ラギッド・ガール―廃園の天使〈2〉 (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
  • 早川書房
4.23
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本棚登録 : 753
感想 : 55
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150309831

作品紹介・あらすじ

人間の情報的似姿を官能素空間に送りこむという画期的な技術によって開設された仮想リゾート"数値海岸"。その技術的/精神的基盤には、直感像的全身感覚をもつ一人の醜い女の存在があった-"数値海岸"の開発秘話たる表題作、人間の訪問が途絶えた"大途絶"の真相を描く「魔述師」など全5篇を収録。『グラン・ヴァカンス』の数多の謎を明らかにし、現実と仮想の新たなる相克を準備する、待望のシリーズ第2章。

感想・レビュー・書評

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  • 凄まじかった、これも…。
    廃園の天使シリーズⅡ作目。前作で登場した仮想リゾート〈数値海岸〉がどのようにして作られたか、〈大途絶〉がなぜ起こったか、他にもいくつかのキャラクター達の起源が明かされる反面、新たなキャラクターや謎、まだまだわからないことも多い。
    上手く言葉に出来ないけど、人間が抱えていながら現実世界では抑制して生きている(対象は自他問わない)破壊衝動みたいなものが、似姿では抑制がはずれ顕著になる。もっとも純粋な悪意みたいなものになる。〈天使〉も〈鯨〉もジョゼに埋め込まれた〈歯の女〉も、もとは人間から抽出された要素が振るう猛威なんだと思うと人間てやっぱり怖いね。でも正直この卓抜した想像力で容赦なくAIの世界を蹂躙する作者が一番怖いみたいなところあるけど…
    続きも楽しみです。

    ⚫︎あらすじ
    人間の情報的似姿を官能素空間に送りこむという画期的な技術によって開設された仮想リゾート〈数値海岸〉。その技術的/精神的基盤には、直観像的全身感覚をもつ一人の醜い女の存在があった──〈数値海岸〉の開発秘話たる表題作他『グラン・ヴァカンス』の数多の謎を明らかにする全五篇を収録。解説/巽孝之
    (ハヤカワオンラインより引用)

  • 前作がまさかの今作の書くためのプロローグだったとはね・・・してやられた。素晴らしい作品でした。

  • 廃園の天使シリーズ2作目。
    1作目のグラン・ヴァカンスとはもちろん違う舞台だが、文章や描かれるものは美しく、また水面下で取り返しのつかないことになっているかのような静けさからの恐ろしさ、迫力がある、それに官能的。
    読み進まずにいられないとはこのことです。

  • 前作グラン・ヴァカンスは終盤まで全体像が見えてこない話の展開に何度も挫折しかけ、正直あまり面白いとは思えなかったのですが、ラギッド・ガールを読み、やっと「廃園の天使」という作品の詳細が見えてきて「あれ?グラン・ヴァカンスってもしかして面白かったのか??」という気持ちになりました。今は読み返したくて仕方がないです。

    さて、本作ですがいずれの短編も単独で読み応えのある作品ばかりで、非常に面白い短編集でした。特に表題作からクローゼット、魔述師までの流れが素晴らしいですね。人間を仮想現実世界に送り込むまでの現実的な課題とその解決方法はリアリティに溢れており関心しましたし、そこから生じる課題(現実に及ぼす影響やAIの人格問題など)は、我々のいる現実世界が同じ場面に直面した際の議論に活かせるのではと感じるほどでした。20年以上前にこういった視点から問題を提起し、物語に落とし込んでいた飛先生は本当に素晴らしいSF作家ですね。

    また、表題作のラギッド・ガールは美醜やジェンダーの観点から見たSF作品として素晴らしい完成度を誇っているので、単体でも多くの読者の手にとって欲しいですね。自分の環境や年齢などによって捉え方が変わるかもしれないと感じたので、また時間をおいて再読したいと思います。

