忘られぬ死 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (456ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151300844

感想・レビュー・書評

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  • 男を虜にする美女がレストランでの誕生会席上で自殺?夫や妹や愛人らが彼女を回想する中、一年後に同じ場所でパーティをする事になり‥。回想シーン長いかもと思ったがそれも作戦?後は怒涛の結末へ。クリスティー長編の醍醐味を味わえ楽しい。

  • ローズマリーが誕生パーティで毒をあおって死んでから一年。彼女が亡くなった時と全く同じ状況で関係者6名が集められる。そして乾杯の後、衝撃的な出来事が起こるのだった。

    クリスティの作品でよく用いられる「過去の殺人」がテーマである。
    物語は三篇に分かれていて、第一篇は彼女に対する6人の思いが一人ずつ描かれていく。ローズマリーは美しく男を惹きつける力を持っているが、中身がなく考えの足りない行動をする女性である。彼女の奔放な行動に振り回され、傷つき、追い込まれる者たち。誰が犯人でもおかしくないと思わされる。
    第二篇は彼女の夫ジョージがローズマリーを殺害した犯人を捜すためにパーティを催し、衝撃的な出来事が起こるまでが描かれる。
    第三篇は警察による関係者の事情聴取と解決編である。少しずつ隠されていた関係者たちの秘密が明らかになっていくが、真実は最後の最後まで謎のままである。

    すでに亡くなっているローズマリーが生きている登場人物の誰よりも印象深い。誰の心の中にもローズマリーの影がずっと尾を引いている。そして、この話の重要なテーマとなっているのが、彼女を中心とした男と女の不思議な関係である。次から次へと愛人をつくる妻を変わらず愛しつづける夫、危機に一心同体で立ち向かう夫婦。男女の関係に正解はないと思い知らされる。

    ラストシーンはどこか神秘的で美しい。謎の解明はやや駆け足な感じで少し消化不良だが、ラストの美しさで読後にすっと涼やかな風が通り抜けるような心地になる。時間をおいて再読したい話である。

  •  今作は僕がまだ読んでいなかったクリスティ作品の一つ。改めてクリスティの独創的なアイデアに衝撃を受ける事になった。
     過去作の感想でも述べているが、クリスティ作品の魅力の一つは序盤の構成力であり、その作品から目が離せなくなる様な仕掛けがとにかく秀逸だ。面白い作品の殆どは序盤から面白いし、スタートがつまらなければ最後まで読み終える事はストレスになってしまう。
     今作では、主要な登場人物それぞれが過去に起きた美しいローズマリーの死を回想し、それぞれの目線で彼女との関係ややりとりを明かしていく手法をとる。この時点でローズマリーの自殺とされた「死」が疑惑の残るものだと読者に浸透させ、彼女の夫のジョージや妹のアイリスの回想や焦燥を経て新しい事件への一連へと繋がって行く。
     登場人物それぞれがローズマリーを思い出し回想しながらオムニバスの様に進行して行くストーリーは見事に尽きると思うし、更にはそれぞれの目線から事件ご語られる事により全員に感情移入してしまい、誰が犯人であればこの作品は綺麗に締められるのかと終盤まで気持ちが高揚してしまった(笑)。実は序盤からある程度の予測はしており、クリスティが好む犯人像とエンディングがある為、ある程度犯人の目星をつける事はできる。しかし、当然フーダニットの魅力は損なわれていないし、衝撃感もありながら楽しむ事が出来た。
     トリックについてはある程度納得できるものでありながらも、映像がない中で単純にそうなるかなぁという部分もあるが、駐車場で自車と同じ車を間違えてしまう事がよくある僕にとっては、この様なトリックに騙されるだろうなぁと納得してしまった。
     少し勿体ないのは、探偵役が唐突に現れる部分で、それぞれの登場人物達をもったいぶった挙句、とある人物が探偵としての役割を受け持ち始めた瞬間は流石に笑ってしまった(探偵役はある程度明かしていても良かったと思う)あくまでレイスはレイスであり、彼が探偵役では無い事は彼が登場する他シリーズからも読み取れる。最後、真相が明らかになった後、ハッピーエンドの側面と、バッドエンドの側面が上手に構成されていた為、個人的にとても満足感のある作品だ。
     特にルシーラとルースの役割が見事だと思う。クリスティは年老いた女性、働く有能な女性の描写が上手く、この二人には特別思いやりをもってしまう。その他、政治家のファラデー夫妻、ルシーラの息子であり問題児のヴィクター、バトルを彷彿とさせる主任警部のケンプ、そして登場人物一覧に名前が挙げられない人々もそれぞれ魅力があり、何故存在しているかの役割が見事に果たされている。

