蒼ざめた馬 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151300936

感想・レビュー・書評

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  • 面白かった!新訳のためとても読みやすいのにクリスティーのぞわぞわオカルト趣味もちゃんと残ってて良い。神父の死から魔術で殺人が?という謎解きが始まる。探偵役の学者マークの恋話や、大好きなミステリ作家オリヴァ夫人の好演も絶妙で楽しい。

    • ポプラ並木さん
      111108さん、クリスティの作品で久しぶりに犯人当てました!オカルトチックな内容もドキハラでしたね。
      111108さん、クリスティの作品で久しぶりに犯人当てました!オカルトチックな内容もドキハラでしたね。
      2022/11/20
    • 111108さん
      ポプラ並木さん
      犯人当てたんですね、すごい!私はまんまとクリスティーの罠にはまって、オチの所で本当にびっくりしました。オカルトチックな点も効...
      ポプラ並木さん
      犯人当てたんですね、すごい!私はまんまとクリスティーの罠にはまって、オチの所で本当にびっくりしました。オカルトチックな点も効いててノンシリーズで好きな作品です。
      2022/11/20
  • NHKでドラマが放映されたのを機に、ドラマを録画して先に原作を読んだ。

    瀕死の状態の女性を見舞った神父が撲殺される。そしてその靴の中には9人の名前が記された紙片が隠されていた。一方、学者のマーク・イースターブルックは、偶然パブで見かけた若い女性が急死したのを知る。さらに、名付け親の死にあたり遺品を引き取りに行った彼は、大学時代の友人で警察医のコリガンに出くわす。紙片に記された9名の中に、パブで出会った若い女性と名付け親の名前を見つけた彼は、事件に興味を持つ。
    おりしも、魔術を扱うと噂される三人の女性が住む「蒼ざめた馬」という家について耳にした彼は、事件と「蒼ざめた馬」との関連を探り始める。

    神父の撲殺と、靴の中に入っていた9名のリストの紙片、という不可思議な謎が、読者を物語にぐっと引き寄せる。さらに、魔術を扱うという三人の女と、彼女たちの住む「蒼ざめた馬」の存在によって、物語は怪奇小説の雰囲気を醸し出していく。
    極めて現実的なクリスティが怪奇小説として物語を終わらせるはずがない、とクリスティ愛読者としては思うのだが、三人のおどろおどろしさと、次々と判明するリストの人物の死に、もしやこのまま怪奇小説として終わらせる気なのだろうか、とどきどきひやひやしてくる。

    結論を言うと、謎はきちんと科学的に解明される。また、ラスト直前に謎が解け、犯人が見えてきた、と思われた最後の最後、驚きのどんでん返しが待ち受けている。
    読者の予想を次々と裏切ってくる仕掛けが満載で、飽きずに楽しめる小説である。探偵役が弱いのが若干の残念ポイントか。

    なお、ドラマの方は主人公の設定を大胆に作り替えてより怪奇小説風に仕上げられており、原作と雰囲気はずいぶん異なるが、映像で見せることができるドラマならではの工夫がされていて、これはこれで面白かった。ただ、ドラマを見てから原作を読むと、主人公のインパクトが弱いため、原作がおとなしく感じられるかもしれない。先に原作を読んだ方がドラマと両方楽しめるのではないかと思う。

  • ある女を看取った神父は、彼女が言い残した九人の名前をメモに記した。その帰り道、神父は殺害されてしまう。メモを見つけた警察は捜査を始めるも難航。事情を知った学者・マークも独自調査をするが──。

    今回はノン・シリーズということで名探偵は不在。主人公は学者のマーク。彼が調査をした先で得た情報は、古い館「蒼ざめた馬」に住む三人の女が魔法で人を呪い殺すという信じがたい事実だった!神父の死との関係を探るべく、マークは館へと赴く。これはミステリだよな?と思うほど、真実はオカルティックな霧に包まれている。マークは目の当たりにしたオカルトに半信半疑になりつつ、その奥に潜む闇を暴こうと進んでいく。

