- Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150123109
作品紹介・あらすじ
リュウ、トライアス、ワッツ……。2010年代に発表された煌めく星ぼしのごとき海外SF作品を精選した、充実の年代別アンソロジー
感想・レビュー・書評
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先日「2000年代海外SF傑作選」を読了しまして、その際の感想は「『綺麗であっさりしすぎている』か『ちょっとやり過ぎでくどい』かどちらか」。あまりピンとくる作品はなく、では2010年代はどうだろう、と続けて手に取ってみましたが・・・うーん、残念ながら、こちらもあまりピンとくる作品はありませんでした。
あくまでも主観的な感想ですので、もちろん他の方にとっては素晴らしいと思える作品もあると思います。収録されている作家陣は、最近のSF者界隈でよく耳にする今をときめく名前がずらりと並んでますし。が、2000年代以上に「綺麗であっさりし過ぎている」作品が多い印象。敢えて心に残った作品を挙げるとしたら、ピーター・ワッツの底意地の悪さですかね(笑)
それから、最後に納められているテッド・チャン「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」。な、長い・・・(^_^; なんとこの作品だけで、短編集の3分の1強の紙幅を占めます。すっごくみみっちい感想で本当に恐縮なんですけど、短編集のうち1本で3分の1使うよりも、その紙幅を活用してもっとたくさんの作品を読みたいです。テッド・チャンなら、他にも質の高い(そしてよりコンパクトな)作品がいくらでもあると思うんだけどなぁ・・・。
というわけで、鴨とはあまり相性が合わない結果にはなりましたが、海外SFのリアルな潮流を感じたい方にはオススメです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2010年代、最新であった。テッド・チャンは読んだばかりなのでそれ以外で好きな順に並べるとこんな感じ。
「ジャガンナート――世界の主」地球人じゃない生き物が最高。でも鼻が痛い。
「ロボットとカラスがイーストセントルイスを救った話」健気なロボットを応援しないではいられない。
「良い狩りを」再読。やっぱり上手なケン・リュウ。ちゃんと技術と生き物と感情が話の中で緊密に結びついている。
収録作品はこの10年間のうちに出てきた新しい潮流なかでなるべくばらけるように選ばれているのだと思う。読み心地は多様で、自分は現実世界から2つくらい跳躍した世界の話が好きなんだということが分かった。近いとね、仕事を思い出しちゃってね... -
郝景芳(ハオ・ジンファン)の「乾坤と亜力」(チエンクンとヤーリー)とケン・リュウの「良い狩りを」を除くと、あまり面白いと思わなかった。テッド・チャンの「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」は、どういう結末になるのかと期待して読んだが、なんだか釈然としない。
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全体的に、あれ?という作品が多くて残念ながら自分的★5つはなかった。2000年代〜のほうはなかなか良かったのだけど。
最後のテッド・チャンが短篇とは言えない、長めの中篇って感じで、分量的にもそこに賭けてきた感がある。
この手の傑作選は、他のアンソロジーに収録されてないものとか、書籍化されてないものを優先したりする慣習があるけど、こちらも「この作家の作品を入れたいけど、アレはもうあっちに収録されてるからコレにしとくか」というのがあったような感じ。
ピーター・トライアス『火炎病』★★★☆☆
郝 景芳『乾坤と亜力』★★★★☆
アナリー・ニューイッツ『ロボットとカラスがイーストセントルイスを救った話』★★★★☆
ピーター・ワッツ『内臓感覚』★★★☆☆
サム・J・ミラー『プログラム可能物質の時代における飢餓の未来』★★☆☆☆
チャールズ・ユウ『OPEN』★★★☆☆
ケン・リュウ『良い狩りを』★★★★☆
陳 楸帆『果てしない別れ』★★★☆☆
チャイナ・ミエヴィル『" "』★☆☆☆☆
カリン・ティドベック『ジャガンナート 世界の主』★★☆☆☆