  • 男たちを虜にしてしまう美女ローズマリー。彼女が自分の誕生パーティで毒を飲んでこの世を去って一年。彼女を回想する男女六人が一年前と同じ日、同じ場所に集まった時、新たな悲劇が始まる──。

    三部構成のメロドラマ×ミステリ。第一部がプロローグで、ローズマリーを回想する人々の独白を丹念に綴る。その量はなんと150ページ!事件の謎と一年後の悲劇に向けて、丹念に仕込みを重ねていく。誰もが怪しく、動機を持っている!単なる悪ではなく、誰しも邪悪へと転びうるという人間の弱さや危うさに心が抉られる。

    しかし本当に怖いのは、自分は善だと思い込んでいる人間が、その無知によって説得もできない悪となっていることだなと。影よりも強すぎる光の方が危険で迷惑だったりする。そして、その光は消えても、目を閉じればまぶたの裏側に焼きついているのだ!死んだローズマリーが常に場を支配している空気が凄まじい。

    衆人環視の中で、いかにして毒を盛ったのか。シャンパンの泡のように消えてはくれないこの鉄壁の仕掛けもなるほどと。ノンシリーズなので、有名な探偵たちは存在しない。誰が謎を解く役回りを果たすのかも見どころ。トリック自体はハッとさせられたものの、さすがに誰か気づかないか?!と思わなくもない(笑) ミステリ本筋以外の心理描写がさすがで、これを読んでも人を信じられますか?と言わんばかりの内容。そういう心の迷路を描いた作品として面白かった。

    p.182
    「成功した人間というのは、たいていは不幸なものだよ、それだからこそ、成功したともいえる──そういう連中は、なにか世の中が認めてくれるようなことを成しとげることで、自分自身を納得させないではいられないんだ」

  • アガサ・クリスティのノンシリーズは面白い。探偵が誰であるかわからないのでわくわくする。「気の利いたメロドラマとトリックの驚異の組合せ」と江戸川乱歩が評したのも納得。

  • 読み始めてすぐ、これ「黄色いアイリス」じゃない??と気づいたのだけど、上手く長編に仕立て直していて面白かった。
    あれは誰か気づかん…??というのは引っかかるし、真相は唐突に感じるものの、ミスリードが効いている。
    レイス大佐良かったなー!
    読み終えてから他の作品にも出ているのを知った。
    再会するのが楽しみ。

  • ミステリーを久しぶりに読みました。アガサ・クリスティの作品は初めて読んだのですが、とても面白くびっくりしました。最後まで犯人は誰か分かりませんでした。巧妙なトリックと伏線回収が素晴らしかったです。これを機に他の作品も読みたいです。

  • 全然犯人わからんかったな…と、読み終わって呆然とするような事件だった。クリスティーは絶妙に嫌味な人物と、こいつが怪しいのかもしれない…という不穏な空気を描くのがめちゃくちゃ上手いので、毎回きっちりと踊らされてしまう。悔しい、けど、その手腕があまりにも見事なので腹も立てられない。今回は特に、殺害方法すらもまったく予想がつかなかったのに、無事に解き明かされ犯人が暴かれた後、判明した動機で更にまた一回驚かされたので、本当に唖然とするしかない一作だった。

  • 何故姉は死んだのか、から始まるお話。
    読んでいて、なーんとなく違和感のあるお話だったのだが、最後まで読んで全て納得。犯人もトリックもここまで全く想像に及ばなかった作品は正直久しぶりであった。

  • クリスティーの中期ノンシリーズ。
    ミステリというより、どちらかというとロマンスメイン。

    最後が少し駆け足気味で、途中、散々含みを持たせたセリフとかは放置。もうちょっと解決編が長くても良かったのかなと。
    意外な犯人ではあったけど。。。
    うーん、読者が置いていかれる意外性というか、騙された!とはならない。

    あと、題名が間違いやすい笑
    「わすれられぬし」じゃなくて「わすられぬし」なのね。

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