- Amazon.co.jp ・本 (357ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150410773
感想・レビュー・書評
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「すっぽん」が一番かな。「女」も海の中がいい。他の作品もオチが秀逸で名品ぞろい。
「すっぽん」パトリシア・ハイスミス
いはやは、なんとも!な結末。パトリシア・ハイスミスの深淵なる闇を見るような・・
母と10歳の男の子ヴィクターの家庭。母はいつまでも幼子の面影を男の子に求める。子供が成長しているのに気付かないか、気づこうとしないのか。
台所に、箱に入った生きた「すっぽん」があるのに気付くヴィクター。ペットとして自分への贈り物かと思いきや、スープにして飲むのだという。スープの日は明日だと思い、いつもいじめてくる男の子に明日すっぽんを見せてあげると言う。家に帰ると食べるのは今晩だと母親は言う。母親は包丁ですっぽんの尾を切り、腹を裂きスープを作る。がヴィクターは自分を見据えたスッポンの目が忘れられない。
(1962.10月号エラリークイーンズミステリーマガジン掲載)
「女」レイ・ブラッドベリ
海の中に生まれた「女」。浜辺の男に惚れ海に引き込もうとするが、敏感に察知した男の恋人がひきとめる。しかしとうとう・・ 「女」は意識体。海の中の「女」の情景は回りが光の波にのまれている感じを想像した。ブラッドベリはどこかで女性不信があるのかも。
(フェイマス・ファンラスティック・ミステリー1948年10月号掲載)
「淋しい場所」オーガスト・ダーレス
幼い頃恐ろしくて通れない暗い道。いつか忘れて大人になるが・・
(フェイマス・ファンタスティック・ミステリーズ1948年2月合掲載)
「ポオ蒐集家」ロバート・ブロック
「アッシャー家の崩壊」の構成を模したオマージュ。ポオ蒐集家の家に招待された私。これがアッシャー家と同様の建物。その蒐集家の蒐集した最も貴重なものとは・・
(フェイマス・ファンタスティック・ミステリーズ1951年9月合掲載)
「アムンゼンの天幕」ジョン・マーティン・リーイ
南極の極点を目指す3人の冒険家。行く手にテントらしきものをみつけその中に人間の生首をみつける。その人、ロバート・ドラムゴールドの遺した手記があった。ロバート一行は何か恐ろしい人智を超えたモノ、情況に出くわしたようだった。手記がそのまま掲載されているが、モノの正体は記されていない。その場の恐怖の空気を感じるだけである。「遊星からの物体X」をちょっと思い浮かべるが、遊星~はきちんと物体Xが出てくるので、先のロバート一行が何をみたか分からないこちらのほうがこわいのかも。
(1928.1月号ウィアード・テールズ掲載)
「夢売ります」ロバート・シェクリイ
10年の寿命とひきかえに「夢」を買った男。妻と子と楽しいわが家。夢を見終わった男の周りに広がるのは・・・
(1959.9月号プレイボーイ掲載)
「繭」ジョン・グッドウィン
ジャングルを探検して昆虫標本を採集した勇ましい父。でも少年は庭で昆虫を観察する。少年がその観察のあまり・・
(ストーリー・マガジン1946年10月号掲載、同名の作者が複数いて特定できずとある)
「二年目の蜜月」リチャード・マシスン
2年目の結婚記念日を迎えた仲のいい夫婦。だが夫は妻の匂いや味や感触を感じなくなってしまうが・・実は妻は・・
(プレイボーイ1960年10月号)
「無料の土」チャールズ・ボーモント
食べ物でも家具でも何でも無料で調達して生活している男。ある日墓地の土が無料だというので庭に貰いこみ野菜を育てるとたわわに実る。料理して満腹になるが・・
(ファンタジー&SF1955年10月号)
「あたしを信じて」ディヴィス・グラック
父母が死んでしまった幼いエヴァ。空想の友達がいるが育てのおばは理解できない。やがて・・ 最後は悲しい。クリスティにも同じような味わいの短編があった。
(エラリー・クイーンズ・ミステリー・マガジン1964年2月号)
「植民地」フィリップ・K・ディック(1953年6月号ギャラクシー誌掲載)
どこかの星。植民星にするべく探検隊約100名でこの3カ月調査しているが、何も有害物質がない。ところが物体に変化できる原形質が存在していた。地球に救助船を頼みそれは来たのだが・・ ターミネーターみたい。
「エレベーターの人影」L・P・ハートリィ
男の子はエレベーターに自分だけ見える人影を見る。クリスマスの日、パパがサンタになってやってくるというのだが・・これも恐ろしい。
(1954執筆短編集Two for the River収録)
「はやぶさの孤島」ジョン・クリストファー
男はパーティーで若い女を見染める。女には婚約者がいたが・・
(EQMM1972年2月号)
「水槽」カール・ジャコビ
貝の研究をしていた兄弟の家を買い取った画家の女。友人の女性と二人住み始めが、名残の大きい水槽が図書室に置いてあった。友人はだんだん貝に取りつかれるようになってしまう。
(ホラー・アンソロジーDark Mind,Dark Heart1962に書き下ろし)
2005.2.25発行(1975.3の新装版) 図書館詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
アムンゼンの天幕、クトゥルーだなぁ。ディックは意外だった。他も面白かった。
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1975年の『幻想と怪奇1』の新装版。収録作品どれもほぼ面白いです。
が、やはり以下作品が特に怖かった。
「すっぽん」パトリシア・ハイスミス
「アムゼンの天幕」ジョン・マーティン・リーィ
南極のテントの中にあったものは何か…はっきり描写しないことによって恐怖を盛り上げる方法もあることを知った作品
「エレベーターの人影」L・P・ハートリィ
ホテルのエレベーター。少年にだけその黒い影が見える。そして…書き方はあっけないですが、怖いラスト。 -
再版もの。50年代までの作品が主なのでやや時代がかっているというか、旧い感は否めない。少々拍子抜けするもの、早々に展開や結末が読めてしまうものもあるが、モダンホラーとは趣の違う正調「怪奇小説」を味わえるとも言えるか。
ハイスミス「すっぽん」、リーイ「アムンゼンの天幕」が好み。 -
『幻想と怪奇』は1〜3まで持っているのだが、テーマ別のサブタイトルは中々粋なので再購入。
「アムンゼンの天幕」は正しく怪談してて怖いなぁ。「すっぽん」も、この年になって読むとまとわり付くような怖さがある。 -
英米のクラシックな怪談を堪能できる短編集。おすすめはオーガスト・ダーレスの「淋しい場所」。
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未読