    ところが、誰かに相棒役をお願いしようにも「そんなオカルトありえません!」と一刀両断されてしまうマークが悲しい。心の折れかけたマークをサポートすることになったのは、女友だちのジンジャー!やっと捕まえた相棒なのに、「ぼくになにができる?」「でも、どうやって?」「口実は?」と調査のアイデアをジンジャーに全振りしてるのに笑ってしまった。いやいや、マークから声かけたのに!まあ、今まで親しい人から拒絶されてきたら弱気にもなるよね。そういう巧妙さが張り巡らされた事件だった。

    オカルトの沼でもがきながら、最終盤までどうなるかわからないハラハラ感を味わえる作品。調査を進めるたびに、マークとジンジャーの絆が強くなっていくのがよかった。これはホラーなのか?ミステリなのか?驚愕の答えとは?!ぼくもビックリし過ぎてぽかーんとしてしまった。少し長め&細かい部分はどうなの?と感じるも、安定して楽しめた作品。


    p.12
    思うに、邪悪というのは、常に善よりも印象的である必要があるのではないか。とにかく人目を惹くものでなければ! あっと驚かせるような、挑戦的なものでなければ!言うなれば、安定に襲いかかる不安定だ。

    p.145
    「うちの人は本当に善良な人でね。牧師であるのみならず。そして、善良であるがゆえに、事態をむずかしくしてしまうこともときどきあるんですよ。だってほら、善良な人たちって、悪というものをちゃんとは理解してないでしょう」

    p.153
    人は悪行を自慢したがるものです。おかしなものね、善人は決して自慢などしないというのに。

    p.413,414
    「わからないのは──いつも思うことだが──恐ろしく頭が切れる人間が、同時に救いようのないばかでもあるのはどういうわけか、ということだよ」
    「犯罪の首謀者といえば、偉大な悪の帝王みたいな人間を想像しがちですけどね」
    ルジューンは首を振った。「現実はそうじゃない。悪は人間を超えるようなものではなく、人間以下のものなんだ。きみの言う犯罪者は、大物になりたがっているような人間だが、そういうやつが大物になれるわけがない、永久に人間以下でしかないのだから」

    p.422 (解説 間室道子)
    クリスティーは気配の書ける作家なのだ。「悪いこと」でなく「悪いことが起きるかもしれない」が描ける作家。

  • The Pale Horse(1961年、英)。
    ノン・シリーズ。クリスティ後期の作品で、オカルティックな異色作。

    2人の女性がカフェで大喧嘩を始めた。偶然その場に居合わせた主人公は、数日後、片方の女性が若くして病死したことを知る。さらに数日後、神父が殺害される事件が発生。神父が隠し持っていたリストに、死んだ女性の名が書かれていたのを知った主人公は、調査するうち、人を呪い殺せるという魔女の噂を耳にする…。

    伏線の妙を楽しむ一冊。魔術的世界に引き込まれていく主人公の心理描写がスリリング。ミステリと関係ない分野で、あっさりとネタバレされていることがあるが、できれば予備知識なしに読みたい。

  • 『火のないところに煙は』を読んでいて、そういえば、クリスティーにも占い師が出てくるホラーテイストな話があったよなぁー。
    ……と思い出して読んだんだけど。
    読みだしてすぐ、「あ、占い師じゃなくて、魔女だった」って(^^ゞ
    とはいえ、占い師よりは魔女の方が読者をお話に引き込む魔力が強いのか?w
    なかなか面白かった。


