- Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150747039
感想・レビュー・書評
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クリッブ部長刑事は、すでに死刑が確定している毒殺事件の再捜査を押しつけられる。極秘捜査のゆえにたちはだかる難関の数々。そして、死刑執行の刻限が迫る。
ヴィクトリア朝時代のスコットランド・ヤードを描くビンテージ・ミステリ。ラヴゼイのなかでもかなり好きなシリーズである。今回は重要なシリーズキャラクターであるサッカレイ巡査が登場しないのがちょっと寂しいが、それでもやっぱりおもしろい。死刑執行人の絡み方など、絶妙。
ミステリは虚構を楽しむためにあるので、実人生からできるだけ遠い話が望ましい。生々しい話、苦手だし。その意味で、歴史を舞台にするのはたいへん趣旨に適ったことだと思う。それに、歴史ミステリにはハズレが少ないような気もするのだ。ある程度の力量がないと書けないからか。単に歴史が好きなのか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
地味ながらさすがラブゼイというべきか。
自白し死刑執行を待つ女ミリアム。ある決定的事実からクリップ部長刑事が再捜査するお話。
『幻の女』彷彿とさせる…なんてことはなかった。
2作目ながらラブゼイのある特徴がわかってきた。こういうのがお得意なのね…
目が眩むような邪悪を潜ませ、ユーモアミステリとして包み込んだひねり具合ったらもう。
時代に触れることが好きなのでヴィクトリア朝が生かされているのもまた堪らない。
犯人の企みに死刑執行人がクロスしたまさにその時!!
生ハムメロン的なカタルシスが…(なんのこっちゃ) -
本日、ピーター・ラヴゼイのマダム・タッソーがお待ちかねを読了しました。
内容は、自白し死刑囚となったミリアムが犯した殺人事件について、彼女が殺害できなかったとかんがえられる写真が送られてきた。クリッブはその調査について乗り出すが、調べていくうちにミリアムという女性や夫などについて、新しい事実が浮かび上がってくるが――。
まず作品について触れる前に、末尾の解説から下記の文を引用させていただきたい。
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ゲームから小説へ。簡略にいえば、これがここ数十年の英米ミステリの流れである。~中略~ その中で、ゲームでなければ面白くないと主張するのは例えていえば、現代のプロ野球において「ピッチャーは先発完投型でなくてはダメだ。連投もやらなアカン。リリーフなんか無用」と唱えるのと同じぐらい、古めかしく、みすぼらしいことである。
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この作品を読んで思ったのは、まさにこのことでした。
これまで、現代英ミステリを読んでいてほとんどの作品に対して、退屈さを感じてきました。それは、まさにこの文章が表している通り、意外性のある結末が据えられておらず、ゲーム性が失われているからなんだ、というのを本作で気付き、また、これが退屈してしまう原因なんだなと思いました。
とはいえ、本作はそれがあまりない作品でした。クリッブ部長刑事が事件の内容について収集し、それをまとめあげた結末へとなるスタイルですが、それぞれの人物の会話だったり、描写が丁寧で読みやすかったです。
上述したとおりのことがあり、意外性についてはイマイチだったりするのですが、最後の一手についがこの作品の集大成であり、伏線がちょこちょこと張られているのだなと気づきました。これを現代英ミステリで気づいたのが初めてで、ちょっと驚きました。
こつこつと情報収集するタイプの作品でしたが、読みやすく面白い作品でした。 -
厚くて、読んでいる途中で話を見失った。時間のあるときにじっくり読みたい。
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例によって、エリザベス朝時代のイギリスを舞台にしたミステリ。今回は、毒殺とか死刑囚とか監獄とか蝋人形とか、ちょっとおどろおどろしいネタが盛り合わせてあって、その不気味さがなかなかいい味である。怖いというわけではなく、そこはかとなくブラックなユーモアが漂ってくる感じもいい。
犯行を自白し死刑が決定した美女。彼女が死刑になる前に無実を証明し監獄から救い出すために、ごくかすかな手がかりをたくり寄せていく、冴えないけれど天才的な刑事。ある意味ありがちな設定なのかもしれないけど、エリザベス朝を舞台にしているだけに新鮮に感じる。
なんて余裕を持って、まあいわば才人ラウゼイの「お手並み拝見」みたいな気分で読んでいたのだけど、いやあ、結末でひっくり返った。トリックというほどのトリックではないのだけど、見事に盲点にはまってしっていたのは確かだが、それ以上に意表を突かれたのは、プロット自体に密接に関わっている○○な犯人だろう。
偶然の皮肉みたいなひねりも見事に決まっていて、そういわれてみれば、本のタイトル自体が、みごとにはまっている。
傑作の名に恥じない印象的なミステリだと思う。
2009/9/10 -
クリッブ刑事 ヴィクトリア朝1888年 ロンドン