テッド・チャン『ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル』★★★☆☆ -
2020年12月ハヤカワSF文庫刊。11編のSFアンソロジー。6編は初訳で、始めて読む面白い話が多く、とてもお買い得。2010年代という認識はできなかったが、こういう作品のあった時代だというのは、体感できた。テッド・チャンのソフトウェア・オブジェクトのライフサイクルはアンソロジーのほぼ半分を占める中編で、人の機械知性達への叙情的な想いが気高く、読み応えがあり、楽しめました。そういえば、テッド・チャンの短編あなたの人生の物語(これは2000年代)を原作とした映画のメッセージも2010年代を代表するSF映画でした(ちょい話がズレた?)。
目次:「火炎病」ピーター・トライアス/中原尚哉訳★初訳、「乾坤と亜力」郝景芳/立原透耶訳★初訳、「ロボットとカラスがイーストセントルイスを救った話」アナリー・ニューイッツ/幹 遙子訳★初訳、「内臓感覚」ピーター・ワッツ/嶋田洋一訳★初訳、「プログラム可能物質の時代における飢餓の未来」サム・J・ミラー/中村 融訳★初訳、「OPEN」チャールズ・ユウ/円城 塔訳、「良い狩りを」ケン・リュウ/古沢嘉通訳、「果てしない別れ」陳楸帆/阿井幸作訳☆新訳、「“ ”」チャイナ・ミエヴィル/日暮雅通訳★初訳、「ジャガンナート――世界の主」カリン・ティドベック/市田 泉訳、「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」テッド・チャン/大森 望訳 -
SFは書かれた時代から大きく技術革新が起こる前に読むと気持ちが良い。
出来るはず作られるはずと思われていたサービスや商品に頭を悩まさなくて良い。
自分のある程度知っている過去と創造しやすい未来を純粋に楽しめる。 -
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ひとに近付けば近付くほどに、ひとではないことがあからさまにされていく。
ひととそれ以外との境界を守ろうとするから?
あたらしいひとを生み出してしまうのが怖いから?
いのちを持つものと、持たざるものと。
あちらにはゲイSFというジャンルがあるのか…確かに面白かったよゲイSF。まぁ喜んで百合SF読んでるわけだしね。LGBTと百合を横並びに語ると何か飛んできそうだけど。まぁその辺は別の所でやってください。
インターフェイスの問題なんだろうなと思っている。なので技術的に自分の表層がある程度自由になれば、肉体のジェンダーというのは然程の問題にならなくなる、のか? なのでSF上だと大して意識されない。
つまり百合SF、とかゲイSFとかってジャンル分けをしてしまってる時点で現状はまだまだ、ってことになるんだけど。
親和性の問題でしかなくなるのかもしれない。要するに、女の子だからスカート穿かなきゃ、なのではなくて、平均的な女の子の体型のほうがスカート似合いやすいよね、って程度の。似合ってりゃ男の子がスカート穿いてもいいじゃんね。
お洒落云うてもスカートはくとか…安田系ですな(笑
すべての作品を通じて、豊かなテクノロジーとの向き合い方、関わり方を通してそれぞれの主題を描いている。
そこにはやっぱり、それぞれの時代のひとが居て。もちろんひとが書くものだから、ひとを通して見るしかないんだけれど、或いは人間が残した、けれど人間が不在の状況を、なるべく人間としてではなく眺めることができたら、ってそれは、もう人間の仕事ではないか。ふーむ。
どうなんだろうな、と思いつつ手が出なかった海外SF作家を何人か読めてお得。平均して☆3.2。
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「2000年代」のときも思ったけど、日本のSF短編は世界一! とか誤解しそうで怖いわ。ピーター・ワッツの「内臓感覚」なんて、腸内細菌叢の意識への影響というトピックが、この数年で急速に陳腐化したことは考慮するにしても、腸内細菌で人を操ってテロをやらせるなんて、(テロを扱ったサスペンスとかならともかく)SFとしては、このアイデアの一番つまらない使い方だと思う。「プログラム可能物質の時代における飢餓の未来」とか「ジャガンナート――世界の主」はそれでも面白かった。