    そんな『蒼ざめた馬』、ちょっと前にやっていたドラマは見ていた。
    ただ、あのドラマって、よくわからないで終わっちゃうんだよね(^^;
    実はクリスティーって、ハヤカワのクリスティー文庫が出た時、初めて読んだこともあって。
    だから、『蒼ざめた馬』も、その頃に読んだんだと思うんだけれど。でも、面白かったという記憶はあるものの、内容はほとんど憶えてなくて。
    ドラマを「こんなホラー、ホラーした話だったかなぁー?」と思って見ていたんだけど、なぁーんだ。全然違うじゃん(^^ゞ
    こっちのラストなんて、「オマエら、もう勝手にやってろ!w」と思わず噴き出しちゃったくらい、二人でラブラブで(爆)
    ドラマはなんであんな風にしちゃったんだろう?というくらい、面白い。

    というのも、女性の登場人物がすごくいいんだよね。
    ジンジャ―はもちろん、(主人公いわく「退屈」な)ハーミアも魅力的だし。
    主人公とその友だちからケチョンケチョンのポピーも、特有の可愛気がある。
    また、ストーリーのところどころで絡んでくる、オリヴァや主人公の従弟のローダ、デイン・キャルスロップ夫人のキャラもいい。
    ま、肝心の魔女3人は、ドラマに出てきた3人のイメージが強烈だったこともあって、ちょっと影が薄い気もしたけど(^^ゞ
    とはいえ、最後にちょこっと出てくる、アイリーン・ブランドン。これが、またいいんだよなぁー。
    個人的には、主人公のマークとアイリーン、二人の視点でそれぞれストーリーを進めて。最後にガッチャンコしたら、すっごくワクワク出来たんじゃないかなぁーと思った。
    アイリーンの仕事である市場調査の調査員はこの話の重要な要素なわけだし。さらに言えば、この話の発端はアイリーンの同僚のディヴィス婦人なわけだ。
    前半に、自らの仕事に何か不審なものを感じているアイリーンとディヴィス婦人の会話がある中、ディヴィス婦人が…という流れがあったら、もっとドキドキ出来たんじゃないだろうか?
    ただ、この話って、呪いを実際に実行させる方法は?というのが何より疑問に思うところなわけで。
    アイリーンとディヴィス婦人が、あくまで脇役として隠されているからこそ、呪いの実行方法は何だろう?と読者はワクワク出来るっていうのもあるのかなぁー。


    ちなみに、最後の「え、そっち?」は、ちょっと強引に意外な展開をしてみせた感がなきにしもあらずなところがあったけど(^^ゞ
    クリスティーって、今でも全然古びてないんだなぁーと感心……、というか。コンピューターをめぐる、主人公とヴェナブルズの会話、あれには驚いた。
    「人間はいずれ機械(コンピューター)にとってかわられるということですか」
    「並の人間なら、そうなるだろう。
     労働資源の一部でしかない人間なら――という意味だが。
    しかし、ある種の人間なら、そうはならない。
    管理する人間、考える人間、つまり機械に問いかける質問を作る人間はどうしたって必要だからね」
    これって、まるっきり現代のAIと人間をめぐる話と同じじゃん。
    小花柄のチュニックの占い師のご託宣よりは、クリスティーの方がよっぽど当たるって?(爆)

  • オカルト趣味に満ちた異色のミステリ。瀕死の女性から何かを聞いた後で殺害された神父。彼が持っていた紙片に書かれた名前の人物には、とある共通点があるようだった。そして、かつては宿だった「蒼ざめた馬」に住む三人の女性が人を呪い殺してくれるという噂の真偽。これは本当に呪いなのか、それとも何者かの作為なのか。終始不気味な雰囲気が漂う作品で、ホラーなのかミステリなのかもなかなか判断がつかなくて、どきどきさせられました。
    なので結局どちらだったのかを語るのもよしましょう。真相を確かめるためにマークが行う策略がもう危険すぎて、どうなることかと思いました。ああもう見てられない! そして終盤になって、あの伏線に気づかされて驚愕。いや、たしかに読んだ時に違和感は覚えたのですよ。しかしそれがまさかそういうことだったとは。
    (良い意味で)とても気持ちの悪い作品だったのですが。そんな中でもオリヴァ夫人がいいなあ。なんだかほっとさせられます。そっか、他の作品にも登場してるんだ。そのうちまた出会うのが楽しみです。

  • 前回読んだグレアムヤングが毒殺云々の件で、この本を読んでたとか、読んでないとか。

    他にもこの本はタリウムでの毒殺を扱っていて、タリウム殺人の構想の元になったんじゃないか?

