苦い林檎酒 (ハヤカワ・ミステリ文庫 91-4)

  • 早川書房
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150747046

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  • 1964年10月、私は大学の講師をしていたがある日アリスという若いアメリカ女性が訪ねて来て、戦争中死罪となった父デュークについて教えてほしく、父は無罪にちがいないという。戦争中のイギリスの片田舎で起きた殺人事件。わたしの遠い日の出来事がにわかに新たな真相を見せ始める。

    もしかしたら真犯人はこの人? いやあいつか? といった二転三転のストーリーテリングはサスペンスフルなのだが、う~ん、デュークがあまりにもかわいそうだ。こんなのありか、という感情が勝り、読後感はなんかしっくりこない。が、殺された者の頭が林檎酒に入って、発酵で溶けて苦くなった、なんて八つ墓村ばりの映像シーンが頭に浮かぶ。ドラマにしたらおもしろいのかも。

    私は1943年9月にロンドンの学校が空襲にあったので校長の命令下サセックスの郊外の農家に疎開した。疎開したリンゴ農家にはバーバラという20歳の娘がいて、駐留していたアメリカ軍の兵隊が農家にやってきていた。わたしはバーバラには初恋ににた思慕を抱き、アメリカ軍兵士のデュークには兄にも似た親愛の情を抱く。

    そんな中農場で村の青年クリフの殺害事件が起きる。私は納屋でバーバラがクリフに「いじめられている」のを見て、母屋に知らせに行く途中デュークに会い知らせる。クリフを納屋でみた少年として事情聴収をうけるが、犯人はデュークとなりデュークは死刑になってしまう。・・その娘がアリスだったのだ。母が最近死に、その事実を知ったという。

    物語は押しかけたアリスと私が当時の人に聞き込みをしながら進む。当時9歳だった私。大人になった今、当時にはわからなかった「大人」の人間関係が見えてくる。

    バーバラに恋心を抱く村の青年クリフ、バーバラの友人サリー、同じGIのハリー、農家の主ジョージ、妻のモリー、兄のバーナード。これらの人間模様。真相を知ると、著者は少年の日の思慕が幻影に変わる時を描いたのか、と思う。

    アリスは少年のあなたがバーバラと父を理想化していて、それがクリフに破られたので、撃ったのはあなただったに違いない、といい。バーバラの親友サリーは実はバーバラは・・ と言い、デュークといつも二人でいたGIが実は・・ と、そういう関係?というつながり。


    1986発表 イギリス
    1987.9.30発行 0988.12.31第4刷 図書館

  • 『偽のデュー警部』がやたらと面白かったラヴゼイのミステリ。舞台は60年代イギリスの片田舎。少年時代、疎開先の牧場で起こったある悲劇的な事件。ある日突然、大人になり、大学講師となった主人公のもとをアメリカ人の若い女性が訪ねてくる。どうやら彼女は、その「事件」で彼の証言がもとで犯人と疑われ、絞首刑となった進駐軍兵士のひとり娘らしい。事件の真相を明らかにしようとする彼女の強引さに負け、封印したはずの二十数年前の記憶をいやいやながら辿らされるはめになる男……。慎重派で頑固なイギリス人男性vs奔放で強引なアメリカ娘、そんな対照的なふたりの「闘い」こそがこの作品のツボ。タイトルにある「苦い」は、事件が発覚するきっかけとなったシードルの味と、孤独な少年の心模様とをかけあわせたダブルミーニング。読了後は、もちろんほろ苦い気分に。

  • 単純ながらも、子どもの目線と大人の目線の違いを一番ドギツいところでハッキリと表した良作。さすがに頭蓋骨入りの林檎酒はキツいわ。

  • ピーター・ラヴゼイの本は結構前に数編読んだことがあるのですが、どれを読んで何を読んでないのか分からなくなり、あらすじを覚えているものも無くなり、かなり遠ざかっていた作家です。

    久しぶりに読んだこの本は本格系。
    だからと言って「犯人はこの中いる!」じゃないです。
    なにしろ20年前の事件を再捜査しているんで。

    面白いです。

  • 18禁エロビデオを初めて視聴したのは・・
    アレは何時であったろうか。
    視聴を終えた後に「生命の誕生の営みって素晴らしい!」
    などと目頭から落涙して感動するのか。そう、それは
    日教組教育に洗脳された唯物論者だ。
    或いは
    「自分自身の身体の一部が HotHot!! と我知らず
     ただひたすら衝動に身をまかせトイレに駆け込むか。
    実は後者は脳みそマトモに機能している健全な「おのこ」
    であり、それは古来よりの益荒男というものだ。

  •  バースを舞台にしたピーター・ダイヤモンド警視シリーズ、ヴィクトリア時代のエドワード皇太子が探偵役となるシリーズ、クリッペン事件に題材をとった「偽のデュー警部」などの歴史モノで有名なピーター・ラヴゼイが、1989年に発表したミステリ。第二次世界大戦中、サマセットの田舎に疎開していた9歳の少年セオドア。目撃者としての彼の証言がもとで、アメリカ人GIが殺人犯として死刑になってしまう。20年後、大学講師となったセオのもとへ、GIの娘アリスが父の無罪を証明しようと突然訪ねてくる。勢いに押され、はからずも過去の事件の真相を追うことになったセオ。アリスとともに調べていく過程で、次々に思わぬ事実が発覚、真実が彼の記憶と違う様相を見せ始める。
     舞台となったサマセットはリンゴや林檎酒(サイダー)の名産地。緑豊かな田園風景や、林檎酒の製造方法など、のんびりしたイギリスのカントリーサイドの描写が、おどろおどろしい事件の清涼剤となっている。

  • 初めて読んだラヴゼイです。
    ストーリーや設定自体は、大掛かりなものではないですが、文章表現で読まされました。
    軽妙洒脱というほどは軽くもなく、くどすぎもせず。こういう捻りのきいた言い回し、台詞回しは好きです。他の作品も読んでみたいですね。

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