リーマン・ショック・コンフィデンシャル(上) (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (476ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150504014

作品紹介・あらすじ

気鋭のジャーナリストが鋭く切り込むリーマン・ショックのセンセーショナルすぎる裏側

感想・レビュー・書評

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  • 原題は”Too Big To Fail”。「私は世界大恐慌の研究者として人生をすごしてきました。歴史から判断しても、いま大胆な行動をとらなければ、ふたたび恐慌が訪れるでしょう。そして今回は以前よりはるかに、はるかに深刻なものになる」(ベン・バーナンキ、下巻、P.279)と言われた2008年9月の数週間のドキュメンタリー。

    内容は関心あればお読み頂くとして、一番重かったのは、責任を負っている人ほど負っていない人に対して我慢しなければならないということだ。「山のようにある悪い選択肢のなかでは、いちばん現実的な解決策」(同、P.370)は政治家、マスコミに袋叩きにされる。事態が解決しなければ被害を受けるのは実は叩いている当人たちなのだが、それに気づいていない。こういう場面で人々を説得することはプロ同士の交渉よりも難しい。

    貪欲で我が強く同時に献身的で異常なまでに仕事熱心、こういう多義性をもった人々を単純に「悪党」よばわりするのもメディアなら、彼らの成し遂げたことに光を当てるのもやはりメディア、ということで本書の著者はNYタイムズ紙の熟練記者。彼は末尾でセオドア・ルーズベルト大統領の言葉を引用する。「重要なのは批評家ではない・・・名声は、現に競技場に立つ男のものだ。・・・万一失敗に終わっても・・・勝利も敗北も知らない者たちと同じになることはありえない」(同、P.430)。

    リーマンの経営者がワシントンで開かれた公聴会に呼ばれる。議員・有権者の罵声を浴びる中、弁護士に用意させた原稿を突然とじて即興で語った言葉。

    「私は毎晩目を覚まし、何かちがう方法があったのだろうか、と自問しています。あのときの会話でほかにどう言えただろうか。自分はどうすべきだったのだろうか。そうやって、毎晩毎晩わが身をふり返っています。」(同、P.380)

    スケール感や重さは人それぞれでも、仕事を真剣にやるというのはこの悔恨と日々向き合うこととほぼ同義なのではないだろうか。

  • とにかく登場人物と関係機関が多いので読むのに時間がかかるが、取材の深さと構成の旨さで読ませるだけの力があります。
    窮地の状況でも、CEOに箴言できない役員たちや、支離滅裂な論理展開でも何もアドバイスしない他社プレーヤー等、読んでいて気が滅入ってきます。ポジションを持っている人は影響を及ぼすので休場日に読むのがいいと思います笑

  • CFO思考で紹介されていたので読んでみたが,
    集中力がなく読みきれなかった…

  • 登場人物が多すぎて何がなんだか…ですが、まぁとにかくファルドを悪役だと思って読めば大丈夫かと。こんな破壊的な影響のある出来事について、これだけの範囲で起きている事象を俯瞰できることはまずないので、自分の知識の範囲や(疑似的なものにせよ)経験値を上げるのにとてもいい本だと思います。普通にエンターテインメントとしても面白いです。著者の取材力と構成力もすごい。

  • リーマンショック前後の各主要プレーヤー達のやり取りを大量のインタビューや記事を元に小説化した書籍。リーマンブラザーズを中心に物語が展開され、ある意味結末は分かってるが引き込まれる。
    下巻では遂にクライマックスに突入するので楽しみ!

  • 一般人では死ぬまで知り得ない裏話集みたいでおもしろい。
    登場人物の誰にも同情できないところがまたいい。
    またいつか greed is good の時代が来るのでしょうか。
    後半も楽しみ。

  • 英訳特有の読みにくさはあるが、市場取引に8年携わり、ニューヨークに1年駐在した身からすると、非常に臨場感をもって楽しめる内容だった。同時に、世界の金融界の中枢は、登場するほんの数十人が仕切ってると思うと、とてつもなく恐ろしいと感じた。どうすれば、こんな人間たちに仲間入りできるのだろうか。キャリア、資産、何もかもぶっ飛んでいて、その意味でフィクションに近い感覚で読んでいたと思う。

  • 原書名:TOO BIG TO FAIL

    第1章 リーマン株急落
    第2章 ポールソン財務長官の怒り
    第3章 NY連銀総裁ガイトナーの不安
    第4章 バーナンキFRB議長の苦闘
    第5章 リーマン収益報告への疑念
    第6章 襲いかかる空売り
    第7章 揺れるメリルリンチ
    第8章 瀕死の巨人AIG
    第9章 ゴールドマン・サックスの未来
    第10章 ファニーメイとフレディマック株急落
    第11章 リーマンCEOの焦り
    第12章 倒れゆく巨大金融機関
    第13章 誰がリーマンを救うのか?

  •  リーマンショックから10年。日経の特集が組まれていたので、興味を持って読んでみた。
     信用がすべての源となる金融業は、いったんその信用を失うと、途端に立ち行かなくなるという至極あたりまえのことではあるが、その重要性に気づかされる著書である。

     
     銀行家とトレーダーの対立はウォール街の階級闘争と言ってもいい。投資銀行業務が芸術と見なされる一方で、トレーディングは、技術は必要だが知能や創意はかならずしも必要でないスポーツのようなもの。そういう考えが少なからずあった。

     バフェットはまたリーマンの財務諸表に取りかかった。ある数字や事項が気になるたびに、そのページ番号を報告書の最初のページに書きためていった。読みはじめて一時間とたたないうちに、報告書の最初のページは何十もの番号で埋まった。これは明らかな危険信号だ。バフェットはひとつ単純なルールにしたがっていた―疑問が多すぎる企業には、たとえその答えが用意されていたとしても、投資してはならない。リーマンへの投資はなさそうだと結論づけて、その夜は終わりにした。

     19世紀のウォルター・バジョットの有名な箴言が思い出された―”銀行家はみな、自分が信頼に足る人間であることを証明する必要が生じたら、どれほどうまく言い繕おうと、すでに信頼は失われていることを知っている”

     取引の最終段階で、あとわずかでも好条件を引き出したいときにウォール街でよく用いられる言いわけである。CEOの許可を得なければならないから、と最後にひと押しするのだ。

  • リーマンショック後のウォール街のドタバタを再現。キーマンの動きをインタビューを基に克明に描いてくれている。アメリカの書籍らしく、人物説明が生い立ちから入るので、行ったり来たり感が強いのはご愛嬌か。

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