リスクのモノサシ: 安全・安心生活はありうるか (NHKブックス 1063)

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  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140910634

作品紹介・あらすじ

上手なリスクとの付き合い方を提案する。鳥インフルエンザやアメリカ牛のBSE問題、あるいはタバコによる発ガン、石綿による中皮腫など、現代は様々なリスク情報に溢れている。パニックを煽るようなマスメディアの報道のしかたや専門家のコメントにも問題が多い。リスクの判断基準がないと、小さなリスクを避けるために大きなコストをかけたり、反対に大きなリスクなのにあまり顧みられないといったことが起こる。本書は、どちらのリスクがどの程度危険なのか、私たち一人一人が判断できるようなモノサシ創りを提案する。リスク蔓延社会にどう生きていけばいいのか指針を提示するユニークな試み。

感想・レビュー・書評

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  • どの程度リスクがあるのかという定量的な視点から判断することが必要。
    専門家が自説にそぐわない新たな事実を無視し、自分が正しいと過信し続ける理由がある。それはリスク情報の送り手である専門家は自分の判断を他者に伝えたことを自覚している。

    リスクを定量的に扱おうとする社会全体の姿勢をはぐくむことが重要。
    リスクマネジメントに関して社会的な観点から最初に浮かんでくるのは信頼の問題。リスク管理責任者への信頼は、科学的レベルの高さ、専門技術力の高さといった能力についての評価と、誠実さ、公正さ、やる気といった動機づけについての評価で決まってくると考えられてきた。

  • 【備忘録】

    [標準化されたリスク比較セットの一案](p118,図表4-1)
    ガン 250
    自殺 24
    交通事故 9
    火事 1.7
    自然災害 0.1
    落雷 0.002
    (10万人当たりの年間死亡者概数)

    [アスベストによる中皮腫リスク表現の一例](p122,図表4-2)
    ガン 250
    自殺 24
    ■クボタ旧神埼工場500m内居住歴女性の中皮腫 12.9
    交通事故 9
    火事 1.7
    ■中皮腫(2004年全国平均) 0.75
    自然災害 0.1
    落雷 0.002
    (10万人当たりの年間死亡者概数)

    [新型インフルエンザ対策のための試算](p127,図表4-3)
    ■新型インフルエンザ
     (最悪のシナリオを仮定し,医療的介入をしない場合) 500
    ガン 250
    自殺 24
    交通事故 9
    火事 1.7
    自然災害 0.1
    落雷 0.002
    (10万人当たりの年間死亡者概数)

    [たばこの増税による死亡者の減少](p129,図表4-4)
    ガン 250
    ■喫煙(現状) 80
    ■喫煙(500円) 49
    ■喫煙(1000円) 30
    自殺 24
    交通事故 9
    火事 1.7
    自然災害 0.1
    落雷 0.002
    (10万人当たりの年間死亡者概数)

    [食中毒のリスク](p132,図表4-5)
    ガン 250
    自殺 24
    交通事故 9
    火事 1.7
    ■食中毒(1960年) 0.27
    自然災害 0.1
    ■食中毒(1980年) 0.017
    ■食中毒(2000年) 0.004
    落雷 0.002
    (10万人当たりの年間死亡者概数)

    [入浴中のリスク](p133,図表4-6)
    ガン 250
    自殺 24
    交通事故 9
    ■入浴中の水死 2.6
    火事 1.7
    自然災害 0.1
    落雷 0.002
    (10万人当たりの年間死亡者概数)

    [さまざまなリスク一覧](p140,図表4-7)
    総数 815
    ガン 250
    心疾患(高血圧性を除く) 127
    脳血管疾患 102
    肺炎 76
    自殺 24
    老衰 19
    腎不全 15
    肝疾患 13
    糖尿病 10
    交通事故 9
    大動脈瘤・解離 8.5
    不慮の窒息 6.9
    転倒・転落 5.1
    高血圧性疾患 4.5
    不慮の溺死及び溺水 4.4
    ヘルニア及び腸閉塞 4.0
    C型肝炎 3.7
    胃潰瘍及び十二指腸潰瘍 2.7
    喘息 2.6
    パーキンソン病 2.6
    結核 1.8
    火事 1.7
    アルツハイマー病 1.4
    水難事故 0.70
    B型肝炎 0.66
    インフルエンザ 0.55
    他殺 0.52
    海難船舶事故 0.14
    自然災害 0.10
    踏切内事故 0.09
    HIV 0.04
    飛行機事故 0.013
    落雷 0.002
    (10万人当たりの年間死亡者概数)

  • 本の帯には、
    「リスクをどう読み解くか
     リスク心理学の立場から、信頼構築のメカニズムを提示する」
    と見出しが。

    医療にも関連する話が多く、勉強になりました。
    あと学生講義や講演で使えそうなネタが満載でした。

  • 「科学的思考」のレッスン―学校で教えてくれないサイエンス

  • 高田研究室では「技術説明学(Engineering Accountability Study)」という技術者が技術をどのように説明するかを考えるための新しい研究分野を提案しています.その際には,心理学的要因も含めて考える必要があり,本書のような内容も踏まえることが必要です.

