クリスタル (ハヤカワ・ミステリ文庫 ウ 8-10)

  • 早川書房
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (584ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150796105

感想・レビュー・書評

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  • 本書は、アンドリューヴァクスによる、バークを主人公とするシリーズの11作目である。第1作の「フラッド」が書かれたのが1985年のことなので、随分と古いシリーズだ。ただし、作者のアンドリューヴァクスは、2021年に亡くなっており、バークシリーズの最終作である"Another Life(日本語未翻訳)"が書かれたのが2008年のことなので、シリーズが終わってからでも既に15年が経過している。私がシリーズを読んでいたのは、1990年代後半(たぶん)のことであり、その時にはシリーズ9作目の「嘘の裏側」まで読んでいた。かなり好きなシリーズだったが、「嘘の裏側」以降もシリーズが続いており、日本語でも作品が発売されていることを最近知り、あわてて、10作目の「セーフハウス」と、この11作目の「クリスタル」を読んだのであった。
    20年以上ぶりのバークシリーズは、以前読んだものとかなり変わっているのではないかと感じたが、どういう風に変わったのかは実際には分からなかった。それを、本書の「解説」で説明してくれていた。
    まず、扱うテーマが広くなっている。作者のアンドリューヴァクスは、生前、作家であると同時に、米国の弁護士であり、児童虐待に関しての事案を主に扱っていた。彼は児童虐待を憎んでおり、このシリーズの初期作品では、児童虐待がテーマとなっており、主人公のバーク自身も、子供の頃、児童虐待の被害者であるという設定となっていた。シリーズ初期のストーリーはシンプルで、決して正義感からではなく基本的には報酬を得るために、主人公のバークが児童虐待を行う悪党を追いつめていくというものであった。ところが、私が最近読んだ10作目の対象はネオナチ、この11作目は児童虐待の要素もあるが、ホモセクシャル・ゲイ虐待団体が相手となっている。
    また、ストーリーが複雑になり、やや話として分かりにくくもなっていると思う。更に、本作では、初期作品に登場していた、ストレーガーやウェズリが重要な役割を果たすことになっている。ストレーガーやウェズリのキャラクターを理解していなくても、ストーリー理解としては問題ないのであるが、深くは物語に入って行くことは難しいのではないかと感じる。20年以上ぶりとは言え、私自身はバークシリーズのこれまでの全作品を読んでおり、作品全体を貫くトーンを理解できているが、これまで、バークシリーズを読んだことのない人が、このあたりの作品から読み始めるのは、ハードルが高いように感じた。
    話が分かりにくい、設定に少し無理を感じる、という難点は感じてしまうが、昔から読んでいる人間にとっては、全体を流れる暗さと緊張感を本作からも感じることが出来る。相変わらず好きなシリーズだ。残念ながら、日本語に翻訳されているバークシリーズは、次作の「グッド・パンジイ」が最終話。これも、近いうちに読もうと思っている。

  • 久々の女性キャラをタイトルとした作品。面白かったハズ。

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