日本SFの臨界点 新城カズマ 月を買った御婦人 (ハヤカワ文庫 JA ハ 11-4)

著者 :
制作 : 伴名 練 
  • 早川書房
3.50
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本棚登録 : 190
感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (430ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150314910

作品紹介・あらすじ

3か月連続刊行の作家別傑作選第2弾。情報技術の未来を疾駆するポストサイバーパンクSFや改変歴史、青春小説など多彩な傑作集

感想・レビュー・書評

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  • 粒揃いで面白いです。あまりSF成分が強くないものも良い。

  • SFマガジン2005年7月号アンジークレーマーにさよならを、06年2月号月を買った御婦人、09年10月号雨ふりマージ、10年2月号議論の余地はございましょうが、まんたんブロード2007年4月号ギルガメシュ叙事詩を読みすぎた男-H氏に捧ぐ、9月号世界終末ピクニック、群雛Noveljam2017年2月原稿は来週水曜までに、2010年7月河出文庫NOVA2:マトリカレント、小説推理2010年3月号ジェラルド・L・エアーズ,最後の犯行、2008年2月GA文庫マップス・シェアードワールド:さよなら三角,また来てリープ、の10の短編を2021年7月ハヤカワJA文庫刊。日本SFの臨界点作家シリーズ2作目。振り返ると悪くない話ばかりなのだが、核になるアイデアを繰り返すギャグや勘違いで展開する読み辛い話ばかりが続くので、食傷気味になった。伴名練さんの解説が面白い。

  • ――



     SFはここまでできる。


     楽しく読むためにはこんなにも注意深くならなくてはいけないのか、という恐ろしさもあるけれど、まぁそれはなんでもか…。
     ほんとにひとことで云えば、情報過多作家である。短編から掌編まで、どんな細かな設定にもタグがぶら下がっていてそこからどこへでも飛べるような。そして飛んでいるうちにここが何処か解らなくなって、着地したら別の短編に居るような。まさにトラベラー。夏だしもう一回読むか。

     本編もそうだけれど、伴名練による解説…解説と云うには膨大な新城カズマ論も情報過多。しかしこういうのがあると、不真面目な読み手である私のような人間は非常に助かります。


     SFに出来ることを、これでもかと詰め込んだ短編集。というかこのひとの場合、思い付いたことを書こうとしたら今回はSFになっていました、ということなんだろう。SFならではの、現在を緩やかに掠める風刺的な部分もあり(それが10年前くらいに書かれているという、それもまたSFならではの驚きもあり)、歴史もの仕立てのSFも抜群に巧い。そのぶん一編一編を読むのに体力は要るけれど、ぎゅっとしたSFを沢山持ち歩きたい方にはおすすめです。
     表題「月を買った御婦人」は再々再読くらいになるんだけれど、やっぱり好きねぇ。ハインラインへのリスペクトがあり、「竹取物語」や『月世界旅行』へのオマージュもあり、民族的で幻想的なストーリーテリングの中に荒唐無稽なふりをした多量のアイデアが散りばめられていてユーモアに溢れ、その上で〆があまりにも美しいなんて。
     この一編だけでも一冊持っておく価値はあると思います。
     これからいろんなSFを読みたいな、という方は同じく伴名練編の『日本SFの臨界点[恋愛編]』にも収録されているのでそちらをどうぞ。そちらもどうぞ。

     新城さんに新作を書かせるとしたら伴名さんのような編集者なのかもという感じがしますね。
     …伴名さんに新作を書かせる編集者さんは誰でしょうね?


     ☆3.8である。

  • 2021年8月24日読了。ライトノベル出身・多岐にわたる活動を行う新城カズマ氏のSF短編集、選者の伴名練氏による充実した解説・活動歴もついて納得のボリューム。過剰に参照情報・オマージュを詰め込みSF的ワンダー・青春・ロマンティシズムを強く感じさせるSF短編たちはもちろん面白いが、非SF短編「ジェラルド・L・エアーズ 最後の犯行」がダントツに面白かった。読み終わっても結局真実が何であるかはわからないが、登場人物の心の中の真実に殉じること、が幸せ、ということなのではないか…?いくらエビデンスを積んでも、他者が「これが真実」と規定することはできないのではないか…?一方で当人でさえ、自分の体験が絶対の真実であって、模造記憶・記憶改変の影響を受けていないもの、と断言することもできない…。大変面白いテーマを扱う作家と感じた、他の著作も読んでみたい。

  • 『日本SFの臨界点 新城カズマ 月を買った御婦人 』読了。伴名練による新城カズマ傑作選。表題作と「雨ふりマージ」しか読んでなかったけど、「架空人」といった概念や歴史改変的なSF的着想の鮮やかさと青春的な瑞々しい感情の迸りが印象的。確かにこれはSF作家としてもっともっと書いてほしいというもの。

  • ああ,新城カズマはいい.その発想,筆致,サラサラとした文体に乗せられる,私が及びもつかないそのアイデアを,堪能できる,どっしりとした短編集.まだ単行本未収録作品があるので,将来の楽しみにしておこう.

  • 「月を買った貴婦人」以外は初読。多彩な作風ゆえに、個人的には好き嫌いが分かれるところ。「ギルガメッシュ叙事詩を読みすぎた男」はショートショートでありながら、はちゃめちゃな展開に強烈な印象を受けた。1番面白かったのは、SFではない「ジェラルド・L・エアーズ、最後の犯行」。作品を埋もれさせないために、SF傑作選にあえてSFでない作品を収録した編者の判断は素晴らしいと思う。

  • 何かの終わりを、単なる破局でなく、別の何かの始まりと捉えられるような感受性はSF作家には珍しくないが、そういう変化への偏愛みたいなものを、この短編集からは強く感じる。逆に過剰にイモーラルに振る舞うことを、自分は古い道徳に縛られない=かっこいいと、安直に考えてそうな危うさも感じる。時事ネタで申し訳ないが小○田氏の一件なんかを反面教師にしてもらいたいモンだ(後で吊し上げられるから、ではなくて、そのかっこよさなんてものが、所詮エコーチェンバー内の木霊に過ぎないことが明らかになった事例だと思うので)。

  • 伴名練セレクションの新城カズマ短編集(SF中心、一部ミステリー含む)。ともかく情報量が多い。表題作は、かぐや姫の雰囲気を感じる。月世界人ではないため月からの迎えは来ない代わりに、月へ行くための科学が発展する国。月が欲しいという無理難題に対し、最初は愛を勝ち取るために頑張る人々も、だんだんその目的は薄れ……。かぐや姫の帝なら、もっと早くもう少しロマンチックな答えを用意できただろうに。

  • 2023-02-16
    思ってた以上にリーダビリティが高い。収録作のいくつかは、他作品の外伝だったりシェアード・ワールドの一遍だったりするので、細かなところはよく分からなかったりしたけれど。文理の狭間に上手い具合に焦点が当たっていると思う。

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著者プロフィール

【新城カズマ・作】  生年不詳。作家、架空言語設計家。1991年『蓬莱[ほうらい]学園の初恋!』(富士見書房)でデビュー。『サマー/タイム/トラベラー』(全2巻、早川書房)で第37回星雲賞受賞。現在、大河歴史ロマン〈島津戦記[しまづせんき]/玩物双紙[がんぶつぞうし]〉を鋭意刊行準備中。

「2013年 『ドラゴン株式会社』 で使われていた紹介文から引用しています。」

新城カズマの作品

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