満潮に乗って (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 早川書房
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感想 : 56
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  • Amazon.co.jp ・本 (431ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151300233

感想・レビュー・書評

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  • 悲劇はあたかもシェイクスピアのように。

    大富豪の未亡人、その兄と、困窮する一族。戦争の傷が描かれた作品で、戦後を生きるイギリスの人々の姿に思うところがある。戦時中は従軍し、戦後田舎に帰って婚約者との結婚に戸惑うリン・マーチモントが印象的。前半でたっぷりとクロード一族の人間模様を描き、ポアロは名探偵だが、もはや主役ではないのでは。ラストは、すっきりとまでは言わないが、ひとつの人間関係の決着に満足した気持ちになった。クリスティ作品に出てくる女性は、いつも印象的で、何十年たった今でも全然古びていないと思った。

  • 久しぶりにクリスティの作品を読み返してみると、謎ときや犯人探しよりも、人間模様というか登場人物たちの心理描写が面白いと感じる。
    ポワロものとはいえ、彼が本格的に登場するのは小説半ばからだ。作品の主眼に置かれているのは、戦争後の混乱期における家族ドラマではないかと思う。
    外地で従軍した女性が、戦争を経てもなお何も変わらない田舎の人々に感じる苛立ち、村の外からやってくる災いの気配、裕福な親戚の庇護の下、金銭的自立から目を逸らし続けた結果に戸惑う一族…
    結末には少々納得しかねるが、時代を考えればそんなものなのかもしれない。

  • 連続してクリスティを読んでいるので、いくつかの要素がキーになることは予想できたのだが、使い方が予想外だった。悪いことをする人、悪企みをする人、つい嘘をついてしまう人、そして大部分は良心の呵責を感じる人。いろんな人がいるから、真相が最後までわからない。人間がよく書かれていると評価の高い作品ではあるが、兄弟の金をあてにして頼りきっている人々というところに共感できず(当時のイギリスは働かない方が普通だったとはいえ)★一つ減。

  • 2018/04/30読了

  • なかなか頭に話が入ってこなくて、登場人物たちの相関図を書き出してみた一冊。戦争の色が感じられる表現がイギリスの田舎町にも戦争の影響が色濃く残ってるんだなと気づかされる。

  • 目前に提示される動機と犯行が入れ替わる話し。最後まで犯人と動機は良くわかりませんでした。

    戦争中の空襲で未亡人になって巨額の資産を相続した若い女性とその兄、そして亡くなった男の家族との話し。
    若い未亡人は果たして重婚だったのか?というのが焦点ですが、まさかねー、という結論でした。
    そもそも、何が殺人で、何が自殺で、何が事故なのかも、すぐにはわかりません。
    それほど有名な話しではありませんが秀作です。

  • アガサ・クリスティーの面目躍如! と言えるミステリーです。冒頭に少し姿を表してから、中盤まで出てこないポアロ。代わりに語られるのは、遺産の相続権を、後妻に奪われた、一族の物語です。一族の嫉妬や恨みが渦巻く一方で、当の後妻は、かなり気弱な様子。しかし彼女の兄がなかなかの曲者で、一族と真っ向から対立します。事件が起こるまでの人間関係に標準を当て、読ませるのは、さすがクリスティーです。

    事件の展開も意外な方向に転がります。ここで単純に後妻やその兄を被害者にしないところが、この小説の面白いところ。兄妹を脅迫する謎の男、古い友人の登場と、事件の様相は、第一の事件以降、様々な形に移り変わります。ここで前半に描かれた一族のドラマが効いてきて、犯人は誰か、まったく予想がつかなくなるのです。みんながみんなとにかく怪しい(笑)

    様々な思惑が入り乱れた事件を、一本の線に繋ぐポアロの推理はさすがです。そして個人的には、本の最後の一文も、伏線が見事に決まった、ニクい一文で思わずニヤリとしてしまいました。

  • あとがきで説明されてた「ドラマ重視型」。「ある人物が殺されるまで」にページをさいている。

    ポワロが好きな私には、彼の登場シーンが少ないのでもの足りない。事件関係者を細かく描いていますが、どの登場人物も好きになれなかった・・・。でてくるだれもが胡散臭い(人間らしいというか・・・?)ので、昼ドラのドロドロさを見ているようで、途中で読むのをやめようかと思った。すべては金か、金なんか。

    個人的にはリン・マーチモント苦手。自分を殺しかけたローリィのもとに戻った。今まで彼に不満を感じ、ディビットに惚れて結婚破棄までしかけていた彼のもとに。(自責の念で)「君を幸せにできない」というローリィに、あなたは悪くない、警察もポワロも見逃してくれる、あなたの心の奥の激情を知ったの!安全な生活に魅力はないわ!という彼女が怖い。

    考えてみれば、お金の問題(500ポンドローリィから融通してもらおうとした)と嫉妬の問題(ディヴィットで嫉妬をあおっている)だし、リン・・・恐ろしい子・・・!

    クロード家ではフランセスさんの次に肝が据わってると思います。

  • 事件に至るまでの経緯が丁寧に描かれているので、ギスギスしたクロード一族の人間ドラマ、そしてリンをめぐる三角関係の恋愛模様が濃厚ですし、ツイストの連続で面白いです。
    しかし、伏線は色々張られているものの、謎解きに必要な手掛かりが明確に提示されていないため、ミステリーとしてはやや不満が残ります。

  • 正直、殺人事件の犯人よりもリンをめぐる人間関係の方が気になっていた。そういう意味でももちろんミステリとしてもラストの展開はめまぐるしかった。ただリンのような女性の気持ちは分からない。あんな激情にまかせて短絡的な行動をとる奴はだめだと思うんだけど。

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