一九八四年〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫)

制作 : トマス ピンチョン 
  • 早川書房
4.09
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本棚登録 : 15826
感想 : 1229
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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151200533

作品紹介・あらすじ

"ビッグ・ブラザー"率いる党が支配する全体主義的近未来。ウィンストン・スミスは真理省記録局に勤務する党員で、歴史の改竄が仕事だった。彼は、完璧な屈従を強いる体制に以前より不満を抱いていた。ある時、奔放な美女ジュリアと恋に落ちたことを契機に、彼は伝説的な裏切り者が組織したと噂される反政府地下活動に惹かれるようになるが…。二十世紀世界文学の最高傑作が新訳版で登場。

感想・レビュー・書評

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  • 暴力はただの手段で、その最終的な目的は憎悪による世界だった。ウィンストンは暴力や屈辱に負けて、結局は党に屈したのだ。そして最後に勝利、誰かへの権力増加によって、喜びを感じ、ビックブラザーを愛するのだった。党の目的としていたような人となった。彼らは権力を保つために全てを行い、権力を及ぼすことを生き甲斐にしている...

  • 2024年の自分への課題図書。
    図書館所蔵の旧版で読了。
    なかなか読み進められず
    しかも頭に入ってない部分多し。
    いずれまた新訳を再読しよう。
    解説も読みたい。

    1984年という年がなぜ選ばれたのか
    わからないままだった。
    1946年に執筆開始。

    政治や思想への関心が低下している現代
    資本主義がより巧妙なかたちで社会を操作している
    のかな。

    「党の世界観は、それを理解できない人たちに
    最も巧妙に押し付けられていたのだ」

  • 本当によくできたディストピアの設定。愛ではなく憎悪を基本とした、永遠に未来がなく、過去が改変され、現在だけが続く世界。イングソック、二重思考、ニュースピーク、ビックブラザー、テレスクリーン、思考警察などの仕掛けは、非現実的ながらも、そういう世界線もあったのかも、と思わされた精巧な設定

  • 普及のSF小説。何故か世の中が不況になると売れる本。

    今読むと古臭く、後半の方では物語が破綻しているが、この本の初版はなんと1949年。
    監視社会は今の防犯カメラ、情報統制はSNS。そんな今を70年も前に考えついているこの発想力とデストピア。色褪せない魅力を感じさせる1冊です。

  • 2024年、8冊目です。

    2024年1月以降に、サイトへの登録が上手くいかず、
    読了した本を登録できなかったので、まとめて登録する。

  • 1949年に刊行されたイギリスの作家ジョージ・オーウェルのディストピアSF小説。主人公ウィンストン・スミスは国家によって徹底的に監視・統制された社会で、歴史の改竄をする従順な役人として暮らしながらも、社会に対する疑問を強く意識するようになっていく。

    巻末のトマス・ピンチョンによる解説は鋭く要点をついていて、この救いのない物語の理解に大いに助けになった。
    殆ど予備知識なく、監視社会が舞台のSF小説くらいの軽い気持ちで読みはじめたので、ここまで重い内容だとは思ってもみなかった。それでも最後まで興味深く読めたのは、この小説が単なる反全体主義、反共産主義のSF小説ではなく(未来の予言でも断じてなく)、人間の弱さや脆さ、人間社会の残酷さなどの根本を描いているからだろう。名作が時代を超えて読まれるのは普遍性があるからだが、この小説が持つ肉体的な痛みや快楽、圧倒的な暴力は、なかなか古びることはなさそうに思う。

    普段我々が眼にするような娯楽作品は映画にしろ小説しろ何かしらの救いが示されているものだが、この小説は完膚なきまでにそんなご都合主義を叩き潰してくれる(一応、巻末の付録の部分がこの狂った世界が過去のものになったことを暗に示してくれてはいるが)。途中で兄弟同盟が助けにくるのでは?という読者の期待は最後まで叶わない。完全なる個人の敗北。ここまでやる必要がなぜあったのか考えさせられる。

    書かれた時代も戦後すぐで著者が社会主義でリベラルということ、結核を患っており(執筆を9ヶ月休まなければならないほど)、著者にとっても精神的にも肉体的にも辛い時期だったと思う。肉体的な痛みが精神にどう影響するかは、実際に感じながら執筆していたのではないか。特に第3部は恐ろしい執着心を感じる。もしかしたら自らの生への執着に、自分でも驚いたのではないだろうか。戦争のあまりの悲惨さに、暴力の前ではどんな思想も志も無力だと悟ったのだろうか。それとも口では平和を謳い、体は権力争いをする政治家の二枚舌、『二重思考』に対する激しい怒りだろうか。

