按針 (ハヤカワ時代ミステリ文庫)

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 46
感想 : 2
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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150314279

作品紹介・あらすじ

航海士ウィリアム・アダムスは徳川家康に三浦按針の名を授かり、様々な試練に立ち向かう。日本を愛した青い目の武士の冒険浪漫。

感想・レビュー・書評

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  • 三浦按針。

    個人的に三浦半島と縁があり、年々その縁が深くなってゆく個人的事情から(出身ではないし住んでいるとかでもない)この本を手に取る。

    京急に乗るとアンジンヅカという駅がある。というか通過する。

    普段ならば電車の中でアナウンスを気にもとめず本を読んでいるものの、ある時「ヅカってなによ。アンジンってなによ」なんて思ってしまい、路線図を目を細めて見上げると「安針塚」とある。

    はぁ、人の名前みたいだなぁ(安 針塚さん?)とまったく無教養なことをポケッと考えつつ、個人名がそのまま駅名になる訳がないなぁと、しらべると、三浦按針という人物に行き当たる。

    驚くべきことに彼は大航海時代に流れ着いたイングランド人であり、しかも徳川家康に重用されたとある。

    そんなことがあるのかね、と思っていた矢先、『按針』なる歴史小説が発売された。

    歴史モノはあまり好まない。

    なぜなら歴史的登場人物が過剰に人間臭く描かれていたり、或いは、偉人と偉人との関係性がこれもまた過剰に親密・信頼しあっているような描写がこそばゆい場合が多々あるからでもある。

    そして、この『按針』もそのきらいがある。

    けども、物語としてとても面白い。

    大航海時代のイングランド人がそんな訳ないだろ!とかいちいちツッコミを入れてはならない。

    日本の歴史の中でも驚嘆すべき戦国時代とその終焉、江戸幕府のはじまりである。

    物語はまるでSFのようだ。

    恒星間航行中にワープシステムが故障して見知らぬ惑星に不時着、戦争に巻き込まれる。
    現代の?感覚ではそのくらい奇想天外な人生だったのではないか。

    そして、これも驚いたが「八重洲」はこの三浦按針と共に漂着したオランダ人「ヤン・ヨーステン」の名から取られていたという。

    知らなかったぞ。

    この物語では三浦按針とその周囲の人たちは魅力的で暖かく、ユーモアに満ちて熱心な人たちび描かれている。

    ほっこりなんて言葉は使いたくないがほっこりする。

    エンターテインメントとしては楽しめる。

    P.245に誤植?DTPのミスなのか構成ヌケなのかがあるのはいまどき珍しいご愛敬。

  • 2020年4月発行。
    498ページに及ぶ長編の文庫だ。

    時代は、豊臣秀吉が死んでからのこと。
    徳川家康が次の殿上人となるであろうと認められつつあった。

    そんな時にオランダ船で5艘の船団を組んでオランダを出発したのは、

    日本と交易をしようと言う目論みであった。
    御多分にもれず、旅は困難を極めた、天候ばかりでなく、

    水や食料を求めた島では反対に襲われ何十人もの船員を殺される。

    食料がつき、船自体もボロボロな状態でしかもたったの一艘で豊後の港につく。

    そこから航海士ウィリアムアダムスの人生が大きく変わる。


    先見の明があった徳川家康に重用されるきっかけも、素晴らしい。

    歴史の中で家康の哲学がアダムスを日本人にした。

    実に読み応えがあり、素晴らしい作品だった。

    読む楽しみがなくなってしまうので詳しくは書けないが、

    当時の世界情勢、日本が占領されなかった理由、

    世界は日本の何を欲していたか、日本の中の話であって、実は世界の話でも。

    家族愛も伏線として綴られている。

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著者プロフィール

仁志耕一郎(にし・こういちろう)
'55年富山県生まれ。東京造形大学卒業。広告制作や広告代理店勤務を経て、その後執筆に専念。'12年『玉兎の望』で第7回小説現代長編新人賞を受賞。『無名の虎』で第4回朝日時代小説大賞を受賞。同二作で第2回歴史時代作家クラブ賞新人賞も受賞。他の著書に『玉繭の道』『松姫はゆく』『とんぼさま』。

「2015年 『家康の遺言』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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