殺人は容易だ (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-43)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150700430

感想・レビュー・書評

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  • 「アガサ・クリスティ」のミステリ長篇『殺人は容易だ(原題:Murder is easy 、米題:Easy to Kill)』を読みました。

    『ポワロの事件簿〈1〉』、『ポワロの事件簿〈2〉』、『ヘラクレスの冒険』、『死との約束』、『杉の柩』、『五匹の子豚』に続き「アガサ・クリスティ」作品です。

    -----story-------------
    植民地帰りの元警官「ルーク」は、列車内で同席した老婦人から奇妙な話を聞いた。
    彼女の住む村で、密かに連続殺人が行なわれている。
    彼女はその犯人を知っていてこれから警視庁に訴えにいくというのだ。
    くだらぬ空想話だろうと聞き流した「ルーク」は、翌朝の新聞を見て呆然とした。
    例の老婦人が車に轢き殺されていたのだ。
    彼女の話は真実だったのか?
    さっそく現地に向かった「ルーク」を待っていたのは新たな犠牲者の群れだった!
    -----------------------

    1939年(昭和14年)に刊行された「アガサ・クリスティ」のミステリ長篇、、、

    「エルキュール・ポアロ」も「ミス・マープル」も登場しないノン・シリーズモノですが… 以前、「ミス・マープル」モノに変更されて、大幅なアレンジを加えられた映像化作品の『ミス・マープル4 殺人は容易だ』を観たことがある作品です。

     ■1. 旅の道連れ
     ■2. 死亡記事
     ■3. ほうきの柄を持たぬ魔女
     ■4. ルーク、捜査を開始する
     ■5. ミス・ウェインフリートを訪ねて
     ■6. ハット・ペイント
     ■7. 可能性
     ■8. ドクター・トーマス
     ■9. ピアス夫人は語る
     ■10. ローズ・ハンブルビー
     ■11. ホートン少佐の家庭生活
     ■12. 恋のさやあて
     ■13. ミス・ウェインフリートは語る
     ■14. ルークの黙想
     ■15. 運転手のふとどきな行為
     ■16. パイナップル
     ■17. ホイットフィールド卿は語る
     ■18. ロンドンでの会談
     ■19. 破棄された婚約
     ■20. わたしたちもその渦中に
     ■21. なぜ手袋をして野を行くのか
     ■22. ハンブルビー夫人は語る
     ■23. 新たな出発点

     ■著作リスト

    終盤に「バトル警視」が顔を出すものの、補佐的な役割しか与えられておらず、探偵役を勤めるのは元植民地警察の警察官「ルーク・フィッツウィリアム」… 物語は「ルーク」が任務を終えて英国に帰国したところから始まり、その際に列車内で偶然出会った老婦人から殺人事件に関する話を聞き、それがもとで事件に関わっていくという巻き込まれ型のミステリ作品です。

    「ルーク・フィッツウィリアム」は、ロンドンに戻る途中の列車内で偶然乗り合わせた親切そうな老婦人「ラビィニア・ピンカートン」から、ウィッチウッド村で起きている連続殺人事件の話を聞く… 彼女は、自分が住んでいる村で連続殺人が起きていること、「ハンブルビー医師」が次に狙われそうなこと、そして、その犯人と目される人物をロンドン警視庁に伝えに行く途中だった、、、

    別れ際彼女は「殺人はとても容易なんです。だれにも疑われなければ。じつはその人物は、だれも疑ってみようともしないような人なんです」と言い、人ごみに飲まれていった… 翌朝の朝刊で「ルーク」は、昨日の「ピンカートン夫人」が車に轢き逃げされて死亡したことを知り驚いた。

    一週間後にはウィッチウッド村の「ハンブルビー医師」が急死したとの死亡記事が新聞に載ったことから、「ルーク」は事件に興味を持ち、老婦人の住んでいた村に向かう… 村では事故などにより5人が亡くなっており、事故死や病死となっていたが、状況を確認するうちに「ルーク」は殺害だったとの疑惑を抱く、、、

