エドガー・アラン・ポー スペシャル 2022年3月 (NHK100分de名著)

著者 :
  • NHK出版
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (116ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784142231379

作品紹介・あらすじ

文学の可能性を切り拓いた男。

推理小説の発明者にして、アメリカ文学最初の黄金期を作り出したポー。マガジニスト(雑誌文学者)として文学を「商品」と捉えた作家は、読者の期待に応えるべく小説の可能性を追求し、ゴシック・SF・ホラーなどジャンルを次々と越境していった。今回取り上げるのは、SFにも通じる海洋冒険小説『アーサー・ゴードン・ピムの冒険』、短編小説のお手本とも言えるゴシック・ロマンス『アッシャー家の崩壊』、天邪鬼(あまのじゃく)が主題となる傑作ホラー『黒猫』、世界初の推理小説『モルグ街の殺人』。19世紀アメリカの社会的背景を踏まえて作品を解説しながら、後世の創作者を絶えず刺激し続ける作家の真髄を読みとく。

感想・レビュー・書評

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  • 番組オンエア前に予習として読了したのでメモ。

    ■第1回:
    「ページの彼方」への旅――『アーサー・ゴードン・ピムの冒険』
     ポー唯一の長編小説。
      *
     当時、アメリカでは海洋冒険ものの人気が高かったが、
     実話が好まれていたのでタイトルに narrative の語を用い、
     編集者ポーがピム氏から原稿を預かって手を加えた実話小説
     ――という体裁を取った、メタフィクションの先駆。
     ラストが曖昧で仕掛けは破綻しているが、
     余白を残したことで後代の作家に手法やエッセンスが
     引き継がれ、多大な影響を及ぼすに至った。
     本作に感銘を受けた大岡昇平が『野火』を書き、
     その英訳を読んだJ.G.バラードが『沈んだ世界』や
     『ハイ・ライズ』を執筆した――というところで
     (個人的にタイムリーなので)膝を打った。
      *
     一度読んだが長いのでそれっきり。
     再読したい。

    ■第2回:
    作家はジャンルを横断する――『アッシャー家の崩壊』
     詩と散文と心霊主義が融合したメランコリックなゴシックロマンス。
     冒頭から緻密に張り巡らされた伏線が
     結末に向かって収斂する、完璧な「効果の統一」。

    ■第3回:
    「狩るもの」と「狩られるもの」――『黒猫』
     やってはいけないことだと強く自覚しているが故に
     却って愚行に手を染めてしまう「天邪鬼」の心理。

    ■第4回:
    ミステリはここから生まれた――『モルグ街の殺人』
     世界初の推理小説は、
     ポーが雑誌文学者として当時流行していたジャンルを横断し、
     模倣・融合・再構成といった実験を行った結果生まれた。
     没落貴族であるオーギュスト・デュパンは
     圧倒的なリテラシーによって自らの「読み」を
     商品化し、生活の資本としたが、
     これは雑誌の世界に身を置き、
     文筆で身を立てたポー自身の姿と重なる。
     デュパンと相棒の語り手コンビは、いわゆるバディの魁。

    番組視聴後の印象その他は後日ブログにて。
    https://fukagawa-natsumi.hatenablog.com/

    • 深川夏眠さん
      番組全4回を視聴したのでメモをまとめました。
      https://fukagawa-natsumi.hatenablog.com/entry/...
      番組全4回を視聴したのでメモをまとめました。
      https://fukagawa-natsumi.hatenablog.com/entry/2022/03/29/095437
      2022/03/29
  • その昔、こんな人がいたのかと思い知らされる

    レオナルドダビンチが実は一人の人ではなかった
    1人の人の成果ではなかった
    などと言われたりしているが
    ポーも同じように一人の人ではなく数人いて
    そのまとめ役がポーなのではないかと思えたりした

    文学世界を大きく広く切り開いた人物であることは間違いないと思える

    この解説者の巽氏の選ぶ言葉が古臭く読みづらい
    また、紹介されているポーが影響を及ぼした人物などをあげすぎて固有名詞が多く出てき過ぎである

    • 川野隆昭さん
      「100分で名著」は、僕も好きな番組で、欠かさず見ています。

      とある、アメリカのロックミュージシャンが、「自分はエドガー・アラン・ポーが好...
      「100分で名著」は、僕も好きな番組で、欠かさず見ています。

      とある、アメリカのロックミュージシャンが、「自分はエドガー・アラン・ポーが好きだし、自分の音楽は、エドガー・アラン・ポーに深く影響を受けている」と語っていたのを見たことがあります。

