キャッチ=22〔新版〕(下) (ハヤカワepi文庫 ヘ)

  • 早川書房
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151200847

作品紹介・あらすじ

強烈なブラック・ユーモアと不条理で戦争を描いたアメリカ文学の傑作!解説/松田青子

感想・レビュー・書評

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  • ジョーゼフ・ヘラー『キャッチ=22〔新版〕(下)』ハヤカワ文庫。

    早川書房創立70周年を記念し、企画されたハヤカワ文庫補完計画、全70点の1冊。大好きな映画『BIG WEDNESDAY』にチラっと登場した小説で、当時から読んでみたいと思っていた。映画では主人公のジャックの母親がジャックたちの乱痴気騒ぎに眉をひそめながら読んでいたのだ。

    戦争の馬鹿らしさを諷刺的に描いた一種の反戦小説なのだが、白々しさばかり感じた。アメリカは建国の歴史そのものが暴力と殺戮で血にまみれ、現代に於いても石油の利権や自国の経済成長のためならば他国に戦争を仕掛ける、とんでもない国だと思う。そんなアメリカの大統領と呼ばれる人物は、日本に交戦権を否定する憲法を押し付けたにも関わらず、日本が自前の軍事力を持たずにアメリカに頼るのはおかしいと言い出す始末。この程度の諷刺では蚊に刺されたくらいにしかならないのではなかろうか。

    本体価格1,180円
    ★★★

  • 不条理、混乱、喪失がみっちり詰まった、一度は読むべき小説。苦しい描写が多くてつらかったけれど、つらさにドライブされて一気に読み切ってしまった。気持ちがこもっていながら、上手に書かれてもいる小説だった。

    つらかったのは、集団を維持するための負のエネルギーがリアルで強烈すぎるところ。少しでも浮いていたり気弱そうな人を生贄にして他のメンバーが結束するって、学校でも職場でもよくみてきた。自分は上手に溶け込めなくてよくからかわれたり、ひどいときには意地悪をされたりしたから、読んでいてとても消耗した。人間はこわい。森のなかで一匹で暮らす動物に生まれたかった。

    反対に、人付き合いが得意な人なら、この本のブラックユーモアをもっと楽しめるのかもしれない。また、耐えられない現実からあり得ない事態が生じてくるという点ではマジックリアリズム小説でもあって、南米系が好きな人は好きなんじゃないかとも思う。

    よかったのは終わり方。あんな結末ありえないのに、その希望にのっかりたくなる。ちょっとガルシア=マルケスの「エレンディラ」を思い出した。

  • 下巻に入ってからも、最初のうちはブラックなギャグ(?)にくすくす笑いながら読んでいたのだけれど、だんだん予想外の形で死人が続出しはじめて、ヨッサリアンの一途さが痛ましくてたまらず、後半はずっと涙目でした。誰だって死にたくない、生き抜きたいだけだ。

    最初は変なヤツだと思っていたヨッサリアンのことを、いつのまにか友達みたいに思っていて、こいつほんと「いいやつ」なんだよなー。彼の良いところは、ヒロイズムに酔わないところだと思う。戦場という悲劇的な場所で、おこなわれていることを美化しない、正当化しないところ。

    日本人は基本的に悲劇的美談に弱いから特攻で死んだ若者を美化した映画なども多いけれど、いつもそういうのに少し感じてしまう違和感、なんかうまく言えないけれど丸め込まれた感じ、ヨッサリアンの存在は、ああいうのの対極にあるのだと思う。私は彼を支持したい。

    こういう作品の感想を上手に言語化するのは難しい。松田青子の解説が「そう、それを言いたかったの!」と、痒いところに手が届く感じで良かった。

  •  一日でも本国に帰国したいヨッサリアン。しかし、帰国するためには「キャッチ=22」によって規定された出撃回数をクリアしなければならない。あと数回の出撃で帰国できるとなると出撃回数が増やされ、延々と帰国することができずにいる。登場人物たちもみなどこか何かがおかしい。
     下巻まで読み続けるのは大変だったが、なぜ大変だったのかの理由は訳者あとがきで解説されている。この小説にほどこされたギミックの数々を知り、衝撃を受けた。戦争の不条理、その渦中の混乱に読書体験を通して少し触れられたような気がした。

  • 上下巻モノの下巻。
    概要は上巻に書いたので特に書くことはない。
    でも個人的に、最後の最後が非常に好きなので、上巻よりもこっちの方が好きです。

  • 非常に面白いのになかなか読み進められない。こんなに不条理で猥雑で不可思議な小説がアメリカでは高校の課題図書リストに載ってるとは。

  • SF

  • 最後まで意味不明。

  • 読後感がすごい…予想もしなかったラストに、胸の中が希望で満ち溢れていく感覚になって、自分の周りの空気までキラキラしていくように感じた。上巻に比べて下巻は時系列があまりブレてなくて読みやすかった。だけど、戦争が命を奪う呆気なさ、そこに蔓延る人たちから受ける不条理な出来事の暗さが浮き彫りになって、読むの辛い部分もあった。解説を読み終わった後、なんか泣きそうになった。自分の運命とか関係なく生きて行こうとする気持ちが一番大切なんだと思った。

    『おれは自分の責任から逃げ出すんじゃない。おれは自分の責任に向かって脱出するんだ。おれのいのちを救うために逃げ出すことには全然否定的な要素はない。』

  • タイトルの「catch-22」は「逃れようのない不条理な状況」(新英和大辞典)を意味する語として一般名詞化している。そのくらいのメジャー作品らしい。

    会話部分では不条理が際立ち滑稽ですらある。コントかと思うくらい。この作品は映画化もされているが、舞台向きであるように思う。現に舞台化されたことがあるのかどうか調べきれなかった。

    終盤のヨッサリアンとネイトリーの女のシーンは、狂った世界にあって、唯一まともなやりとりに感じられた。狂った状況が日常化すると、何が正常で何が狂っているのかの自分の判断ラインも狂ってくる。
    この状況で自分を見失わず最後には希望に向かって漕ぎ出せるヨッサリアンは強い人だと思った。

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