  • [ 内容 ]
    上手なリスクとの付き合い方を提案する。
    鳥インフルエンザやアメリカ牛のBSE問題、あるいはタバコによる発ガン、石綿による中皮腫など、現代は様々なリスク情報に溢れている。
    パニックを煽るようなマスメディアの報道のしかたや専門家のコメントにも問題が多い。
    リスクの判断基準がないと、小さなリスクを避けるために大きなコストをかけたり、反対に大きなリスクなのにあまり顧みられないといったことが起こる。
    本書は、どちらのリスクがどの程度危険なのか、私たち一人一人が判断できるようなモノサシ創りを提案する。
    リスク蔓延社会にどう生きていけばいいのか指針を提示するユニークな試み。

    [ 目次 ]
    序章 リスク情報が引き起こした社会の動揺
    第1章 マスメディアの報道スタイル
    第2章 専門家がもたらすリスク不安
    第3章 リスクを過大視する心のしくみ
    第4章 リスクのモノサシを創る
    第5章 “安全か危険か”になりがちな判断
    第6章 信頼は何によって決まるのか
    第7章 信頼の回復には何が必要か
    第8章 安全・安心生活はありうるか

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    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 【概要】
    序章では、近年リスク情報が生み出した影響を振り返り、安心・安全社会とリスク情報の関係を整理することの必要性を指摘する。
    第一章では、マスメディアの特徴とその特徴に基づくリスク情報の伝え方の特徴を指摘する。その上でメディア側の変化だけでなく情報の受け手がリテラシーを持つことの必要性が指摘される。
    第二章では、専門家間の見解の不一致が一般人の混乱を招くことを指摘し、「素朴なリアリズム」モデルで説明される専門家の客観性に関する過信と「一貫性保持傾向」とそれを是とする風潮がその不一致を助長していることを指摘する。
    第三章では、リスクの生起確率に対する人々の認知が歪む例を列挙する。「恐ろしさ」と「未知性」の2つの要因の影響が指摘され、また、「ゼロリスク」と「極微小リスク」との間には認知に大きな落差があることがプロスペクト理論で説明される。
    第四章では、リスク比較セットと名づけられるリスクのものさしを沿えた上でリスク情報を提示することが提案される。また、ハーバード大学のセンターが提案したリスク情報を受け取る際の10の心得が紹介される。
    第五章では、リスク論がグラデーションの世界を描くのに対して、通常の人々の世界認知は白黒で二分された世界であることが指摘される。また、人々の認知は、正攻法の中心的ルート処理と、より簡単な周辺的手がかりによって判断する周辺的ルート処理(ヒューリスティック処理)があるとする二重過程モデルが紹介される。
    第六章では、信頼は、リスク管理者の能力や誠実さではなく、同じ価値を共有していることと認知されることで得られるという主要価値類似性(SVS)モデルが紹介され、SVSモデルに基づく対策の必要性が指摘される。
    第七章では、SVSモデルに基づくリスク管理者に対する信頼の構造として、「狭義の信頼」と監視や制裁などの抑止力に基づく安心も含む「広義の信頼」が定義される。信頼低下に対する効果的な対策として、自発的に抑止力を受け入れる(自発的人質供出)ことの有効性が指摘される。
    第八章では、リスク情報は安全を高めることには貢献するが、リスクを顕在化することで不安をもたらすことが指摘され、そのような特徴を考慮した上で、リスク評価を定着されるために何が必要かを議論することが必要であることを指摘する。

  • ITリスクの本で紹介されていたので、登録してみた。

  • 1345夜

  • 危険過大視ポジションでネタを作るメディア、というのは分かる。そりゃしょうがない。専門化が「100%ではない」というのも当然。そのあたりのメカニズムを冷静に分析。ここまでは良し、だし及第点(えらそうですいません)。

    唯一物足りなかったのは、「安全・安心」って一番言ってるのは地方自治体のはずで、行政のメシの種にされてることがあると思うんだけど、その方面にはノータッチだったこと。惜しい。


    序章 リスク情報が引き起こした社会の動揺
    第一章 マスメディアの報道スタイル
    第二章 専門家がもたらすリスク不安
    第三章 リスクを過大視する心のしくみ
    第四章 リスクのモノサシを創る
    第五章 ”安全か危険か”になりがちな判断
    第六章 信頼は何によって決まるのか
    第七章 信頼の回復には何が必要か
    第八章 安全・安心生活はありうるか
    参考文献
    おわりに

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著者プロフィール

1962年生まれ。同志社大学卒業。 同大学院の心理学専攻を単位取得退学後、 日本学術振興会特別研究員、静岡県立大学、帝塚山大学を経て現在、同志社大学心理学部教授。人が自然災害や科学技術のリスクとどう向き合うのかというリスク認知研究、および、リスク管理組織に対する信頼の研究を進めている。著書に『安全。でも、安心できない……』(ちくま新書)、『リスクのモノサシ』(NHKブックス)、『信頼学の教室』(講談社現代新書)などがある。

「2021年 『リスク心理学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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