      現代にまで影響を与える、エンタメ界の巨人だと思います。
      2022/06/05
    • h.t.さん
      コメントありがとうございます!
      この本の中にも影響を受けた人が大勢紹介されていますね、芸術家なども
      コメントありがとうございます!
      この本の中にも影響を受けた人が大勢紹介されていますね、芸術家なども
      2022/06/05
  • ポーの魅力を雑誌編集者という観点から簡潔にまとめてくれている。さすが巽さんという感じ。アメリカのカフェというかバーというか見たいな場所で気軽に読める読み物としての雑誌に連載することで作家が生計を立てることを可能にした先駆けとしてのポー。
    そう考えるとポーは19世紀前半にわずか40年ぐらいの人生でその後の世の中に大きな影響を与えたあまりにも巨大な存在であることに気がつかされた。推理小説の生みの親であることもそうだし、ゴシックホラー、内面への掘り下げ等、その遺産はあまりにも大きい。
    当然今から読むと荒さがあるのは否めないけれど、その荒さが逆に可能性に満ちているというか、深読みを誘うことにもつながっていると思う。改めてポーを読んでみたいと思う。

  • ポーの書いた作品が、後世の様々なジャンルに影響していることに驚きました。まさに名著なんだと思います。

  • 番組視聴と併せて読了(3/28)

  • 放送前にサクッと読み終える。まぁ、当然ながらネタバレを喰らう(そりゃそうだ)面白そうだし次はポーの短編集読む。
    ポーが雑誌編集者(雑誌文学者、マガジニスト)だったのが1番の驚き。そして影響を受けた錚々たる顔ぶれよ(笑)四つの話の中では「アーサー・ゴードン・ピムの冒険」が一番気になる。これだけ家にないんだよな。機会があれば読もう。
    あと三つは積読中なんで、放送前に読み切りたい!楽しみーっ

  • 歴史的位置付けは初見。読んで面白いかというと…

  • Eテレの方で

    1, アーサーゴードンアピムの冒険
     急に終わる物語 余白 マルチジャンル

    2,アッシャー家の崩壊
     ゴシックロマンス? ほらー? 怖そう

    3, 黒猫
    天邪鬼 プラスとマイナス 表裏

    4,モルグ街の殺人
    世界初の推理小説

  • NHK
    指南役 巽孝之氏

    ◯アーサーゴードンピムの冒険
    ・前半はポー後半はピムが書くメタフィクションとして出版する
    メタフィクションとは、これは架空の話ですとあえて表現すること
    虚構と現実の境目を問い直す小説を批判する小説の先駆者

    ・最後の場面、地球空洞説が信じられていて、堂々と滝のように何か水が落ちていく所というのは、そこが穴で、北極の方からまたでてくるという、無事アメリカに帰り着いたと当時の読者は結末が推測できた
    ・最先端の科学的知見を小説に取り入れて想像力を掻き立てる点はポーのSF的なところだ

    ・最後の大きい白い人とは、 ポーをクビにした会社の社長の名前がトマスホワイト氏を揶揄したのではないか
    ・後の時代に色々な作家が続編を書いた
    フランスのジュールヴェルヌ、氷のスフィンクス

    ・人肉を食べたというオマージュ
    大岡昇平氏の野火で、フィリピンを舞台に戦争の異常な体験、猿の肉を食べる
    カニバリズム ポーの大ファンだと公言している
    藤子不二雄Fのカンビュセスの籤
    終末戦争後くじで選んだ人間を食糧ミートキューブにして生きる姿を描いた

  • ポーの読んだことない作品も読みたくなる、参考書的なガイド本。当時これだけの本を書いたポーの凄さがわかる。
    取り上げられたなかで、アーサーゴードンピムだけ、まだ読んだことない。
    気になるけど、ただ内容がな、、、

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著者プロフィール

慶應義塾大学名誉教授、慶應義塾ニューヨーク学院長/アメリカ文学思想史専攻/コーネル大学大学院博士課程修了(Ph.D., 1987)/単著に『ニュー・アメリカニズム—米文学思想史の物語学』(青土社、1995年度福沢賞)、『リンカーンの世紀—アメリカ大統領たちの文学思想史』(青土社、2002年/増補新版、 2013年)、『モダニズムの惑星—英米文学思想史の修辞学』(岩波書店、2013年)、『メタファーはなぜ殺される—現在批評講義』(松柏社、 2000年)、『盗まれた廃墟—ポール・ド・マンのアメリカ』(彩流社、2016年)、Full Metal Apache(Duke UP, 2006年)、 Young Americans in Literature (Sairyusha, 2018)。監修に『脱領域・脱構築・脱半球—二一世紀人文学の人文学のために』(小鳥遊書房、2021年)など。編訳にラリイ・マキャフリイ『アヴァン・ポップ』(筑摩書房、1995年/北星堂、2007年)、共編に The Routledge Companion to Transnational American Studies (Routledge, 2019)他多数。

「2022年 『慶應義塾とアメリカ 巽孝之最終講義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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