ソーントン・ワイルダー〈1〉わが町 (ハヤカワ演劇文庫)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151400094

作品紹介・あらすじ

ニューハンプシャー州の小さな町に暮らすエミリーとジョージ。ふたりは善良な両親と近隣の人々に見守られて育ち、恋に落ちて、やがて結婚の日を迎えた。しかし幸せに満ちた九年の夫婦生活の後、エミリーの身には…。人の一生を超越する時の流れのなかで、市民たちのリアルな生の断片を巧みに描きだし、ありふれた日常生活のかけがえのない価値を問う。演劇界に燦然たる足跡を残した巨匠の代表作。ピュリッツァー賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • あまりにも好きで、この本をテーマに卒論を書いた。 好きな場面、せりふ、演出、あまりにも多すぎて… 一生かかっても満足いくレビューができそうにないから私が死んだら棺桶にいれて一緒に燃やしてほしい。 さよなら、世のなかよ、さようなら。グローヴァーズ・コーナーズもさようなら……ママもパパも、さようなら。時計の音も……ママのヒマワリも。それからお料理もコーヒーも。アイロンのかけたてのドレスも。あったかいお風呂も……夜眠って朝起きることも。 はじめてこのシーンを読んだとき、なんてあたたかくて切なくて美しい情緒なんだろうと思った。 何回読み返したかわからないくらいなのに、読むたびはじめて読んだのかってくらい泣いてしまう。 これからもずっと添い遂げたい本。

  • どこにでもある町、のどこにでもいる人、のどこにでもある人生。

    プロットに"特徴がない"ことは、一人一人の築いている人生が投影されやすい証。

    そして、その簡素さゆえに、脳裏からはがれ落ちることはない物語。



    人生のかけがえのなさは、自らの死を通してしか分からない。
    生命が抱える最大の矛盾。

    誰にとっても心の中に留めておきたい、
    パートナーのような存在感がある一編です。

  • 20世紀のアメリカを代表する劇作家による名作戯曲

    やや前衛的な舞台であるが、
    個別の人生を描きながら普遍的なことを表現されていて、
    そしてテーマも、わたしがいることの意味という本質的な宗教的なもの。

    解題が非常にわかりやすい。

  • 「3月15日 カエサルの最期」からの流れで読了。個々人の人の営みの積み重ねそのものが、歴史とか徳性とか普遍的なものであるというワイルダーの信念のようなものを感じた。ここが「3月15日」との共通点かな。ローマオタクぶりは本書でも随所で出ていた。ワイルダーの戯曲は初めて読んだけど、色々な手法を考案して試すのが好きだということがよく分かった。「3月15日」の書簡形式もそうだけど、本書の簡素な舞台セットや舞台監督が役者として出演して劇と観客を橋渡しするという手法も当時としては斬新だったようで、改めてIdea-Drivenな作家だったと認識した。書斎にこもって執筆するスタイルではなく、旅をしながら歩きながら書くスタイルが好きだ。モームに通じるところがある。「一日散歩をして、戯曲15分ほどのプロットが書ける」

  • 一人ひとりの、かけがえのない日々。

  • 今度やる演劇の元ネタ。
    舞台監督の口調があまり好きでない。

    演劇って本当に体力使うわね。

  • 『わたしが生きることの意味』

  • 町の日常→結婚→死の3幕構成の演劇。言葉遊びやドラマ性がない淡々とした作りだが、訳注(解説)のおかげで、この本の深さに気づいた

    この本の命題は
    *個人の存在に意味があるか
    *自分の中に永遠に残るものは何か
    *生きている間に人生を理解している人はいるか

    劇場の中に わが町の日常風景を描く。人生のスタートとして 2幕の結婚、人生の終わりとして 3幕を描く。宇宙から 小さな わが町を見る。死を通して 生を見る。未来から 現在を見る

  • 季節の変わり目がはっきりと見えることがないように、変化は毎日少しずつ訪れる。
    生活も同じことで、家事をすること、仕事をすること、学校に通うこと…行動として見ると毎日同じことの繰り返しのように思えるが、積み重ねれば苦手だったことが慣れで上達するように、変化のないことなどない。けれど、それを日々気づいて生きることはとても難しいことだ。……という話。
    アメリカの町のことだけど、どこの場所でもいつの時代でも届く普遍的なメッセージに満ちた話でした。

  • この前に読んだ「航路」のどこかに引用されていて、
    「ふーむ、ワイルダーって言っても
    『大草原』だけじゃないのね…」と
    ふと、そんな風に思った、
    だからどんな文章だったかも、
    どこに出てきたかもわからなくなったけれど、

    読了した日にBBの本屋さんで
    いつもの様に
    ハヤカワ&創元のミステリコーナーを
    つぶさに観察、
    「うちに来たい子はいるか~?」とやっていたとき、
    この本の背表紙が目に飛び込んできて
    なんだか運命を感じて買いました。

    ストーリーはアメリカのある州の小さな町で
    周りから祝福され、幼なじみ同士で結婚した
    エミリーとジョージ。
    幸せな結婚生活が続いたが、ある日…

    って言う裏表紙の粗筋を見て
    「やだ、やだ、やだ、あーぁ、もう悲しい、
    そういうのやめてよ~」と思ったのに

    私の考えていることとは違う、
    もっともっと悲しいことだったの!
    (私は最近よく耳にするゲスなんとかの方を
    想像してしまっていたの)

    でも、悲しいんだけれど、でもなんか
    「そっかぁ~」ってなってね…。

    なんか「そっかぁ~」って。(二回言ったね)

    うん、読んでよかったなあ~。

    私が女優目指してたら、
    なんとしてもエミリーの役、とりたいものだわ!
    (後書きに役をつかみそこねて
    自殺した女優がいると書いてあったのに
    引っ張られ気味)

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著者プロフィール

1897-1975。新聞編集者の父とイタリア語翻訳家の母のもと、ウィスコンシン州マディソンに生まれる。イェール大学で学士号を取得(1920)の後、ローマのアメリカン・アカデミーでイタリア語と考古学を学ぶ(1920-21)。プリンストン大学でフランス文学の修士号を取得(1926)。フランス語の教師を務めた後、本格的に劇作、小説、翻訳などを手がけるようになる。小説『サン・ルイス・レイの橋』(1928)戯曲『わが町』(1938)『危機一髪(ミスター人類)』(1943)で三度ピューリッツァー賞を受賞。その他、その業績に対してドイツ出版協会平和賞(1957)、大統領自由勲章(1963)を、小説『八日目(The Eighth Day)』で米国芸術アカデミーのフィクション部門金賞(1968)を授かるなど、多数の賞を受賞している。

「2018年 『三月十五日 カエサルの最期』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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