エデンの東 新訳版 (4) (ハヤカワepi文庫)

  • 早川書房
4.32
  • (44)
  • (27)
  • (12)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 270
感想 : 34
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (441ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151200489

作品紹介・あらすじ

アロンがアブラと親密になるかたわらで、孤独なキャルは深夜の徘徊を繰りかえしていた。彼は家族の暖かさを求め、父の愛に飢えていた。しかし、アダムは…。やがてキャルは、死んだと聞かされていた母キャシーの生存とその秘密を知る。それは、双子に襲いかかる大きな悲劇の始まりだった。父子の葛藤はなぜ繰り返されるのか?人間の自由な心とは何か?著者自らが最高傑作と認める大河巨篇、ここに堂々完結。(全四巻)。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • もう何年になるだろう、読みたい、読みたいと思っていた『エデンの東』を読んだ!全四巻。ハヤカワのepi文庫の新訳で、やはり文字が大きいのがありがたい。

     簡単にまとめれば、父と子、兄弟、家族との葛藤。母の存在、悪女。青春の光と影。若さゆえのいらいら。善と悪。暴力と叡智。老いの哀しみ。

     聖書「創世記」の「カインとアベル」の物語が基調にあり、その物語の文がそのまま出てくる。そしてそのわかりかたがこの長い物語の骨子。個人的には人間は「カインの末裔」であるという意味がわかったのが感動だった。

     ケイトすなわちキャシーという毒婦がすごい、だが惹かれてもしまう。この世のわけのわからないとんでもない事件の起こるわけが、少し解ったような気がする。

     リーという中国人の召使がいい、賢い。アブラという乙女が大好きになったのもうなずける。ちょっと「日の名残り」を思い出すが訳者も同じとは...。

     上記の人物は脇役。物語は、トラスク家とハミルトン家の人々の壮大な人間模様。作家スタインベックの自伝的要素も含まれ、圧巻である。

     帯に「この物語であなたは変る」とあり、おおげさなと思えど看板に偽りなし。ひたひたと胸打つ文章に、人間のいとなみの不思議さをあらためて考えさせられる。訳がいいのかもしれない。

  • 米国カリフォルニアを舞台に、19世紀から20世紀前半までの約100年に渡るある一族における各世代の父と子の葛藤を描いたファミリーサーガとして知られるけど、同時に兄弟、親友、そして男と女の間にある葛藤をも描いていて、米国という国の精神のあり方もここにあるのかな、などと読んでいて思った。第4部だけでなく、全部を映像で観てみたいし、その時には映画化ではスルーされたリーのこともしっかり描いてほしいと思ったけど、もうすでに実現してるか、スケールの大きさで実現不可能かのどちらかなんだろうな。

  • スタインベックが自ら最高傑作と認めるトラスク家トハミルトン家の物語、最終巻。
     この巻ではハミルトン家の人はあまりでてこず、アダムとラスクとその息子、アロンとキャルの物語である。キャルは父親の愛を得たくて、ビジネスで成功するが、それでも父に認められない。一方アロンはキリスト教にそまり、あくまで純粋であろうとする。そして自身の純粋でない部分を嫌悪する。そう考えると二人とも、現実は十分恵まれているのに、もっと遠くへ、もっと理想へと突き進もうとする。そしてそれが、悲劇へと繋がっていくという物語である。
     二人の母親のキャシー(ケイト)の悪女ぶりが物語の終焉で発揮されるのかとおもったが、あっさり自殺してしまった。
     今日、スタインベックの怒りのブドウやハツカネズミと人間に比べて、あまり評価が高くないようだが。この作品は父親の愛を得られるかという問題と、アメリカ人が追い求める規範は何かいう二つの問題が扱われいる。
    アロンはキリスト教と無私という崇高な精神に向かい、キャルは現実的にビジネスの成功にむかった。それはどちらも父の望むものではなかった。
     召使のリーが賢く、また生活を楽しむ術をしっており、教養もあって物語を重奏的にしてくれている。
     悪女キャシーの人物がもう少し、悪女なりに魅力があるように描ければ作品の評価も上がった思われる。
     この作品は19世紀末から20世紀初頭の話だが、電話や車、戦争、列車輸送など現在にも通じる時代背景で古さを感じさせない作品であった。

  • 読了
    何か 大きな物語 が 始まりそうで 
    始まらないまま 終わっていく
    それが 人生か...

