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- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150002435
感想・レビュー・書評
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フィルポッツの代表作の一つ。引退した探偵のリングローズは、長期滞在するつもりで旧荘園邸ホテルを訪れるが、初日の夜に寝室で子供が恐怖の叫び声を上げる耳にする。しかし子供の姿はどこにも見当たらなかった。密かに調査を始めると、驚くべきことに、その声の主は一年前に既に死んでいることが判明。子供を殺したまま逃げ延びた犯罪者達を捕らえるため、リングローズの最後の大仕事が始まる。
本作の独創的な点は、探偵が事件を知るきっかけが既に亡き犠牲者の声を聞いたためという所である。そして、これに関する謎はひとまず置いておいて仇討ちに挑むという姿勢から、リングローズの子供好きな性質が伝わってくる。事件そのものが一年前であるため証拠が足りず、長い準備期間をかけて身分を偽り犯人に接触する展開も、事件の特異性と彼の執念をよく現していると言える。中盤以降繰り広げられるリングローズとブルーク男爵の知略対決は、かなりスリリングで読み応えがあった。
本作で一番可哀想なのは(事件の犠牲者を除けば)ニコラス・トレメーン青年である事は確実である。こういう恋敵ポジションは嫌な奴が担当するのがセオリーだが、彼は普通にいい奴だったために可哀想さが際立つ。なまじ性格を良くするのも考え物ということか。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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