、育てるか。
    子孫繁栄を未来に据えても、それは綱渡りの様。
    また、儀式とその標準を作ること、信仰、死穢、夢見等の
    職務や日常の様子も日記には表れています。
    そして、摂関期と古記録についての知識を得ることが出来、
    良かったです。特に道長の金峯山詣の記事には、驚き。

  • 1000年以上も前とは信じられないほど高レベルの文化を保った平安時代、それを支えた平安貴族に興味を持ち、本書を手に取った。

    本題は道長、行成、実資の3名が各々記述した日記を読み解くことにあるが、古記録に疎いため序章の日記(にき、と読むそう)に書かれる事柄、日本で日記が多く書かれた理由などもとても興味深かった。

    一通り平安時代の政上の事件を知っている読者に対して、「日記を通してその裏側を伝える」ことが本書の主な狙いだと感じたので、日本史を復習後に再読したい。

    本書はラジオ収録を文字起こししたものということで、何度か既出の説明が見られることがある。人名や記録名がわからなくなってしまうことがあったので、却って、随所で説明がなされていて有り難かった。

  • 大河ドラマ「光る君へ」の時代考証を担当されている倉本一宏先生の本。先生の専門である平安時代の日記「御堂関白記」「権記」「小右記」について解説されている。
    大河ドラマはドラマとして楽しんでいるので、こうして実際の平安時代にはどんな記録が残されているのかということを知りたかった。最初の本として読んで本当に良かった。
    今までは平安時代と言ったらその風俗や女流文学から切り込んだ文献を読んでいた。こうして政治の中枢にいた権力者たちの日記から見えてくるリアルな時代も面白いなと。日記を残すことで子孫が権威を保てるようにしたという、なんとも政治的な理由も面白いが、普通にその内容が興味深かった。
    ハイパーウルトラブラック官僚として有名な藤原行成の実際の業務は文字で読むだけでも胃が痛くなる。一条天皇を脅して一帝二后を認めさせたりとか、危篤の一条天皇を脅して定子が産んだ敦康親王ではなく彰子が産んだ敦成親王を東宮にするよう迫ったりとか……夜中まで彼が仕事をしていたことは知っていたがその内容もエクストリームだ。こんなブラック業務をこなしながらあんなに美しい字を書く藤原行成、推せる。

    倉本先生の語り口もとても軽妙で入門としてとても楽しく読ませていただいた。

    "NHKの大河ドラマ「光る君へ」が、紫式部と藤原道長を主人公にするという発表があり、(中略)面倒な仕事だなと思いながらも、これは平安貴族の実像を世間に知らせる最後のチャンスかもしれないと心を奮い立たせ、大河ドラマの仕事を引き受け、この本も出版していただくことにした次第です"

    という「はじめに」に書かれている先生の文に惹かれたら是非読んでいただきたい。

    私自身平安時代の文化や文学が好きすぎて「私が考えた最強の平安時代」というものを若い頃に新書や国語便覧のカラーページを読んで作り上げてしまったところがある。だからこそもう一度この平安時代という時代に対してどんな研究がなされているのか詳しく知りたいという気持ちになった。倉本先生の他の本は勿論、他の研究者の本も読んでみたい。服藤早苗先生の本も読み返したい。

    最後の章が藤原実資の「小右記」について書かれていることも納得。中世の武家社会に繋がる歴史の流れは、当たり前に平安時代の摂関政治にあったのだな。

  • 2024/03/19 amazon 499

  • 平安時代の第一人者であり、細かすぎず要点を整理されているので、全体を通してとても読みやすい。

  • 皆さんは平安貴族についてどんなイメージを持っているだろうか?平安貴族たちは遊宴と恋愛にうつつを抜かし、毎日ぶらぶらと暮らしている連中で、しかも物忌みや怨霊を信じて加持祈祷に頼っている非科学的な人間であると信じられてきた。そして草深い関東の大地から立ち上がった勇敢な正義の武士に歴史の主役を取って代わられるのも必然であると思われていた。そのため世間では平安時代など全く人気がなく、歴史学会でも長く平安時代は悪い時代であるとの評価がもっぱらであった。かくいう自分もそのような否定的なイメージを持っていた事は否めない。しかし本書を読むとそんなイメージを覆される人も多いのではなかろうか。まず平安貴族は意外に多忙であるという事がわかる。遊宴と恋愛にうつつを抜かす貴族というのはほんの一部であり実務をつかさどる貴族は古来の先例に基づいた行事や法令、制度、風俗、習慣、儀式、装束などのことに縛られ、自分の子孫にも間違いがないようにと日記に記している。この日記は「にき」と呼び、現在の日記とは違い、儀式の指南書のような印象が強い。本書では有名な古記録である藤原道長「御堂関白記」、藤原行成「権記」、藤原実資「小右記」の三つを取り上げ誤解されがちな平安貴族の実像に光をあてている。とくに道長はNHKの大河ドラマ「光る君へ」の主要登場人物なのでドラマを見つつそのドラマの時代考証をもしている作者の本を読むとより楽しめる事うけあいである。詳細→
    https://takeshi3017.chu.jp/file10/naiyou33801.html

  • 『御堂関白記』は自筆本が残っているそうで、原本ならではの読み解き方が特に興味深かったです。実資と行成、ドラマでも注目してみます。

全12件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1958年、三重県津市生まれ。東京大学文学部国史学専修課程卒業、同大学大学院人文科学研究科国史学専門課程博士課程単位修得退学。博士(文学、東京大学)。国際日本文化研究センター教授。専門は日本古代政治史、古記録学。主著に『平安朝 皇位継承の闇』『皇子たちの悲劇』(角川選書)、『一条天皇』(吉川弘文館)、『蘇我氏』『藤原氏』『公家源氏』(中公新書)、『藤原道長「御堂関白記」全現代語訳』(講談社学術文庫)、『藤原道長の日常生活』(講談社現代新書)などがある。

「2023年 『小右記 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典』 で使われていた紹介文から引用しています。」

倉本一宏の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×