    多くの学びがあった

    人生の早い段階で読むべき

  • ティムシェル-汝意思あらば可能ならん。

    謹厳実直なアダムと、頭はキレるが邪悪な側面しか持たない(人間の善を信じられない)キャシーとの間に生まれた、キャシーに似た見た目だが純真無垢なアロンと、キャシーに似た狡猾さと悪意を持つキャル。ただしキャルは善も抱えており、その狭間に揺れる。
    キャルが一人でケイト(キャシー)の店に行き、「自分の中にある意地悪さは自分のもので、あなたから受け継いだものではない。俺は俺で、あなたはあなただ」と知り、ケイトを恐れなくなるシーンが一番好き。
    アロンは愛を存分に受ける子で、アブラと恋に落ちるが、純粋すぎるあまり描く物語から抜け出せない。アダムはアロンを愛していて、キャルは愛を受けていないと感じていた。
    キャルがアダムに溜めたお金をプレゼントしようとするが善意を踏み躙られた(アダムが不器用がゆえ)ことで憎悪が制御できなくなり、キャルはアロンをケイトの店に連れて行く。そこで母を知ったアロンは怒り狂い、荒れきったあげく軍隊に入り、死んでしまう。アダムの卒中も重なり、キャルは罪の意識に苛まれるが、リーに許しを与えるよう請われたアダムが、遺言でティムシェルと残し永眠するところで話が終わる。

    話を通して、リーがいい味を出している。
    人の心、自由とは何か、壮大に描かれていて、すごく面白かった

  • 人類初の殺人として聖書に書かれるカインとアベルの物語が基礎にあるというので、兄のキャルが成長途中から不穏な存在として配されていた。
    けれど弟のアロンだけが愛され、自身は誰からも疎まれるため、計算高さを磨き、悪を気取るようになっても、キャルは父も弟も召使のリーも家族として愛し続けた。
    その思いは悪一筋だった母キャシーにすら向けられる。
    父とも理解し合い、キャシーにも見様によっては救いが訪れ、大団円に終わるかと思いきや、キャルがよかれと思ってしたことが裏目に出、噴出した彼の悪徳の情がアロンの柔らかな心を射抜いてしまう。
    文学としての重みがありながら娯楽要素にも富む良作。同著者の作品では一番読みやすい。
    聖書の素養があれば、より深く物語に入っていけたのかもしれない。なくても、存分に楽しめたけれど。
    本巻より前の巻で詳述される聖書の用語「ティムシェル」が一番大切な場面で使われるので、その時に書かれた解釈をもっときちんと読んでおけばよかったと後悔。
    図書館に返しちゃったから、読み返せず。さらっと読んでよく覚えていなかった……。難しかったし。

  • 一生大切にしたい本。
    何か辛いことや悲しいことがあった時、そうじゃなくても定期的にこの本を読むと思う。
    1〜4巻、ページを捲る手がなかなか止められなかった。読み終わるのがとても寂しかった。

  • 映画で一度見てはいたが、原作を読んで、より心に残る一冊となった。
    兄弟の葛藤、大人になると言うこと、自己意思による生き方、とても共鳴させられた

  • 原書名:East of Eden

    著者:ジョン・スタインベック(Steinbeck, John, 1902-1968、アメリカ・カリフォルニア州、小説家)
    訳者:土屋政雄(1944-、松本市、翻訳家)

全34件中 1 - 10件を表示

ジョン・スタインベックの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×