    と言われてる作品。

    ならば!と読んで見たが。ただ単純に面白い!!!ミステリーとして最高に面白い!!!!

    海外のミステリーは背景があまりにも違ったり、名前が覚えきれなくて、誰が誰だったのかわからなくなったり、古い本だとさらに時代のバックグラウンドが違いすぎて、なんかなーって思うのに。
    全く古びない。

    ふつうにラストびっくりした!!!笑笑

    読みやすいのもある!なんかちょっとコミカルでもあり、その中で真剣に近づく恐怖に怯えたり、真相に近づく緊張もありで、最初から最後まで飽きないで1ページ足らず楽しめます!!!!!!!!!!

    長々と続く話し言葉も、とーっても他愛のないおしゃべりの中に、ちょろりと出るヒント!!

    やたら難しい話ばっかり続く長文とか、もうその時点で読む気なくすようなのはなく、気楽な話の中に混じる真実を探り当てるのがとてつもなく面白いです!!!!!

    アガサクリスティ、今更ハマる。

  • 若き学者が、正義溢れる女性に尻を叩かれながら連続殺人組織挑むミステリー。
    はじまりは9人の名が書かれたメモ用紙。その人物たちは、皆、自然死している…その不自然さに導かれるように事件に入りこんで行く。
    オカルトやまやかしに捉われず真実を探る姿は、応援したくなる!
    ラストはオセロをかえすようにパタパタと謎が埋まり、真犯人は、、?!
    終わりにタイトル「蒼ざめた馬」が描かれた看板を磨き、事件を分かち合った二人が感慨深く眺める様は物語に相応しいラストでした。

  • 病死に見えるがなにやら降霊術による呪いが背後にあるようだ。降霊術の謎にせまるべく若き学者が相棒の女性とともに謎の降霊会に挑む。え~ クリスティーがまさかのオカルト解決と思いきや、手品の種明かしのように種が最後に示される。おきまりのカップルも誕生しめでたしめでたし。犯人は意外だった。

    全25章にわたり「マーク・イースターブルックの物語」と題名がついている。このマークが素直で好感が持てる。

    主人公マークは知識も教養もある女性ハーミアと先入観にとらわれない行動型の女性ジンジャーの間で揺れ動く。クリスティは主人公には行動型の女性に引かれる、という設定が多いがこれもそうである。

    オリヴァ夫人も登場。

    1961発表
    2004.8.31発行 2012.3.15第3刷

  • 本格物ではなく、冒険的要素を兼ね備えたサスペンス小説という感じだ。カトリック神父殺人の背後にある大きな謎を、主人公の学者と友人女性が調査して暴く物語。クリスティーの作品でおなじみのオリヴァ夫人が登場するが、ポアロは登場しない。ポアロが登場しないのは、推理よりも調査過程がメインの話であり、素人探偵の視点で物語を描きたかったためであろうか。
    殺された神父が残したメモの謎、3人の魔女による呪法の儀式と遠隔殺人の謎、「車椅子の男」が歩いて牧師を尾行していたという目撃者の証言の謎、主人公たちによる偽装潜伏調査など、ミステリーとしての読みどころは十分。事件の背景にある謎は、ドイルの「赤毛組合」を彷彿させる。
    オリヴァ夫人は、主人公に対して、「青ざめた馬」という事件につながる符号を与えたり、真相につながる重要な手掛かりを示すなど、脇役として、存在感を示している。
    最後にひねりがあるのだが、このひねりはあまり効果的ではないと感じた。その人物が黒幕である必然性に乏しいし、面白味がない。私は、別の人物を黒幕だと思っていた。

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