  • グラン・ヴァカンスの周辺の短編集。

  • 前作「グラン・ヴァカンス」は評価を三にしようか四にしようか迷いましたが、今作を読んで四にして間違いなかったと感じました。

    前作で語られなかった部分が短編を読むごとに明らかになり、気持ちいいです。

  • SF。シリーズ2作目。
    〈数値海岸〉を舞台にした短編集。
    一言でいうと、やっぱりスゴイな…、という感じ。
    エロくて、グロくて、美しい。
    全体的に、前作よりも分かりやすかったかも(あくまで比較的)。
    もう1回『グラン・ヴァカンス』読みたくなる。
    「蜘蛛の王」がベスト。アクションシーンが多くて読みやすいが、SF的アイディアに溢れていて、とても楽しく読めた。

  • 「廃園の天使」シリーズ2作目にあたる中篇集。
    前作『グラン・ヴァカンス』の虫喰いになったピースが少しずつはまっていき、<数値海岸>や<大途絶>の全体像が朧げながらみえてくる。
    複雑に構築された世界観は、SF初心者かつ完全文系人間の自分には理解するのがかなり難しい…。
    とはいえ、圧倒的なワードセンスの妙と、常識というラベルがペリペリといともたやすく剥がされていくような感覚は中毒性があり、ぐんぐん読んでしまった。

  • 中短編5編
    グランヴァンカスの世界が,その成立事情や理念,崩壊のプロセスなどわかる仕掛けになっている.短編それぞれも面白いが,グランヴァンカスを読んでなかったら★は3かな

  • 前作「グラン・ヴァカンス」は、舞台となる仮想空間「数値海岸<コスタ・デル・ヌメロ>」の成り立ちやここに至るまでの経緯等がほとんど描かれておらず、謎が謎のまま幕を閉じる作品ですが、この「ラギッド・ガール」に収録されている作品群を読むと、その謎のかなりの部分が解明します。こちらを先に読んでも作品としては十分成立しますが、「グラン・ヴァカンス」を先に読んでおくことを絶対におススメ。物語の解像度が、相当異なってくると思います。

    人間が仮想空間を”体感”するために、計算資産をできるだけ食わないように実レベルで開発された画期的技術「情報的似姿」。「ラギッド・ガール」に収録されている作品の半分は、この「情報的似姿」開発の経緯と展開を、生身の人間社会でのひとつのできごととしてサスペンスフルに描写しています。
    「グラン・ヴァカンス」の登場人物たちは、全てAIでした。それと比べると、人間が主役の作品は平易で感情移入しやすいんだろうなぁ・・・なんて思いながら読み進めた鴨が浅はかでした(^_^;人間の登場人物たちの方が、数倍グロテスクで感情移入不能であるという、この驚き。特に、作品群のドライバーとなる阿形渓と杏奈・カスキの両女性キャラの異形ぶり、激烈ぶりといったら、正に夢に出そうなほどのユニークさ。特に杏奈・カスキは、作中では相当な美女であることが仄めかされているのに、読後のイメージは「気持ち悪い」の一言しか思い浮かびません。このキャラ設定、どこから想起されるんだろう。飛浩隆の想像力に脱帽。

    人間の情動をコピーしたともいえる「情報的似姿」とは、生身の人間本体とは切り離されて独自に仮想空間を動き回る存在であり、人間社会のモラルや規範に縛られない存在です。それ故に、コピー元の本人の意思とは関わりなく隠された欲望や衝動がストレートに表出されてしまう、その醜さを描くのが、この作品群のテーマの一つなのかもしれません。
    ・・・とか理屈臭いこと書いてますけど、そんなお利口な理屈をこねる作品ではないことは、鴨も肌感覚でよく判りますヽ( ´ー`)ノとにかくグロテスクで醜悪で破壊的な作品ばかりだけれど、でも、美しいんです。破壊し、分解し、浸食する、そのシーンひとつひとつの美しいこと、艶やかなこと、そしてセンシュアルなこと。細かいロジックを突き詰めていけば、突っ込みどころはたくさんあります。が、そんなことを気にしていては楽しめない世界観だと思います。

    キャラがぶっ飛び過ぎていて鴨的には☆5つまでには行かない感じですが、でも次作が出たら絶対買います!楽しみです!

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著者プロフィール

1960年島根県生まれ。島根大学卒。第1回三省堂SFストーリーコンテスト入選。『象られた力』で第26回日本SF大賞、『自生の夢』で第38回同賞を受賞。著書に『グラン・ヴァカンス』『ラギッド・ガール』。

「2019年 『自生の夢』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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