    さらに調べを進めるうちに開業医「ジョフリー・トーマス」、事務弁護士の「アボット」、退役軍人の「ホートン少佐」、骨董屋の主人「エルズワージー」が容疑者として浮かんでくるが、一人に対する動機は強くても、全員となると動機がほとんどない人間を殺したことになったり、可能性はあるものの証拠もなく、4人とも犯人とする決め手はなかった… 捜査は完全に行き詰ったかに思えたが、視点を変えて見ると全く新たな人物、地元の名士である「ゴードン・ホイットフィールド卿」が容疑者として浮かびあがってきた。

    「ルーク」は「ホイットフィールド卿」に注目して、これまでの事件を再検証すると「ホイットフィールド卿」が犯人と思われる状況証拠や可能性が次々に出てきた… 犯人は彼に間違いないと考えた「ルーク」はロンドン警視庁に報告し、救援を得るためにロンドンに向かった、、、

    でも、真犯人は別な人物だったんですよねぇ… 「ルーク」がウィッチウッド村を離れた後、「ブリジェット・コンウェイ」が真犯人と対峙して危機に陥ります。

    真犯人は「ブリジェット」を殺害し、「ホイットフィールド卿」を殺人犯と仕立てるためのトリックの仕上げをしようといしていたんですね… 女性の恨みは怖いです、、、

    まさか、あの老婦人が真犯人とは… 『ミス・マープル4 殺人は容易だ』は、登場人物の人格や、犯行の動機が大きく変えられていていたので、全く別な物語に感じられましたね。

    ウィッチウッド村という限られた空間の中で物語が進むとはいえ、登場人物が多く、読みながらやや混乱する部分もありましたが、原作の方が断然良い作品に仕上がっていたと思います… 「アガサ・クリスティ」らしさが愉しめる作品でした。


    以下、主な登場人物です。

    「ルーク・フィッツウィリアム」
     元植民地駐在警察官

    「ジミー・ロリマー」
     ルークの友人

    「ゴードン・ホイットフィールド卿」
     ウイッチウッド住人。週刊誌発行人

    「ブリジェット・コンウェイ」
     ジミーのいとこ。ホイットフィールド卿秘書

    「リヴァーズ」
     ホイットフィールド卿の運転手

    「ラビィニア・ピンカートン」
     ウイッチウッド町の中年婦人

    「ホノリア・ウェインフリート」
     図書館員

    「ジョン・ハンブルビー」
     ウイッチウッドの医師

    「ローズ・ハンブルビー」
     ハンブルビーの娘

    「ジョフリー・トーマス」
     ウイッチウッドの医師。ハンブルビー助手

    「トミー・ピアス」
     ウイッチウッドの悪童

    「ピアス夫人」
     煙草屋経営。トミーの母

    「エイミー・ギブズ」
     ウェインフリート宅お手伝い

    「ジム・ハーヴィ」
     ウイッチウッドの自動車修理工

    「ハリー・カーター」
     居酒屋セブン・スターズ亭主人

    「ホートン少佐」
     退役軍人

    「リディア・ホートン」
     ホートンの妻

    「アボット」
     ウイッチウッドの事務弁護士

    「エルズワージー」
     ウイッチウッドの骨董屋

    「アルフレッド・ウェイク」
     ウイッチウッド教区牧師

    「ジョウンズ」
     ウイッチウッドの銀行支配人

    「バトル警視」
     ロンドン警視庁の警視

  • #赤背表紙のクリスティーを再読するプロジェクト 023

    一連の不慮の事故死が実は連続殺人かもしれないと気付いた田舎町の老女が、交通事故に遭って死んでしまう。偶然この件に巻き込まれた植民地帰りのクールガイが乗り出し、謎解きの途中で才色兼備なヒロインに惹かれてしまう話。ポアロ不在マープル不在の典型パターン。

  • 人間の「狂気」を如実に表現した作品。
    本当怖いものですよ。
    そのために大量殺人をやらかしたんですから。

    ちなみに今回は
    犯人は途中で凶行に及ぶので
    推測というか露見しますので
    わかってしまいます。

    大量殺人は女史にしては
    めずらしいかも。

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