- Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150111458
作品紹介・あらすじ
21世紀初頭、全世界に蔓延したウイルスにより、人類は死滅寸前にあった。地表をおおいつくした死のウイルスをさけ、密閉された地下都市で生活するわずかに生き残った人々。科学者たちは、ひとりの男に人類が生きのびるための一縷の希望を託して、鍵を握る時代-すべてがはじまった1996年へと送りこんだ。そこで彼がつかんだ巨大な謎…"12モンキーズ"とは?知られざる兵器か?秘密の軍隊か?それとも…。
感想・レビュー・書評
-
本書は、テリー・ギリアム監督の同名SFサスペンス映画のノベライズ作品。映画は、過去・現在・未来、そして"幻覚・妄想"が入り乱れた、観る者を惑わす作品で、鑑賞後の「考察」を存分に楽しむことができるものとなっている。
この難解な作品に対する理解を深めようと本ノベライズ作品を手に取ったのだが、残念ながら新しい発見はなかった。良くも悪くも映画で描写されたものを文字起こししているだけの作品。映画作品を復習する目的であれば良いかもしれないが、考察を深めるにはあまり役には立たない。間違いなく映画作品の方が楽しめるので、初見の方には映画を観ることを強くお勧めする。(まあ今となっては本書と出会う方が稀だと思われるが。)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
SF。サスペンス。タイムトラベル。
映画からのノベライズとのこと。映画は未視聴。
パンデミックの描写は少なく、タイムトラベル・サスペンスといった感じ。
序盤、物語の流れを掴むまでは、場面の変換が分かりにくいか。
中盤の展開はスピード感があって良い。
スリリングなエンターテイメント作品として、なかなか楽しめた。 -
映画もよくわからないが本も同じ
表紙 5点映画
展開 6点1995年著作
文章 5点
内容 600点
合計 616点 -
映画をみようかなと思った
-
地下鉄の改札を通り抜けようとしてふと見ると、地上に向かう階段を、母親に手を引かれ登る小さな男の子がいた。
まだ歩きはじめたばかりだろうか。一段一段のぼる姿が健気に見えるのは、それが男の子だとよけいにそう思えるのは、大人になった姿とのギャップがあまりに大きいからだろうか。
そんな時にいつも思い起こすのが、映画「12(トゥエルブ)モンキーズ」(テリー・ギリアム監督、1995年)の冒頭のシーンだ。
両親に手を引かれた男の子。雑踏の空港ロビー。走ってくる男。出発便を告げる搭乗アナウンス。そして銃声。倒れる男。その上にかがみこむ女…。
「大丈夫よ」とささやく母親の声。だが、彼がすでに知っているように、「二度と決して」大丈夫ではない。
それは、その後何度も繰り返し物語の中に挿入される光景だ。
場面は変わって近未来。鉄格子の中で目を覚ます主人公コール。
やがて彼は、看守の命令で荒廃した地上に出る。そこは、世界的なウイルスの蔓延で人類の大部分が死滅した後の世界だ。
地下に戻った彼は地上で何を見たかを科学者たちから尋問され、やがて試験にパスした彼は、過去の世界へとタイムトリップすることを命じられる。すべてがはじまった時代へと。
そこから物語は、ブルース・ウィリス演じる主人公とマデリーン・ストウ演じる女性精神科医キャサリン、それにブラッド・ピットのキレた演技が印象的な精神病患者のジェフリーが三つ巴になって進んでいく。
物語の焦点はむろん「12モンキーズ」。人類を滅亡寸前に追い込んだ致命的なウイルスをバラまいたのは、どうやらこの「12匹の猿の軍団」らしい。彼ら(?)を見つけ、それを阻止することがコールに与えられたミッションだ。
しかし、「12モンキーズ」とはそもそも誰なのか。どうやって彼ら(?)を見つければいいのか。それに何より正しい時代にタイムトリップする方法は?
最初から困難が予想されたそのミッションは、物語の進行とともに困難さの度合いを増していく。増大しつづけるエントロピーに軌を合わせるかのように、P.K.ディックの世界に似て、または同じブルース・ウィリス主演の「ダイ・ハード」シリーズに似てというべきか、すべての物事が何ひとつ思い通りには運ばない。
コールは何度も間違った時代に送りこまれ、間違った世界で精神病院に放り込まれ、そして未来に通じるはずの電話は間違った相手につながってしまう。
精神病院で注射された安定剤のせいなのか、はたまたタイムトリップの影響なのか、コールの頭はずっと混乱したままだ。過去と未来がごっちゃになり、空港のシーンが何度もフラッシュバックし、同じミッションを帯びたタイムトラベラーの声が天井裏やトイレの個室から聞こえてくる。
それに拍車をかけるのは、同じ病棟にいるジェフリーの支離滅裂な言葉の洪水だ。さらには、彼に「正気」を取り戻させようとする精神科医キャサリンの説得も彼を混迷に導いていく。
やがて彼は、未来の世界も「12モンキーズ」を追うミッションも幻想で、自分は正気を失っているのだと考えはじめる。地下世界しか知らない彼にとって、現在の世界で吸う空気の匂いは甘美で、日光のきらめきは彼の視線を眩惑する。こちらの世界こそが現実なのかもしれないという思いは、彼を誘惑する。
だが、そう思いはじめた矢先に未来の記憶を想起させる出来事に出会い、やがて事態は思わぬ方向へと転がっていく…。
何度もフラッシュバックする少年の日の記憶と、眼前に繰り広げられる男のタフな世界との対比が鮮やかだ。どうしてあの日からここへたどり着いてしまったのか。どんな物語がそこから、やがて地下世界の鉄格子の中へと彼を導いていったのか。映画は何ひとつ明らかにしないまま終わるが、それだけに後に長く余韻を残す作品になっている。
考えてみれば「ダイ・ハード」シリーズでも、ブルース・ウィリスの目元にはいつも少年の日を思い返すような表情が浮かんでいたような気がした。 -
おもしろい!
ハヤカワのSFもの。映画にもなったらしく、ウイルスを扱ったこの映画にブルース・ウィリスが主演したそうな。助演はあのブラピだそうな。見てみたい気がする。アメリカ的にヒロインが精神科医の女性である。おきまりのパターンであるが、時間のパラドクスを扱った作品としてはけっこう楽しめる内容である。
12モンキーズが何を暗喩しているのかイマイチわからないのだが、それでも映画風のストーリー(映画化されたものだから当たり前か・・・)と謎がリフレインされながら徐々に解き明かされていく様は一気に読み切れるスピード感がある。実際に今日は往復の電車の中と帰宅後の半時間ほどで読み切ったほどだ。
SFというよりは時間のパラドクスを交えたサスペンスだと思うのだが、それはそれで映画になると画面の迫力で結構な仕上がりになっただろうと想像する。評判は意見が割れているようだが、おもしろいのではないかと想像できる。サヨナラ、サヨナラの故・淀川長治氏の解説も力が入っており、映画を見たくなるね。