- Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
- / ISBN・EAN: 9784151200830
作品紹介・あらすじ
強烈なブラック・ユーモアと不条理で戦争を描いたアメリカ文学の傑作!解説/松田青子
感想・レビュー・書評
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ガタガタガタ……のっけからしばらく乱気流に揺られ、どうにも混乱しながら飛び続け、うぅ~天をあおいでいっそのこと放り投げてしまうか、と思ったその矢先、ふと厚い雲が切れて青空が! そのあとはあまりの可笑しさに笑いが止まらなくなり一気に飛翔したという感じの作品でした。
登場人物にスポットをあてながら、短い断章で綴っていく、ジョーゼフ・ヘラー(1923~1999年 アメリカ)の痛快作。
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第二次世界大戦のさなか、空軍予備士官を経て、イタリアのローマにほど近いピアノ―サ島の空軍基地に配属されたヨッサリアン。敵の砲撃網をかいくぐり、爆撃手として命からがら出撃ノルマを果たした彼は、すぐさま本国に帰れるものと信じていたのですが……はたして不条理のキャッチから逃れることができるのか?
「信じられない語り手」といった様相ただよう、少々あぶないヨッサリアンを視点にした物語。出撃命令から逃げ回り、たびたび病院へ駆け込み、素っ裸でふらふら、決して英雄なんかじゃない、怖いものは怖い、めそめそうじうじ感傷的にもなる26歳の男……でも周りをふと見渡せば、本当に彼は狂人なのかしらん?
リアリズム小説なのかと思いきや、幻想的な場面やコメディタッチもあり、なんといっても風刺とユーモアで織りなす笑いとペーソスは最高です!! まるでヴォネガット作品のようでもあり、でもどこか抒情性を排した悲哀にしんみりしちゃうオブライエン? いやいや時空なんてどこ吹く風のベケットぉ? いっそのことみんな放り込んでミキサーにかけたような美味くって可笑しな作品。読み終えた後も素直にページを閉じることができず、お気に入りの章に戻ってみてはくすくすと笑い直し、しんみりさめざめと泣いたのでした。
1961年に発行されるとイギリスでも人気となり、アメリカでは1000万部も売り上げたとか。現在まで堅調に人気を博しているのも納得ですね。
ちなみにジョーゼフ・ヘラーと『スローターハウス5』で有名なカート・ヴォネガットは、ともに先の大戦を米軍兵としてくぐり抜けた同世代の友。よくぞ生き抜いて素晴らしい作品を世におくりだしてくれたものとひたすら感激します。
『「敵というのはな」とヨッサリアンは自分の言い分の正確さを充分に量りながら言った。「どっちの側にいようと、とにかくおまえを死ぬような羽目に陥れる人間すべてを言うんで、それにはキャスカート大佐も含まれているんだ。そのことをおまえ忘れるなよ。長く憶えていればいるほど、それだけおまえは長く生きられるんだから」』
記憶、回想、意識の流れ、夢、妄想、フラッシュバック……時間軸は激しく飛んで、およそ時系列どおりにはいきません。でも作者を信じて読み進めてみてください。本作はそもそも時間軸なんてない「神話」のように、次々に繰り出される(小説中の)事実の「束」が大きな舞台を立ち上げ、物語を推し進める原動力になっています。それを見越してか、作者ヘラーはなんども同じような場面を、違う視点から眺め、適所で繰り返しながら読者を拾い上げてくれます。
でもこれをうがって見れば、繰り返される記憶や回想がヨッサリアンの混乱ぶりを、あるいは戦争の度し難い不条理性を、はたまた決して忘れることのできない衝撃的な彼のトラウマとなって錯綜しているのかもしれません。とはいえ、ご心配にはおよびません。力のある物語の作者は決して読者を暗雲の中に置き去りにはしません。早晩、雲間から全体が見わたせるようになれば、そこにそびえるある種の真実が痛快な笑いと感動を与えてくれるでしょう。
それでは、スリリングで楽しいフライトを満喫してくださいね(^^♪詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ジョーゼフ・ヘラー『キャッチ=22〔新版〕(上)』ハヤカワ文庫。
早川書房創立70周年を記念し、企画されたハヤカワ文庫補完計画、全70点の1冊。かなり長い間、寝かせていた古いアメリカ文学作品。
長らく寝かせた割りには全く熟成していなかった。ネイティブ・アメリカンからアメリカ大陸を奪った挙げ句に勘違いの正義を振りかざし、世界の警察を名乗る戦争国家アメリカの自業自得を小説の形で暗に批判したところで何になるといった感じ。
本体価格1,180円
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『BEEF』
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第二次世界大戦末期のイタリアのとある島に駐留している米軍基地が舞台。喜劇風の戦争小説とされているが、単なる喜劇ではなくなんというかギミック満載で一度読んだだけでは内容を完全に理解することは難しい。
前知識無しで上巻から順番に読み進めていく。最初はふむふむと読んでいくが、途中から何かがおかしいというか違和感のようなものを読み手自身が感じていくようになる。文章は読めるのに理解ができないというような感じ。小説のなかで何が起きているのか全然分からない。途中で何度も放り出しそうになった。でも、その感覚は間違いではない。その理由は下巻に記されている。 -
何度か読み返した作品。スノードンのくだりは最初読んだとき衝撃だった。推しキャラはシャイスコプフ。戦地での、悪い冗談の連続みたいな細切れのエピソードが延々続いたあと、ひとつの結末に向かってギアが入る展開の仕方も好きだった。ラストはそんなに好きではないし色々粗があるとは思うが好きだな〜
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SF
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「第二次世界大戦末期、中部イタリアのピアノーサ島にあるアメリカ空軍基地に所属するヨッサリアン大尉の願いはただ一つ、生きのびることだ。仮病を使って入院したり、狂気を装って戦闘任務の遂行不能を訴えたり、なんとかして出撃を免れようとする。しかしそのたびに巧妙な仕組みをもつ恐るべき軍規、キャッチ=22に阻まれるのだった。」
という裏表紙にある「あらすじ」がなければ、一体何を読まされているのかわけがわからなくなるところだった。といってもこれはあくまで設定のガイドライン。各エピソードの時系列もバラバラだし、さまざまなタイプの奇人変人が次々登場してスラップスティック風ドタバタ喜劇を繰り広げ続けるさまは、さながら「ショートコント『戦争』」といった趣き。
ドタバタ喜劇風なので一見凄惨さはないけれど、戦争に愚かさに対してこれ以上の風刺はないだろう。上巻の時点ではまだ奇人変人博覧会で物語らしき展開は見られないけれど、下巻ではいったいどうなるのか楽しみ。 -
これはループもの・・・?時制と冗長な語り口みたいなのがしんどくなって上巻で挫折。下巻まで来ても同じ調子なのかな。みんなが感じている良さを感じられない自分がダサい気がして悲しい。