- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150118105
作品紹介・あらすじ
聖なる都市バンコクは、環境省の白シャツ隊隊長ジェイディーの失脚後、一触即発の状態にあった。カロリー企業に対する王国最後の砦"種子バンク"を管理する環境省と、カロリー企業との協調路線をとる通産省の利害は激しく対立していた。そして、新人類の都へと旅立つことを夢見るエミコが、その想いのあまり取った行動により、首都は未曾有の危機に陥っていった。新たな世界観を提示し、絶賛を浴びた新鋭によるエコSF。ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞などSF界の賞を総なめにした作品。
感想・レビュー・書評
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今までのSF小説とは違う面白さを感じたSF小説。次回作が待ち遠し作家が増えた喜びを感じる。
【感想】
超面白いSF小説を読んだ時に感じる”センス・オブ・ワンダー”や”認識の変革”は正直感じなかったが、それとは別の面白さがこの本にはあり、最後まで楽しめ、読後も暫くその余韻に浸ることが出来た。
・登場人物達は、憧れるようなヒーローやヒロインでは無いが、どんなに絶望的な状況でも、生きることや人間の尊厳を投げ出さない逞しさがとても愛おしく感じた。
・舞台の未来のタイの世界が、視覚的だけでは無く、熱気や湿度、匂い及び音まで身近に感じられ、物語の場面に放り込まれたようなリアリティさがあった。
・この物語の世界観から感じる不安、恐怖、やるせなさは、直接的ではないが今後の先行きに感じるものとオーバーラップするものを感じた。
・上巻では世界観や人物像に繋がる文章が多いため、あれこれと自分なりに想像を膨らますことができ、下巻では打って変わって怒涛の物語の展開により、寝る間も惜しんで最後まで没頭することができた。長編小説ならではの醍醐味の一つだと感じた。
【備考】
・個人的には、事前に『第六ポンプ』を読んでこの世界観を垣間見たことが、内容をスムーズに理解する助けになったと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
息つく間もない展開で、一気に最後まで読ませる。どんでん返しとは言わないが、なんども、展開はひっくり返されて、何がなんだかわからなくなりそうになる。ハッピーエンドとは言い難いが、それなりに心が落ち着く終わり方だった。
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SF。エコSF。バイオSF。
かなり激しく物語が動く下巻。
上巻から引き続き4人の視点から進む。ただし、ジェイディーはカニヤにスイッチ。
ねじまき少女エミコが主役なのは間違いないものの、エミコの扱いがあまりに酷いのが印象的。
暑さでオーバーヒートし、痛みや不安も感じる、機械と人間の間にいるようなエミコのキャラクターが、個人的には大好き。今まで読んだSF作品で、一番好きなキャラクターかも。
上巻・下巻を通してダークな世界観だったが、エピローグには明るい未来が感じられ、読後感は意外と悪くない。
未来の世界をリアルに描いたSFとして、記憶されるべき作品。 -
近未来のバンコクを舞台にした物語の下巻。エミコたち「つくられた生き物」と、もとからいる人間とで構成される街では、あやうい均衡を保ちながら政治闘争が繰り広げられ、その均衡がついに崩れることに。生き残りを図る人々を描く下巻では、物語が進むにつれ、アンドロイドを開発した日本人の意図が明らかになります。上巻でエミコは、受けた教育と自分の中にあるものとの間にずれを感じていました。エミコの葛藤が何だったのか、読者はようやく知ることができます。真実が明らかになり、報いを受ける段になっても、顔色ひとつ変えない。こうした日本人の描き方からは、とらえどころのなさ、ある種の不気味ささえ、国際社会が抱いているように思えます。結末には「生き物」のしたたかさを感じて、ホッとしたような、救われたような気持ちになりました。
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同じ背景で描かれた池上永一『シャングリ・ラ』はどこか遠い未来、遠い世界の話に思えたけれど、本書で描かれる近未来はそうではない。ちょっとした糸の掛け違えで、近い将来こんな未来が待っているのではと思わせるだけの怖さがある。
正直言うとこの作品、ストーリーなんてあんまり覚えてない。覚えてないというか、もはやどうでもいい(笑)。とにかくこの世界観に圧倒され、打ちのめされ、最後にはもうへへ~っと土下座したわけですよ。それほどまでに本書はすごい。
80点(100点満点)。 -
いかにもアメリカっぽい。というよりも、西洋っぽい。オリエンタリックな視点は、こうした最新のSFにも再生産され続けていることに、まず驚く。それは、もちろん否定的にだが。
しかし、まあ日本の未来には、こうした人造人間的なもの、もしくは、ロボットのようなものが必要不可欠にならざるをえないのだろうとは思う。
だがやはり、彼が書き連ねる日本人らしさ、タイ人らしさについて疑問符を抱かざるをえない。
だから、敢えてアメリカっぽい。西洋っぽい。と皮肉を言いたくなる小説だった。 -
ハッピーエンドになって良かった
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中盤良かったんだけど後半よくわからなかったなあ…SDGsバイオパンクって感じ?「ねじまき」というファンタジックなワードに釣られすぎたかもしれない。
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飛ばし読みしてたら、白シャツ隊とジェイディー、カニヤたちの立ち位置がイマイチわからなくなってしまって、この本に彼らがなぜ出てくるのか掴めないまま読み終わってしまった、、、
アンダーソン、ねじまき少女、ホクセン、、弱肉と策略の小汚い世界で、最後の動乱の後に誰がどう生き残るのか、混沌とした感じがよかった。真夏に読んでよかった。