シブミ 下 (ハヤカワ文庫 NV ト 3-6)

  • 早川書房
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感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150412357

作品紹介・あらすじ

"シブミ"とは、ありふれた外見の裏に潜む洗練、日本的精神の至高の境地をさす。少年期に日本人の岸川将軍から"シブミ"の思想を学び、青年期に大竹七段から囲碁の手ほどきを受けたニコライ・ヘルは、いまや世界屈指の暗殺者となっていた。ハンナを護る決意をしたヘルだが、"マザー・カンパニイ"はCIAや警察をも支配下に置き、包囲網をせばめてゆく…美しく華麗な自然描写と凄絶なアクションが融合した冒険巨篇。

感想・レビュー・書評

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  • 少年から青年に成長する多感な頃に、シブミの何たるかを肌身に感じ、それを是として生きることに決めたニコライ・ヘルの成長の物語。

    CIA、謎の組織とミュンヘンオリンピックの「黒の9月事件」との関連など、スケール大きく描かれるが、テーマはアメリカの実利主義に対する強烈な批判だ。

    トレヴェニアンは、その時代のアメリカ実利主義を石油ビジネスを軸に描き、人間としての本当の価値観はシブミであることと対比させ、本当の真実とは何であるか、を描き出そうとする。
    だからと言って日本礼賛一辺倒の物語ではない。ヘルが生涯の地として選んだのはバスクであり、日本ではなかった。理由はアメリカナイズされた日本に古き良きシブミの精神がもう残っていなかったからである。

  • シブミを体得したヘルは、西欧文化に毒されてしまった日本に見切りをつけ、バスク地方に隠居中(なんでバスク?)。
    その中にミュンヘン・ファイブの生き残りのハンナが厄介事を持ち込み、ヘルは引っ張り出されてしまう。

    テロリストとの戦いを描いてはいますが、単にそれだけだったら古びてしまったことでしょう。
    背景に文化の衝突を描いているところが物語の厚みを増しています。もうこれは冒険小説の体裁の日本文化論ですね。
    碁を打ちたくなってくるなぁ。

    アイガー・サンクションも探して読んでみよう。

    戦後東京拘置所から開放されるところから始まる前日譚を、ドン・ウィンズロウが続編として書いているのも興味深いです。
    ウィンズロウで大丈夫なのだろうか?恐る恐る続編へ・・・

    • たまもひさん
      ウィンズロウの「サトリ」すごーく面白かったですよ!わたしとしては「シブミ」より好みだなあと思いました。ウィンズロウらしいドキドキ感があります...
      ウィンズロウの「サトリ」すごーく面白かったですよ!わたしとしては「シブミ」より好みだなあと思いました。ウィンズロウらしいドキドキ感があります。
      「シブミ」も読み直さなければ。
      2015/02/16
  • 後半になっても、ニコライの精神性を表すケイビング描写などが長く退屈。
    読み応えある文章は魅力的だし、陰影のあるキャラはそれなりに魅力的なので、もう少しストーリーが走れば面白くなったのでは?

  • (上下巻共通。)
    日本を舞台にした第二次世界大戦秘話と洞窟探検と暗殺者の三題噺。
    どのパートも楽しく読めました。
    解説とかを見ると、間違った日本観を楽しむ本なのかと考えてしまいますが、日本文化についてもかなり正しく描かれています。
    叙情的なところも好印象。

  • 暗殺者ヘルの活躍を期待していたが、すでに引退していた。恩義のある友人の娘の依頼により表舞台に引っ張り出される。組織の力を使って追い込みをかけてくるダイアモンド。一番の友人も殺され、愛人の生死も不明、さすがのヘルもこれで終わりなのか!!と最後まで楽しめました。復讐は思ったよりあっさり目だったな~

  • キャラクターがいいなぁ。
    けどいいキャラクターが死んでまったりして残念。
    ハナとニコライが今後どうなるのか、あとハナの傷はどうなったのか、その辺も気になるなぁ。

  • ニコライ・ヘルが何故、ニコライ・ヘルなのか、それを完全に書いてる。多分、現代が舞台の小説の暗殺者の中で最強はこの人やろう。会えるなら会うてみたい、彼の中の日本人と。

  • これはやはりトレヴァニアンならではの重層的な小説。
    ハードボイルドでもないし、まして冒険小説でもない。
    サトリから読んでしまったのは大失敗。ウィンズロウも勿論シブミを読んでいる前提でサトリを書いたんだと思う。
    しかし両作品のベクトルは全く違うものでした。

    シブミが 高度に含蓄のある演劇だとすると
    サトリは 失礼だが、平均的米国大衆が求めるB級スパイ映画。
    かな、、、サトリもそれなりに面白かったので悪口書きたくないですが。

    いずれにせよ シブミは 随所に彼独特の(主に米国流に対する)冷笑的な警句にあふれているし、いくつかの異なる色相をもった断片(主人公の日本における青春的パートとか)から構成されていて、非常にオリジナルな印象をもった作品でした。

  • 『サトリ』を先に読んでいたので比較になってしまうけど、ストーリーの重厚さ、人物設定等『シブミ』に軍配。
    こっち先に読んでたらウィンズロウは薄い上に軽かったやろな~

  • ミュンヘンオリンピック選手村でのテロへの報復を狙うユダヤ人組織とCIAやマザーカンパニーとの抗争に否応なく巻き込まれるニコライ・ヘル。冷徹にして巨大な組織を相手に立ち向かう姿を描いた一大冒険叙事詩。作者は没してしまったが、その前に本人による続編も読みたかった。

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