プレイヤー・ピアノ (ハヤカワ文庫 SF ウ 4-17)

  • 早川書房
3.57
  • (21)
  • (34)
  • (53)
  • (4)
  • (3)
本棚登録 : 439
感想 : 26
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (603ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150115012

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 89009

    機械に管理された社会と人間の悲哀をつづる。どことなくノスタルジイな味。

  • 第三次産業革命により全ての生産手段が機械化、自動化され、一部の技術者や公務員を除く人々は皆閑職しか与えられずにいる、そんな近未来のアメリカが舞台。人事が全てパンチカードで機械によって振り分けられ、技術者や公務員と一般人との居住区が分けられているという、効率・能率優先主義の社会に疑問を持つ人たちが革命を起こすという話でした。機械化による雇用数削減という問題よりも、作中に描かれている格差が今の私たちにリアルに迫ってきます。SFというカテゴリーに入っていますが、それが好きな人も嫌いな人も読める作品です。むしろ、SFという枠を超えた作品であると言えます。長編ですが、すらっと読めるのでおすすめ。

  • ヴォネガット初の長編小説。1952年。
    500ページ近くあり、かなり長いが、やはりヴォネガットは長編がいい。
    最初の長編ということもあり、いつものノリとはちょっと違う。
    まず、なんと言っても時系列順に物語が進んでいる。これはヴォネガット的に珍しい。
    それから、トラルファマドール星人もキルゴア・トラウトもいない。
    あんまりイカレた人は出てこない。しかしながら、「イリアム」という地名が登場する。
    この先何度も出てくるこの地名、わたしは実在の都市だとばかり思っていたら、
    架空なんだそうな。うーん、やられた。

    そんなオーソドックスな手法で書かれたこの作品だが、
    中盤くらいからだんだん箍が外れてくるの感じた。
    序盤は、短編集にあるSFっぽいノリなのだが、主人公のポールが郊外に家を買うあたりから、
    なんというかいつものヴォネガットだなぁと思った。
    途中途中でさしはさまれる「ブラトブールの国王(シャー)」のエピソードは、
    その後の作品に(形を変えてではあるけれど)引き継がれているように感じる。

    わたしが感じる「ヴォネガットらしさ」とは、運命に逆らえずにどんどん流されていく視点にあると思う。
    その変化を見つめる視点はいたって冷静で、どう抗ったところで引き戻されるものでもない。
    その状況がそんなに「しっちゃかめっちゃか」なものであっても。

    ヴォネガット文学の面白さは、彼が誘ってくれるその「しっちゃかめっちゃか」に乗ることにあると思う。
    確かに皮肉もあるし、教訓もあろう。政治批判、文明批判、大いに結構。
    ニヒリストとしてのヴォネガットは超一流。
    しかし、そのニヒリズムは「しっちゃかめっちゃか」があってこそ映える。
    彼は批判の対象について、是正を求めるような聖人ではない。
    求められた是正が実行されたところで、絶対もとの鞘に納まることはない。
    きれいに解決するわけはない。
    そこまで描いてくれるから、わたしはヴォネガットを信じるし、
    「あーでももうしょうがないじゃん」という人や事項が
    あっちこっちに存在することは、認めなくちゃいけないんだ。

  • 2007/05/02 読了
    2012/12/08 移動

  • 2006/10/20購入

  • 読みやすいヴォネガット入門編かな。酷評の対象にされがちな本作だけど、彼の気持ちが素直に表れてるんじゃないかと。
    失敗が見えていても壊さなければならない。
    そんな人間への優しさを感じる一冊。

全26件中 21 - 26件を表示

カート・ヴォネガット・ジュニアの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×