ホモ・フロレシエンシス 下: 1万2000年前に消えた人類 (NHKブックス 1113)
- NHK出版 (2008年5月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (214ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140911136
感想・レビュー・書評
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☆彡ホモ・フロレシエンシスの骨が発掘されてからの学説など
〈概要〉
・信じがたい年代測定の結果が出る
・ホビットという愛称
・古い民話に残された「目撃談」
・小さな身体の理由を探る
・「島の法則」島嶼化とは何か
・海を越える可能性
・人類はいかにして海を越えたか
・ホビットの進化とは
・ホビットの哲学的意味とは
・「小頭症」説への反証
・「多地域進化」説論者にとってのホビット
・ひきひきつづく「小頭症」論争
・日本とインドネシアの共同研究の歴史詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
(上下巻で同じレビューを書いています。)
インドネシアの小島・フローレス島で発見された「ホビット」と呼ばれる、つい1万年近く前まで生きていた、チンパンジーと同じ程度の脳容量を持つ小型人類。この謎の人骨の発見に至る経緯、人類進化を考える上での意義、またこの人骨が発見されたことによる学術界や社会への影響を、上下巻でまとめている。上巻は、現在のフローレス島(パプア系の人々が住んでいる)の様子や、インドネシアチームと著者が率いるオーストラリアチームが合同で進める発掘の風景などが詳しく描写されており、発掘の情熱が伝わってくるようだった。
下巻では、ホモ・エレクトゥス(原人)やルーシーの名前で有名なアウストラロピテクス等の古人類の発見史、及びその他の動物で知られている体型の小型化に関する議論で始まる。そして、著者らが発見した「ホビット」の記載にあたり、Natureへの投稿を通じて、この奇妙な人類をホモ属に入れるべきなのか、アウストラロピテクス属に入れるべきなのか、白熱していく。
後半ではこの発見がもたらした影響(主に著者が被った弊害)について人物相関とともに語られている。一つの人骨を巡ってこれほどまでに大きな問題が起きていたのか、ということがよく分かるエピソードである。著者の主観を強く意識せざるを得ないが、その点は監修者による巻末の解説を読むと良いだろう。 -
インドネシアのフローレス島で発見された新たな人類は、世界の人類学者を2分するような大論争を巻き起こした。その過程においては、およそ信じられないような不誠実な所業すらも横行したらしい。本著は、ホモ・フロレシエンシスを新種と位置付ける研究者の立場から書かれているので、やや公平を欠いた部分もあるのだろうけれど、逆にその公平さを欠いた熱っぽさが、研究者特有のしつこさや拘りを浮彫にしており、単なる発掘物語を越えた面白さがあった。
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第6章 よみがえる初期人類たちの姿
第7章 「島の法則」という進化の不思議
第8章 世界はホビットに息をのむ
第9章 奪われた人骨と論争の行方
エピローグ -
いやあ面白かった。猿人から原人、旧人、新人と直線的に、世界各地で進化してきたと習った世代にとっては、出アフリカ説だってかなりの「目ウロコ」なのに、ホモ・フロレシエンシスの存在はものすごく衝撃的。学問的植民地主義についてもよくわかるからインドネシア側の立場もわかる。ここはやっぱり日本の研究者の出番かもと期待がかかる。次は、そんなわけで日本の研究者のものを読もう。