- Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150305390
感想・レビュー・書評
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正直なところ内容について理解している気がしない。それでも綴られる言葉から喚起されるイメージが強く、ワクワクさせてくれる。満足。
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文庫版へのあとがきで作者が書いているように「なんとも奇妙な小説ですが」でありマニア向けの分かりにくい時の神林である
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我語りて世界あり (ハヤカワ文庫JA)
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言葉、というものをどう捉えるか。
ぼくの場合、それは「魔法」です。
その捉え方に至った切っ掛けの一つは、間違いなく神林作品。
本書は、「言葉」の中でも「名前」の魔力に注目した作品です。
停滞した世界。
人々は、共感機と呼ばれる器具を目に装着している。
その器具は、人々の共感力を増幅させる。
彼の考えは自分の考えであり、彼女の気持ちは自分の考え。
そんな風に、あらゆる経験を総ての人間が共有している世界です。
そして、共有は強制されています。
共感機を外した人間は捕らえられ、強制的に共感機を装着されます。
そんな世界に、2人の少年と1人の少女が存在します。
彼らが他の人間たちと違うのは、「名前」を持っていること。
総ての人間が経験を共有している世界に於いて、これは特異なことです。
なぜなら、総ての経験が共有されている世界では、名前は必要ないからです。
名前とは、異なる個性を区別するために用いられる手段です。
本来、このような逸脱者は、すぐにオーバーカムという機械知性に検知されます。
検知された個体は、OPと呼ばれる組織員によって共感機を着けさせられるのです。
しかし彼らは、違法な手段を使ってオーバーカムを欺いています。
そんな世界に、<わたし>という存在が発生します。
それは人ではなく、機械知性です。
それは名前を持たず、「自己」を持ちません。
オーバーカムの中に発生した、オーバーカムではない存在。
オーバーカムは、その存在を消し去ろうと働きかけます。
<わたし>は、消されないために自己を獲得しようと動き出します。
<わたし>が目をつけたのは、無個性な世界で目立つ3人の少年少女でした。
という感じで始まる物語。
幾つかの短編の連作によって紡がれていくお話です。
始めは大人しかった<わたし>は、徐々に暴走を始めます。
武器塚と呼ばれる場所に捨てられていた、かつての文明が産み出した残骸。
その中に眠る、MISPANという特殊プログラム。
このプログラムと<わたし>が出会うことで、<わたし>は魔へと変わってくのです。
どのepisodeも非常に面白く、独特の文体でスイスイと読み進められるのはいつも通り。
本書は、とことん「名前」という概念のもつ魔力にapproachしていきます。
非常にsimpleな舞台構成と、無骨とも言えるような文体。
派手なaction sceneも交えつつ、とてもtempoよく物語は進みます。
MISPANに保存されていた、かつての世界に生きた人々の意識。
それを追体験しながら、物語は進んでいきます。
かつての世界で何が起こったのか。
なぜ人々は無個性の世界を創り出したのか。
そして、「自己」とは何か。
どちらかといえば地味な類になる作品だと思います。
しかし、読書中や読了後に残る感じは、かなり良質です。
語っている「我」は、いったい何だのか。
それが明らかになるラストシーンは、神林作品愛好者ならニヤリとさせられるでしょう。
あと、あとがきにも興味深い記述が散りばめられています。
13年前の出版ですが、現代でも通用する考察だと思います。 -
これはラスト一行につきます。
最後にわたしに与えられる「名前」。
初期の神林作品はテーマが一貫しているから順番はどうでもいいけど、一気読みした方がいいかなと思った。 -
この本は自分がよく通うブログの人が読んでいたのをきっかけに購入しました。「遙かなる戦利品」「月下に迷う」「電子素子たちの宴会」「招魔効果」「魔が差した街」「共感崩壊」の6本を収めた短編集。読んでいてゾクゾクしてきました。
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なんども言う
わたしは
意識をもった
生き物なんだ