動く指 (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-27)

  • 早川書房
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150700270

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  • 引用「酒が飲めるってことは、人間のすぐれた資質の一つなんだ。」

  •  ※再読。新訳版を読んで記載。
    マープルシリーズだが、終盤まで彼女は登場しない。しかし、マープルの登場はとても効果的に作用し、「彼女のシリーズにしなくても・・・」という残念な感情は一切ない。むしろ、一般人であるマープルが何でもかんでも警察から依頼が来たり殺人事件が起きたりする事の方が異質であり、今回の様な関わり方の方が理にかなっている様に思う。また、マープルを軸とすれば、短編の事件であり、短編が起きる過程を上手に描写している様なイメージの作品だ。巻末にはミス•マープルが若い二人の探偵指南役を務めると記載があるが、指南役まで至っておらず、少しニュアンスが違うのではと残念に思った。
     ストーリーはジェリーとジョアナのバートン兄妹が療養の為にリムストックの屋敷をレンタルし生活する事になるが、間も無くバートン兄妹含め住人達に匿名の手紙が届く様になる。そして、手紙をきっかけに地域の名士の妻が服毒自殺をしてしまう。
     田舎で起こるいやらしい部分はよくクリスティの作品で取り上げられるが、悪意のある嫌な噂話が瞬く間に広がり、女性はこうしなければならないという様な昔からの風習や固定概念が蔓延る。そんな舞台にいやらしい「匿名の手紙」とくれば完璧なる舞台装置として作用する。
     今作ではバートン兄妹の人物像や彼らの恋愛なども上手に表現しながら進行していくが、兄目線の描写がベースになる為、妹側の感情の変化や雰囲気の捉え方が少しわかりにくい部分がある。少なからずミステリー好きとしては兄妹をも疑ってかかるため、一時、あれ?と疑問に感じる所もあったが、その辺りは現代との生活様式の違いなのかも知れない。
     マープルは牧師夫婦の招待でリムストックを訪れる。牧師婦人曰く、マープルは人間観察の専門家である訳だが、マープルは過去未来も含め、「安楽椅子探偵」の見本の様な人物なのだが、今作は「パディントン発4時50分」の時の様な関わり方では無く、上記作品が「指南役」のイメージだった為、物足りなさもある。但し兄妹では無くミーガンという女性を踏まえると、マープルがミーガンと警察に助言し、事件が解決に至る為、「指南役」のイメージはわかるが、残念な事に兄目線での物語展開の為、マープルとミーガンのやり取り描写はほとんどなく少し勿体無い様な気がした。
     動く指のタイトルについて、僕が読んだ版の解説で丁寧に述べられているが、正直ちょっと難しい。ニュアンス的な要素はわかるが、何故そこをピックアップするのか、そして解説でもある様に「煙幕」の方がピンとくる。まあ、タイプライターだったり、マープルの編み物だったり指が関わる物が多い事は理解しているが。

  • ミスマープルの登場は十章から。あえて登場しなくてもって感じ。美味しいとこだけいただきました的なマープルさんだった。

  • #赤背表紙のクリスティーを再読するプロジェクト 004

  •  学生時代からいったい何回読んだだろう。
    マイフェアレディのようなプリティウーマンのようなストーリーの本筋とはちょっと違うところに楽しみがある。
    マープルの思い切りの良さがかっこいい。
    そして犯人は本当に最後まで卑劣で嫌な人だった。すごく不幸で傷ついた人がたくさん出た。それは切ない。

  • ミス・マープルシリーズです。
    マープルさんが出てくるのが楽しみで、いっきに読んじゃった。

    小さな村で起きた、匿名の手紙による嫌がらせ。村に様々な噂が流れる中、悲劇が・・・・。

    犯人が分からなくてはらはらしたー^^
    ポアロさんもいいけど、マープルさんも出てきてくれるだけでほっとします。

  • 静養のため田舎に移り住んだバートン兄妹。平和な小村でのんびり過ごすつもりだったが、村では匿名の手紙による中傷や悪意に傷つく人々の不安が高まっていた。バートンも移住早々に手紙を受取り、そこには印字を切り貼りして作られた文章で根も葉もないことが書かれ、表書きはタイプライターで書かれていた。やがて中傷の手紙を受け取った女性が毒をあおって自殺するほど深刻な事態になり、警察は本腰を入れて捜査に乗り出すのだが…。舞台はセント・メアリー・ミードではなく、ミス・マープルは今回は完全にゲスト出演。終始バートン兄の視点で描かれている。いわばよそ者で新参者の彼が、中傷の手紙の言葉に翻弄され、村人同士が疑心暗鬼になるなかだれの発言を信じていいか迷い、しかし彼なりの判断で問題に対処していく。自力では事件の解決には至らないが、そこでようやくミス・マープルの出番となる。中傷メールという陰湿さとは対照的に、バートン兄妹のさばさばとした人柄の良さに好感が持てるため、心地よい読書時間が過ごせる。【以下ネタバレ含むため未読の方はご注意】ミステリ的には、マープルが最後にいうように「まったく偏見のない心を持って事件を見れば真相を見抜ける」タイプのもの。煙を払って火に近づけば、確かに真相はありがちでシンプルなものだった。中傷メールを煙幕とした巧妙な手口に村中が翻弄されたのだが、「中傷メール=女性(もしくは変態的な男性)のしわざ」と決めつける様な先入観は、時代を反映している。バートン兄がある女性に突然芽生える恋心と一連の行動にはちょっと唐突な感じがしたものの、疑心にかられたメインストーリー内では甘い香りのするスパイスのようでワクワクした。こうした隠し味もまた面白い。(2010.5.1再読&感想)

  • 残念ながらマープルはジョイント的な出演。
    それよりも主人公の青年の恋路が
    楽しめたりします。

    肝心の犯人のほうは
    おそらく引っ掛けられます。
    私もその罠にはまってしまいましたしね。

    謎解きそのものは
    割と単純です。
    恋路を楽しみましょう。

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