別冊100分de名著 老子×孫子 「水」のように生きる (教養・文化シリーズ)
- NHK出版 (2015年1月26日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
- / ISBN・EAN: 9784144072079
感想・レビュー・書評
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アジアの叡智を紐解きたくて、手始めに読んでみた。
本書のタイトルにある「水のように生きる」、この言葉はコロナになりたてのころ会社で教わった言葉で、変化についていけず燻っていた私に「水のように、変化する環境に対して自分も必要十分に変化すればいい」という気づきを与えてくれた大事な言葉だった。
しかし読んでみて、私の勝手な解釈は中国の思想家たちのそれと少しずれていたことを学んだ。
・老子の水:恵みを与える物でありながら、争いを避けるようにしなやかに方向を変え、最終的には人の嫌がる低い場所(湿地など)に落ち着く。これに争いを好まない謙虚で善良な姿を見る。
・孫子の水:対象に応じて柔軟に姿を変え、自らは定形をもたない水のありように、軍隊の理想を見る。
・孔子の水:川の流れが蕩々としていて尽きることがないことから、「絶えざる努力の象徴」ととらえる。
私は水草が生えている流れの穏やかな小川を想像して、水が流れるときの水草との相互作用を主に念頭に置いていた。水草という進路を妨げるものがあると、水はその進行方向を柔軟に修正する。一方、水はそれなりに強い力も持っているので、水草もたおやかに傾く。その、芯は持ちながらも、必要十分に姿形を変えて流れていく様に、自分が進むべき方向性を見た気がした。
結論:インスピレーションの源としての水の万能性に感服。
そのほか面白かったこと:
・老子の、天地は混沌の運動から始まったがそれを言語化しようにないのでとりあえず「道」と名づける、という考え方がすごく面白かった。「神」という形象・行為者を作らずに「おのずからなる」と見てその曖昧さを受け入れて議論の土台を作っているところが興味深い。
・「道徳」の語源は老子だったことを知る…!
・儒教は国を統治する秩序を守るための仕組みとして優秀だった。しかしそんな儒教思想に息苦しさを感じる知識階級の癒しの書として老子の思想が生き残った、というのはおかしかった。儒教(孔子・孟子)はアクセル、道教(老子・荘子)はブレーキ。
・孫子の兵法は合理的で先進的。「戦わずして勝つのが最善」「戦いの前の情報収集が大事」というところなど、やっぱりついプーチンに引きつけて考えてしまう。
メモ:本書を読もうと思ったきっかけ:
・ここ一年くらいで読んできた色んな本(『フルライフ』『未来をつなぐ言葉たち』『無意識がわかれば人生が変わる』など)でアジア的叡智に触れ、深掘りしたかった。
・ミヒャエル・エンデの『鏡の中の鏡』は老子の「挺埴以為器。當其無有器之用。(粘土が包む虚無の空間が器の有用性だ)」に着想を得ているらしく、老子は気になっていた。
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読み解く二冊は、視点の全く違ったものと解釈されがちですが、共通点があるのではないか?それが「水」のあり方だという。相反する性質を持つ水。その"バランス"に見倣えと。
さらにテキストを読むと、この二冊もそれぞれのイメージと違った面が、浮かび上がってくる。『孫子』は戦争を勧める書物じゃないし『老子』はただ自然に流されろ、とはいっていない。
とはいえ、社会のなかでの人のあり方には違いかあり、そこが二冊の個性といえる。 -
老子の考え方がガンディーやトルストイに影響していることには驚いた。
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老子
孫子
・いつまでも喜んでいないこと