ナイチンゲールの屍衣 (ハヤカワ・ミステリ文庫 シ 1-5)

  • 早川書房
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (511ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150766054

感想・レビュー・書評

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  • 『女には向かない職業』でチラと出て強烈な印象を残したダルグリッシュ警視もの。看護婦養成所で起きる殺人事件。部下に厳しい警視の捜査は意外にも好感度高い。自作の人物関係図必要だったが見事な描写と重厚なテーマで読み応え充分。

  • なかなか読み進まず…
    登場人物の名前にこんなに手こずったのは久々。笑
    病院併設の看護婦養成所ナイチンゲールハウスでの殺人事件。
    トリック云々というより人物の心情描写が見事。
    女性ならではの視点、かすかな引っかかりも言語化できる才能。だからジェイムズの作品はやめられない。
    読むまで見まいと決めていたドラマ“刑事ダルグリッシュ” 録画をやっと見られるのが嬉しい♪

  • 残念ながら私にはイマイチ。
    他の作品に比べてなぜか読みづらく、ペースが上がらず中弛み。濃密な人間ドラマが持ち味の作家だが、その人間関係が描かれる前に事件が立て続けに起きたせいなのか、いつもよりダルグリッシュが青臭かったからなのか、はたまた微妙な部下のせいなのか…。
    好きな作家なので、後期の作品を中心に読もうと思う。

  • 何回も読み返したくなる名言がある。ただの謎解きじゃない。

  • 女の園、しかも働く女の園ときては、
    ダルグリッシュ警視の本領発揮だろう。
    いや、著者P.D.ジェイムズの本領発揮と言うべきか。
    冒頭の看護婦養成所の視学官の描写は、
    めまいがするほど素晴らしい。
    それと、婦長とダルグリッシュ警視の最初の会話の場面も。

    二番目の被害者の妊娠が動機だと思い込んでいたので、
    全く謎解きはできていなかった。
    しかも、第三の殺人には驚くばかり。
    そうくるとは思わなかった。

  • 長かった!人物名多すぎて頭に入ってこなかった。独身時代、この作者さんが好きで読み漁っていたのに、まったく頭に入って来なくて年のせいかなと怖くなりました。
    トリックもよくわからないし、翻訳の仕方も少し古い言い方だったり、余計な描写が多くて前に出てきたトリックを忘れてしまったり。
    あー疲れた。あんなに好きだったのに…残念。

  • 予想を大きく上まわって、秀逸な面白さだった。解説に、PDジェイムズの重苦しさをあげつらっている権田氏・・それはない‥そこが彼女の魅力なんだとますます惚れ込んで行きそう。

    ナチスドイツが支配する第二次大戦下のドイツにはさまざまな人種が入り込み、戦後それぞれの国へ戻って行った・・働いていた征服を隠し、おのれの身分すら偽り・・という話は結構聞いていた。文章も構成も清冽な知的香り、次第に2件の殺人事件の真相が見えてきて、犯人が浮上する中での不調と詩人警部ダルグリッシュとの長い会話の何と驚く内容である事か。
    第3の殺人のからくりを語る男と女の昏い秘密には唖然。

    ラストで綴られる「破壊されて行くナイチンゲール・ハウス」・・50年前に壊されるべきであり、看護婦養成所たるには全くふさわしくなかったという一文が全てを語っている気がした。

  • アダム・ダルグリッシュ警視シリーズ第4作。

    地方病院付属の看護婦養成所で相次ぐ学生の変死事件。自殺なのか他殺なのか判然としないなか、養成所内の複雑な人間関係がしだいに浮かび上がる。

    シリーズ前3作とくらべて質量ともにアップした。ストーリーの流れも不自然さがなく、さりげなく配置された伏線が最後に効果的に発揮する。ミステリ要素以外にも、さりげなく提示される人間ドラマが印象的。ちなみにダルグリッシュは主任警視に昇進している。

  • CWA賞受賞でジェイムズ初期の代表作。本の厚みも1.5倍くらいになり、今のジェイムズの作風はここから本格的に形成されたと云える作品。

    看護学校で起きた殺人事件をダルグリッシュ警視(実は『不自然な死体』で既に警視に昇格していた)が捜査に乗り出し、解き明かす。今まで名門の屋敷や休暇で訪れた村など、限定された場所ではありつつも、黄金期の本格をそのまま踏襲する実にオーソドックスな舞台設定であったが、本作以降、教会、出版社、原子力発電所など、舞台は色んな職場を舞台に、そこで働く、もしくは関係する人々の隠された軋轢を解き明かすという趣向に変わっていく。このような舞台設定を採用していくことで、それ以前の作品と違ってくるのは、物語が一種、業界内幕物となってくるところだろう。元々ジェイムズは確か病院の事務か経理をしていたという経歴の持ち主で、最初にこの看護学校を舞台に選んだのは自身が詳しい業界だったからというのは想像に難くない(その後調べてみたら、2作目の『ある殺意』で既に精神病院を舞台にしていた)。これはセイヤーズが自分がコピーライターとして勤めていた広告業界を舞台にした作品を書いたのと合致する、と『不自然な死体』に見られるジェイムズのセイヤーズ崇拝に拍車を掛ける理由付けとして書きたいところだが、概ね作家というのは自分の詳しい世界を舞台に作品を書く傾向があるのでこれはこじつけにすぎるというものだろう。

    CWA賞受賞ということで、では何が変わったかというと特にそれほどの劇的な変化は見られず、従来から最たる特徴であったジェイムズの風景描写、人物描写、心理描写が登場人物がそれまでの作品と比べて増していることで、その分増えた結果、このようなページ数の増大に繋がったという傾向が強い。とはいえ、そこに介在する人間の悪意についてはさらに露骨に書かれ、実際その心情を登場人物がぶちまけるシーンもあり、実際に直面するとかなりドン引きだろうと思われる。
    こういう誰もが殺人を犯す動機があるという作品は犯人当て趣向の作品では意外性を伴わない危険性があり、本作もそう。特に動機面についてはごく普通であり、CWA賞受賞作という前知識から期待感を持って読むと、ちょっと肩透かしを食らう感はある。実際私はそうで、それが上の☆評価に繋がっている。やはり『皮膚の下の頭蓋骨』のような、目から鱗が剥がれるような動機などあれば、もっと評価は上がるのだろうけど、初期の作品だからしょうがないか。

    物語の閉じ方は降り積もった悪意が解き放たれる思いがする。知りたくない人もいるだろうから詳しくは書かないが、既にぎくしゃくして、いつ壊れてもおかしくない状態だった関係性を一旦清算し、新たなる出発を予感させる。これはその後、ジェイムズ作品で一貫して取り入れられている結末だ。
    とまあ、『皮膚の下の頭蓋骨』、『罪なき血』と後の傑作を先に読んでしまったがためにその後に読んだダルグリッシュシリーズがこのような評価になってしまうのは残念なところ。原本の刊行順で読めばまた感想も変わったかもしれない。

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