    何度も登場する童謡の歌詞、党のスローガン、テレスクリーンから流れるプロパガンダは、読者に催眠をかけるようでもある。また美しいものと醜いものが、善と悪にそのまま書き分けられているのもあまりにも意図的すぎる。あくまでこの小説はフィクションであり、『動物農場』のように構造をわかりやすくした寓話的小説として描かれたように思う。

    解説に書かれていたように、この小説が共産主義への憎悪を掻き立てる“あの本”的に利用されているのは皮肉だ。政治的な単純な構造として読まれてしまうのは、かなり勿体無く感じる。読み方次第では薬にもなる毒だと思う。近年の政治家の発言や、IT技術などを予言しているという見方は、分かりやすい構図ではあるが適切ではない。もっと大きな視野を持った、人が生きるとは何かの切実な問いだと思う。

    徹底的な残酷さを描いたうえで、どう生きるかを問いかけてくる。物質的に破壊されるよりも、文化的に破壊される方が恐ろしい。生活は効率ではない。豊かさは生産性ではない。

    どんな理想的な国家でも一度戦争が起こり、銃を持った兵士が侵略しにくるとなったら、撃ち返さざるをえない。昨日まで平和主義だった民衆は銃をとって強力な指導者を求める。ウクライナの報道から感じる虚無感。人間の弱さは変えられない。それでも諦める訳にはいかない。別にウィンストンのように心まで破壊された訳ではないのだから、どんな時代になっても何とか正気を保って生きなければならないなと思わされた。

  • h10-図書館2022/05/17ー期限延長6/7再度借りる06/04 期限延長6/25 未読 返却6/19kindle本で読む

  • ただただ難しい。
    個人的な感想は
    『最高に胸糞本』です。

  • なんか有名だったので読了。
    めちゃくちゃ好きな作品だったのでもっと早く手を出しておけばよかったと若干後悔すらしている。
    このお話のタイトルは1984年だが今現在行われている政策やブームにも近しいことが言えるのではないかと思えることが多く、ビックブラザーも私たちが特定の「なにか」として認識していないだけで着実に私たちの過去を歪めていっているのではないかと思った。
    個人的に特に気になったのは『反セックス主義』と『ニュースピークによる言葉の短縮』の2つ。
    『反セックス主義』では快楽の為の性行為を禁止し人工受精を推奨していた。作中でこの政策によって起こっている取り上げられていたのは「性欲の不解消による鬱憤を特定の人物・物への敵対行動に向けさせることで大衆をコントロールすること」だったが、私はそれともう1つ「家族という繋がりを薄めることで行方不明者への関心を削ぐこと」があると考えた。党は不都合な思考をもつ人間を行方不明にし「もともといなかった」ことにするが、もし人と人との関係が濃いと消えた人間に関係のある人間がその人が消えたことに執着し捜索をはじめてしまう恐れがある。人間の関係を希薄にするということは悪巧みをする人にとって都合の良いことであり、現在も同じことが起こりはじめているのではないかと私は考えた。
    『ニュースピークによる言葉の短縮』では既存の語彙を破壊し簡単な語彙のみに絞ることで思考することを抑制しようとしていた。これは現在の社会でも若い世代の子たちが「エモい」「卍」「アツい」といった複数の意味をもつ言葉を使っており、私はこれらが一部の若者のみに流行っているため今は問題ないがこれらが老若男女問わず使いはじめると同じ現象に陥ってしまうのではないかと考えた。
    現代においても問題提起が出来る上に世界観も素晴らしい為とても面白い作品だなと感じた。

    あと、読んでる最中にずっと白髪のおじいちゃんが脳内でヤイヤイと叫んでた。

  • 3.2

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著者プロフィール

1903-50 インド・ベンガル生まれ。インド高等文官である父は、アヘンの栽培と販売に従事していた。1歳のときにイギリスに帰国。18歳で今度はビルマに渡る。37年、スペイン内戦に義勇兵として参加。その体験を基に『カタロニア讃歌』を記す。45年『動物農場』を発表。その後、全体主義的ディストピアの世界を描いた『1984年』の執筆に取り掛かる。50年、ロンドンにて死去。

「2018年 『アニマル・ファーム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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